日本看護技術学会誌
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最新号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 高橋 有里, 藤澤 望, 小向 敦子, 武田 利明
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 45-56
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     わが国では新型コロナワクチン接種により筋肉内注射の実施頻度が急増した. その際, 新たな手技が紹介され戸惑いの声があった. そこで, 本研究はコロナワクチン筋注における看護師の実践および認識を調査することで現場に生じている混乱や疑問を明らかにすることを目的に行った. それにより根拠に基づくワクチン筋注の課題が抽出できると考える.
     コロナワクチン接種を担当した看護師を対象とし, 無記名の自記式質問紙調査を行った. 全国の1,353名から回答を得た. 対象者は接種主催団体の事前準備の説明が十分でなかったとし自己学習を行っていた. しかし, 自己学習に限界や困難を感じ身体的心理的な負担を抱えていた. また, 対象者は新たな手技への困惑・迷い・不安が大きかった. 実際には新たな手技で行ったが, 針の刺入深度や逆血確認不要では危険な事象を経験し, 根拠に疑念を抱き, 自ら望ましいと思う方法を試みていた.
     対象者が疑問に感じた手技の根拠を明らかにし, ワクチン接種における確かな筋注技術を検討, その普及を図っていきたいと考える.

  • 山﨑 智可, 堀 悦郎
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 57-65
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 脳機能の測定結果に影響を及ぼす皮膚血行成分を除去することによって, 前腕浴が脳の血行動態に及ぼす影響を明らかにすることである. 先行研究では, 末梢温熱刺激が前頭前野の血流増加を誘発することが近赤外分光法により示されている. しかし, これらの結果は皮膚血流と脳血流の両方が含まれている可能性があり, 前腕浴によって脳が活性化されるかどうかは未だ不明である. そこで本研究では血行動態データから脳機能成分を抽出し, 前腕浴による前頭前野の活性化について検討した. 健常成人25名を対象に42.0±0.1℃の湯で前腕浴5分を実施した. 評価指標は抽出した皮膚成分を除いた脳機能成分である前頭前野のOxy-Hb濃度および主観的気分とした. その結果, 両側前頭前野のOxy-Hb濃度変化は, 前腕浴の方が非前腕浴よりも有意に高値を示した. 温熱感とリラックス感の変化は, 非前腕浴より前腕浴の方が有意に高値であった. 以上により前腕浴は両側前頭前野を活性化させることが示唆された.

  • 中村 日向子, 西尾 杏美, 岩崎 歩音, 北川 佳歩 , 木下 佳穗, 清水 茉尋, 村中 舞華, 山岸 未来, ハーネド 明香, 松山 ...
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 66-74
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:ミトン拘束が手部の温湿度・汚れ・快適性に及ぼす影響を明らかにした.
     方法:健康成人35名を対象に, 60分間ミトンを装着する条件 (以下, ミトンあり) とミトンを装着しない条件 (以下, ミトンなし) を実施し, 手部の温湿度・汚れ (Adenosine triphosphate, ATP) ・快適性 (主観的評価) を比較した. 手部の温湿度と汚れは対応のあるt検定, 主観的評価はWilcoxon符号付き順位検定を行った.
     結果:ミトンありの手部の温湿度はミトンなしよりも平均して温度3~4℃, 湿度2~3%高く, 10分後・60分後ともに有意に高かった (P<.005) . 手部の汚れを示すATP値の差はなかった. 手部の快適性を示す温冷感・湿り感の主観的評価はミトンありが有意に高く, 快-不快感はミトンありが有意に低かった (P<.005) .
     考察:ミトン拘束は手部の温湿度上昇や不快感をもたらすことから, やむを得ずミトン拘束する場合は, ミトン装着による温湿度の上昇や不快感にも着目し, ミトン拘束の必要性を検討することが示唆された.

