本研究の目的は, 訪問看護師が在宅要介護高齢者に実践したグリセリン浣腸 (GE) と摘便の実施の可否を決定するために必要なアセスメントと実践のプロセスを明らかにすることである. 訪問看護師7名と在宅要介護高齢者17名に対して, 排便の援助を行う場面での参加観察と, 看護師への半構造化面接をした. 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法に基づき, 各看護師のGEと摘便に関するアセスメントをフローチャート式に整理した. その結果, 看護師はバイタルサイン測定, 腹部の聴診, 打診, 触診, 直腸診の順に身体診察を行うほか, 食事量, 最終排便日・排便量の情報も合わせて収集し, 便の貯留状況や便性状をアセスメントし, そのうえで訪問時間内に便が出せるか判断し, GEと摘便の必要性を判断していた. また摘便は, 便の硬さによって実施方法が異なり, 便の硬さに応じて直腸刺激も同時に実施していた. 看護師がGEや摘便の際に出血しやすい, つまり有害事象を起こしやすいと回答した状況は, 硬便であることと痔核があることであった. 今後, 有害事象を回避する視点でGEと摘便のアセスメント基準を構築していく必要がある.
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