日本看護技術学会誌
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4 巻, 2 号
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総説
  • 吉永 亜子, 吉本 照子
    2005 年 4 巻 2 号 p. 4-13
    発行日: 2005/11/10
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     足浴が, どの程度不眠患者の睡眠を促す効果をもつのか, どんな要因が効果に影響するのかを総括するために, 医学中央雑誌, Medline, Cinahlの全年オンライン検索や, 最新看護索引 (1990~2000), 研究報告書, 本, それらの引用文献より, 網羅的に足浴実践報告を集め, 睡眠との関連を報告していた 17件を分析した.
     対象者10名以上の報告ではいずれも, 不眠患者の半数以上が足浴による睡眠状況の改善を認め, 入眠しやすさや, 眠りの深さ, 目覚めのよさ等の効果がみられた. 足浴によって皮膚温上昇 ・ 深部体温低下が起こることと, 深部体温低下期に睡眠が起こりやすいことは生理学実験で実証されており, 深部体温の低下が入眠を促し, 深部体温の変動の増幅が持続的な睡眠状況改善をもたらしたと考えられた. しかし, 足浴前の皮膚温が高い場合や, 室温が高い場合, 体の芯まで温めすぎた場合には効果が出にくくなり, これらは深部体温の変動上, 睡眠を阻害する要因と考えられた.
原著
  • 藤森 まり子, 大野 綾, 藤島 一郎
    2005 年 4 巻 2 号 p. 14-21
    発行日: 2005/11/10
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     経鼻胃経管栄養法の胃チューブはしばしばスムーズに挿入できず, 対象者に苦痛を与え業務に支障をきたすことがある. また太い胃チューブが咽頭で交差し喉頭蓋に当たっていると嚥下時に喉頭蓋の動きを障害しやすい. 筆者らは胃チューブ挿入時に頸部を回旋する (以下頸部回旋法) と挿入しやすいことを臨床的に経験している. 本研究は現行の方法 (顔は正面向き, 以下現行法) と頸部回旋法で胃チューブの挿入しやすさ等を比較検討したものである. 対象は当院で経鼻胃経管栄養法を実施している研究協力の得られた患者81人, 平均年齢76.8歳で, 胃チューブ挿入件数は156件であった. 現行法と頸部回旋法で, スムーズな挿入の可否, 胃チューブの咽頭での走行を検討した. その結果, スムーズな挿入は現行法61件中36件 (59%), 頸部回旋法では基本型で78件中71件 (91%) が成功し, 頸部回旋法のほうが有意に挿入しやすかった. 咽頭での交差について, 交差しなかったのは現行法62件中34件 (55%), 頸部回旋法78件中52件 (67%) で頸部回旋法は咽頭で交差しない確率が有意に高かった. 以上のことから頸部回旋法を新しい看護技術に取り入れることは有用であると思われた.
研究報告
  • ―先駆的脳神経外科病院1施設の結果から―
    大久保 暢子, 江口 隆子, 品地 智子, 菱沼 典子
    2005 年 4 巻 2 号 p. 22-31
    発行日: 2005/11/10
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 急性期脳血管障害患者に対して先駆的脳神経外科病院が行っている “からだを起こす ”看護ケアの内容を抽出することである. 研究方法は, 対象患者10例に対する非構成的参加観察とケアを行った看護師22名への聞き取り調査法で, 収集した内容からケアの共通性を抽出した. その結果,1) からだを起こす看護ケアの現状は, 「看護ケア時に取り入れた関節可動域運動」 「ヘッドアップ30度」 「姿勢を正す体位交換」 から始まり, 「ヘッドアップ45→60→90度」 「看護師介助のベッド上端座位」 と続き, 次に 「リクライニングチェア乗車」 か 「車椅子乗車」, そして 「背面開放座位」 か 「看護師介助のつかまり立ち」 へと進むプロセスであった. 2) プロセスは, 経過日数ではなく, 患者の状態を観察, 判断して進んでいた. 3) からだを起こす各ケア前中後の観察, および判断項目には7つの共通項目があった. 今後は, 脳血管障害患者の急性期ケアをプログラム化することが課題である.
実践報告
  • ─1総合病院における実態調査─
    小坂 未来, 武田 利明
    2005 年 4 巻 2 号 p. 32-37
    発行日: 2005/11/10
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     血管外漏出に対する対応は看護師によって異なっている. ケア上の問題点や課題を明らかにするため, 実際に臨床現場でおきている血管外漏出について, 実際の臨床現場での実態調査研究を実施した. その結果, 血管外漏出がおきる頻度の高い点滴製剤は電解質輸液製剤であること, 輸液剤の血管外漏出に対しては無処置または冷罨法の施行が行われており, 冷罨法としては冷湿布の貼付が行われていること, 輸液製剤単独でも血管外漏出が起きると腫脹や発赤などの症状を呈することが明らかになった. また, 輸液の血管外漏出に対する認識やケアの質に看護師間の差があることが明らかになり, 問題点であると思われた.
     輸液の血管外漏出による生体内での反応が未だ明らかにされていないため, 適切なケアを選択することができないと考えられ, 血管外漏出による生体への影響を検索する必要があると考えられた.
短報
  • 石田 陽子, 小山 奈都子, 武田 利明
    2005 年 4 巻 2 号 p. 38-41
    発行日: 2005/11/10
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     ビンカアルカロイド系抗がん剤の一種である硫酸ビンクリスチンは, 血管外に漏出した際, 対処方法として 「温めること」 が推奨されている. 薬剤の血管外漏出時の対処方法の一つである罨法は, その効果についての科学的確証が不足しているため, 看護師の間で統一した見解が得られていないのが現状である. そこで本研究では, ビンカアルカロイド系抗がん剤が血管外に漏出した際の対処方法として勧められている温罨法の作用について明らかにすることを目的に, 実験動物 (ラット) を用いて研究を行った. その結果, ビンカアルカロイド系抗がん剤が漏出した際, それに伴う皮膚傷害は漏出直後ではなく, 数日をおいて出現することが明らかとなった. また, 本実験条件下では, ビンカアルカロイド系抗がん剤漏出後, 温罨法を施行したラット皮膚に潰瘍形成という重篤な傷害を認めた. このことから, ビンカアルカロイド系抗がん剤が血管外に漏出した場合の温罨法適用の有効性は示されず, むしろ皮膚傷害を増悪させる危険性があると考えられた.
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