  • 一柳 聡子, 中山 栄純
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 75-84
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     研究目的は, 一般外来で熟練看護師が行う患者へのセルフケア支援を明らかにすることである. 一般外来の熟練看護師10名を対象に参加観察および面接調査を行い, データを質的記述的に分析した結果, 【直感的な気付きと鋭い観察力からの問いかけ】【先を見据えた踏み込んだ問いかけ】【アセスメントに基づいて, その場で迷わずに指導】【継続を支えるための意図的なかかわり】【安心して生活できるような協力体制づくり】の5つのカテゴリーが示された. 一般外来で熟練看護師が行っているセルフケア支援は, 看護師の直感的な気付きと鋭い観察力を駆使することで患者の表出されていない思いに気付き, その思いを表出できるようにかかわり, その場で必要な支援を迷わずに行っていた. そして, 熟練看護師が患者のセルフケアの継続を支えるために意図的にかかわり, 患者が安心して地域で生活できるような協力体制を作って支援していることが示唆された.

実践報告
  • 亀田 典宏, 縄 秀志, 佐居 由美, 加藤木 真史, 樋勝 彩子, 鈴木 彩加, 鹿股 美奈子
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 23 巻 p. 85-95
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的はPeople-Centered Careとヘルスプロモーションを基盤として作成した便秘改善プログラムの有用性を検証することである. 本プログラムは, 便秘改善に向けて看護師と当事者がパートナーシップを組み, 初回のweb面談を含めて2週間ごと計4回のweb面談を実施し, 対象者固有の便秘の原因を対象者が主体的にみつけ, 取り組む方法を身につけ, 維持することができるように構成している. 21名のプログラム実施前後の排便状況, 便秘症状 (CAS-MT) , Quality of Life (JPAC-QOL) のスコアを比較した結果, 普通便の平均回数:1.5±1.5対3.2±3.1 (P=.005) , CAS-MT:8.5±1.9対5.2±2.6 (P<.001) , JPAC-QOL:55.3±12.5対43.5±14.3 (P<.001) と改善を示した. また, 腸内環境を推定する尿中のインドキシル硫酸値も87.3±62.9対52.1±32.8 (P=.026) と改善を示した. 以上より, 本プログラムは, 排便状況, 便秘症状の改善, QOLの向上, 腸内環境の改善をもたらすことが示された.

資料
  • 木村 文香, 浅沼 るい, 浅野 茜, 窪田 珠子, 小島 亜美, 佐藤 日向, 豊田 桃加, 美谷島 隆也, 原口 昌宏, 松本 和史
    原稿種別: 資料
    2024 年 23 巻 p. 96-104
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:看護師養成課程における基礎看護学領域でのノーリフティングケア (以下NLC) に関する看護教育の実態を明らかにし, NLC普及のための教育上の課題を抽出することとした.
     方法:看護師養成課程を扱う全国1,023校1,048課程に所属する, 基礎看護学領域科目の教員を対象とし, 無記名Web調査を実施した. なお, 本研究は, 所属研究機関の研究倫理委員会の承認を得て実施した.
     結果:調査票は266部 (回収率25.38%) 回収された. NLCを認知している教員は, 37.97%であった. 5つの移乗用具の教育実施率は, 講義では15.41~72.18%, 演習では20.30~75.57%であった. NLCを知っている, 臨床で経験したことがある, 所属機関に移乗用具が設置されている教員は, 講義および演習でのNLC教育を有意に行っていた.
     考察:看護師養成課程における基礎看護学領域でのNLC教育は普及していない実態があり, 臨床での普及の障壁になっている可能性が示唆された. 今後教員に対するNLC研修, 看護師養成課程における教育内容の見直し等, 教育上の課題に取り組むことで, 臨床現場においてNLCを実践レベルで活用できる看護師の育成に繋がると考える.

  • 栗田 愛, 武田 利明
    原稿種別: 資料
    2024 年 23 巻 p. 105-114
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究は, 在宅要介護高齢者にグリセリン浣腸による溶血や, 溶血が原因となる腎機能障害を回避しながら, グリセリン浣腸と摘便を含む排便ケアにより, 安全かつ適切に排便を促すことができる新規看護実践フローを作成することを目的とした. 看護実践フローの作成には, 先行研究で得られた訪問看護師のアセスメントや排便のケア内容, 溶血の原因となる粘膜損傷の危険性が高い状況に関する知見を用いた. まず, グリセリン浣腸の有害事象を回避する視点で看護実践フローのプロトタイプを作成した. つぎに, プロトタイプに, 訪問看護師が実施していたアセスメント項目と排便ケアを採用できるか否か検討し, アセスメント基準と実践を追加した. さらに, 文献検討により, 作成したフローの妥当性についても検討し, グリセリン浣腸による有害事象を回避しながら, 対象者の便秘の状況が推測でき, 効果的に排便を促進できると考えられるグリセリン浣腸と摘便を含む排便ケアの新規看護実践フローを作成した.

  • 秋山 雅代, 矢野 理香
    原稿種別: 資料
    2024 年 23 巻 p. 115-122
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     臨床経験5年以上で病棟責任者が日常的によい看護をしていると認め, 推薦された看護師10名を対象とした. 面接での語りを質的記述的に分析した結果, シャワー浴の方法は【シャワー浴を安全に実施するために準備する】【洗浄剤と湯をたっぷり使い洗い流す】【温熱効果を高める工夫をする】【素早く水分をふき取り保温する】【シャワー浴中の危険を回避する】の5カテゴリー, シャワー浴実施に対する思いは【患者に気分よく過ごしてもらう】【患者が気持ちを語れる機会になる】【回復を実感できる機会になる】【シャワー浴による温まりや爽快感は患者に活力をもたらす】の4カテゴリーが抽出された. 臨床看護師が行うシャワー浴方法は, 温度差による循環動態への影響を回避することや, 浴後予測される疲労に対する準備, 熱放散を最小限に抑え温熱効果を高める安楽性と安全性を保証する方法であった. 観察やかかわりによって推察された個別の身体的・心理的ニーズから判断した意図的な行為によって【患者に気分よく過ごしてもらう】ことを望む看護師の思いが推察された.

  • 三戸部 純子, 吉田 実和, 檜山 明子
    原稿種別: 資料
    2024 年 23 巻 p. 123-132
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

     看護学生は, 基礎看護技術の習得時に動画を視聴する機会が多い. 字幕や音声解説, 映像の視点や人・物の画面サイズのような言語的・視覚的情報の提示手法は, 認知的情報処理に影響し, 学習の促進や阻害につながることがマルチメディア学習理論として知られている. 本研究では, 基礎看護技術動画のうち, 血圧測定を例にあげ, 書籍やwebで視聴可能な動画16本について, 字幕・音声解説の有無と両者の一致度を言語情報として, 視点と撮影サイズを視覚情報として, 集計し割合を算出した. 解説は字幕が多く, 字幕・音声の併用では, 両者が一致する動画が多かった. 一方, 視覚情報は3人称視点で, 看護師や患者の上半身を映すミディアムショットが多く, 人や物の空間的位置関係や状況の説明に主眼を置いていることが示唆された. 言語情報は処理促進に寄与するが, 字幕の過多は処理の負荷につながる可能性がある. また, 手技そのものの習得には1人称視点やアップショットの方が注意を引き付けやすく有用である可能性もあり, 今後の検討が必要である.

資料(依頼原稿)
原著
  • 山口 夕貴
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 8-17
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 清拭時のウォッシュクロスの扱い方により, 温かさと気持ちよさに違いがあるのか生理的指標および主観的指標により明らかにすることである. 健康な男女12名を対象に, ウォッシュクロスを巻く方法, 握る方法, 畳む方法で右前腕の清拭を実施した. 測定項目は, 皮膚表面温度, 自律神経活動, 主観的な温かさと気持ちよさ (VAS) とした. すべての方法で清拭前と比較して清拭実施後の皮膚表面温度が有意に上昇し, 巻く方法と畳む方法は清拭後5分まで上昇を維持したが, 握る方法は上昇していない時点が混在した. 清拭直後と5秒後では畳む方法が他の方法より有意に皮膚表面温度が高かった. 温かさのVASはすべての方法で7~8を示し, 方法間で有意差はなかった. また, すべての方法間で自律神経活動の有意差はみられなかった. 3つの方法は, 対象者へ温かさをもたらすことが可能な清拭方法であり, 各方法の特徴を理解して使い分ける必要があると考えられた.

  • 服部 美穂, 篠崎 惠美子
    原稿種別: 原著
    2024 年 23 巻 p. 18-29
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

     目的:看護基礎教育における看護技術「整容」の精選と標準化を目指し, 日本の看護学分野における「整容」の概念を明らかにすること.
     方法:Walker & Avantの概念分析法を用いた. 事典1冊, 図書9冊, 医中誌Web, 最新看護索引Web, J-STAGEから検索された27件の計37件を対象文献とした.
     結果・考察:10の属性, 3の先行要件, 9の結果, 28の経験的指示対象を抽出した. 日本の看護学分野における「整容」の概念は, 患者が身体的・精神的な制限により, 「整容」を自ら行うことができない場合, 看護師が【患者の起床時・就寝時に行う】, 【患者の身体状況に合わせて行う】, 【患者を生活者として尊重して行う】ケアであり, 看取り時に【患者の最期の外見をその人らしく整える】ケアであるという属性をもっていた. これら看護学分野独自の属性を教授し, 抽出された経験的指示対象から, 看護技術「整容」の教育内容を精選, 標準化していく必要がある.

実践報告
  • 新木 基子, 森崎 直子
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 23 巻 p. 30-36
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

     目的:地域高齢者の口腔衛生管理の現状を調査し, 口腔健康に関する自覚症状, 健康意識, 教育との関連性を明らかにすることを目的とした.
     研究方法:自記式質問紙を用いて地域高齢者638名に調査を行った. 調査項目は対象の属性と口腔衛生管理の実施状況で, 関連性はχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いて分析した.
     結果:410名から回答を得た. 口腔衛生管理の実施率で最も高かったのは, 歯間掃除75.4%で, 衛生管理用具の使用率で最も高かったのは, 歯間掃除用具51.7%であった. 口腔衛生管理は, 後期高齢者, 女性, 口腔のケアの面倒さ意識なし, 興味・関心あり, 定期的な歯科受診あり, 口腔のケアの指導を受けた経験ありで有意に実施されていた (P<0.05).
     考察:高齢者が口腔衛生管理を行ううえで, 面倒さを感じないような工夫や, 興味・関心を引き出すような働きかけ, 専門職からの指導を受ける等を促進する必要があると考える.
     結論:口腔衛生管理の実施状況は, 口腔の健康意識や教育などの口腔の健康に関する要因と関連していた.

資料
  • 新関 幸子, 明野 伸次
    原稿種別: 資料
    2024 年 23 巻 p. 37-44
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 採血時のマッサージの手技として回数と接触面の違いが血管怒張に及ぼす影響を明らかにすることである. 健常な18歳以上の46名を対象とし, 回数 (5回, 10回) と接触面の大きさ (接触面が大きい:第2指から第5指と手掌が対象者の前腕に接触, 接触面が小さい:第5指の尺骨側が対象者の前腕に接触) が異なるマッサージを駆血10秒後に10秒間実施した. 測定項目は血管断面積と目視による血管怒張度とした. その結果, マッサージ実施後の血管断面積は, 各マッサージ前後の比較では有意に増加がみられ, さらに接触面が大きい, 10回のマッサージにおいて血管断面積の有意な増加が認められた. 血管怒張度は, 回数と接触面の違いによる有意差は認められなかったが, 「1:少し確認できた」以上の変化が約8割にみられた. 以上より, 駆血に加えて接触面が大きい, 10回のマッサージは血管怒張の効果をもたらす可能性が示された.

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