NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
最新号
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  • 大里 俊明, 杉尾 啓徳, 野村 亮太, 遠藤 英樹, 櫻井 卓, 麓 健太朗, 野呂 秀策, 山口 陽平, 大竹 安史, 荻野 達也, 石 ...
    2024 年 29 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     2024年4月から「医師の働き方改革」が施行される.勤務医の超過労働時間など劣悪な労働環境が背景となっているが,中でも脳神経外科医は,長時間手術は当然のこと,救急医療,外来業務,病棟管理など「医師の働き方改革」実現には厳しい環境にさらされている.脳神経外科施設管理者は,地域での救急医療の役割・診療実績・マンパワーを勘案した上で,自施設に見合った労働環境を整えることが求められる.

  • 清水 俊樹, 中井 康雄, 土岐 尚嗣, 中西 陽子, 西林 宏起, 中尾 直之
    2024 年 29 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     外傷性頭蓋内出血における外傷性てんかん(posttraumatic epilepsy: PTE)は神経学的予後の悪化に寄与するとされる.そのPTE発症のリスク因子として外傷後7日以内に発症する急性症候性発作であるposttraumatic seizure(PTS)が挙げられており,PTS発症を予測し予防することは重要である.今回,当院において2022年1月から10月までの間に外傷性頭蓋内出血で入院となった56例について,PTSの有無(発作群,非発作群として分類),および患者背景,画像所見を診療録にて後方視的に検討した.1か月以内に死亡した7例を除いた49例のうち,発作群は11例(男7:女4),非発作群は38例(男24:女14)であった.平均年齢は発作群で81.2±12.4歳,非発作群は63.5±26.4歳であり,発作群にてより高齢であった(p=0.033).頭蓋内血腫の内訳としては,急性硬膜下血腫27例(発作群11例:非発作群16例),外傷性くも膜下出血27例(発作群4例:非発作群23例),脳挫傷21例(発作群6例:非発作群15例),急性硬膜外血腫8例(発作群1例:非発作群7例)であった.脳挫傷またはくも膜下出血を有するものは発作群7例,非発作群26例であり,そのうち運動野に局在するものは発作群4例,非発作群3例であった.有意に発作群に多かった(p=0.023).また,急性硬膜下血腫を有している27例のうち側頭葉底部に血腫が進展しているもの(Temporal base‒subdural hematoma: TB‒SDH)は発作群で6例,非発作群で4例であり,有意差は認められなかった(p=0.22).しかし,外傷性くも膜下出血などほかの頭蓋内血腫のない急性硬膜下血腫のみの症例13例では,発作群は4/4(100%),非発作群は2/9(22%)でTB‒SDHを認め,発作群にTB‒SDHが多かった(p=0.021).運動野近傍の脳挫傷や外傷性くも膜下出血,そして側頭葉底部に進展する急性硬膜下血腫が,PTSの発症に寄与している可能性がある.

  • 平田 雄一, 高橋 悠, 池田 彬人, 西廣 真吾, 藏本 智士, 小野 恭裕, 市川 智継
    2024 年 29 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     多発外傷に対するExtracorporeal membrane oxygenation(ECMO)の適応は確立されていない.今回我々は,重症頭部外傷を合併した小児の多発外傷に対してECMOを用いて救命し得た一例を経験したので報告する.症例は13歳男児.乗用車と衝突し受傷.重症頭部外傷,緊張性気胸,肺挫傷,脛骨開放骨折を認めた.酸素化不良で換気障害も進行したため,veno‒venous ECMOを導入し,抗凝固薬を使用した.次第に呼吸状態は改善したが,脳挫傷の増悪を認めた.外傷におけるECMOの使用は確立されていない.また本例のように頭部外傷合併例では頭蓋内出血が増悪する可能性がある.呼吸状態の改善のためECMO導入は有効な手段であるが,抗凝固薬の使用などには慎重な検討を要する.

  • —救命センターにおける連続93例の検討—
    前田 拓真, 宮田 真友子, 内藤 信晶, 吉野 暁子, 田口 裕彦, 武 裕士郎, 渡邊 裕輔, 古峰 弘之, 竹田 理々子, 大井川 秀 ...
    2024 年 29 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     透析患者の増加に伴い,救命センターにおいて脳外科緊急手術を要する透析患者に遭遇する機会が増えている.透析患者における脳卒中のリスクは非常に高いことが知られ,また不均衡症候群や低血圧による転倒・転落頭部外傷も生じやすく,その転帰は一般集団と比較して不良とされている.我々は脳卒中や頭部外傷患者に対し,透析の有無に関わらず血腫量や神経学的重症度で脳外科緊急手術の適応を決定してきた.透析患者に対する脳外科緊急手術の治療成績を後方視的に検討したので報告する.開院からの16年間で,血液透析患者に対して施行した緊急開頭術及び穿頭術93例を対象とした.原疾患は脳内出血:49例(52.7%),くも膜下出血:7例(7.5%),急性硬膜下血腫:15例(16.1%),慢性硬膜下血腫:19例(20.4%),その他:3例(3.2%)であった.全体で頻度の高かった周術期合併症は,術後痙攣発作:12例(12.9%),次いで血腫増大・再出血:11例(11.8%)であった.退院時予後良好(modified Rankin Scale[mRS]スコア:0‒2)・中等度(mRSスコア:3または4)は37例(39.8%)で達成され,死亡退院は25例(26.9%)であった.脳内出血においては,来院時GCS,血腫量,血腫部位が予後因子であった.いずれの疾患においても,手術による救命・予後良好を達成し得た群が少なからず存在しており,透析患者においても血腫量や神経学的所見により手術適応を判断することは妥当と思われた.特に,くも膜下出血,急性・慢性硬膜下血腫,GCS>9または血腫量63 mL未満の脳内血腫に対する脳外科緊急手術はより積極的に考慮すべきである.ただし透析患者の周術期管理においては,術後痙攣発作や再出血など特有のリスクを念頭に置く必要がある.

  • 中村 博彦, 上山 憲司, 麓 健太朗, 野呂 秀策, 荻野 達也, 渡部 寿一, 大里 俊明, 森 大輔, 光増 智, 岡 亨治
    2024 年 29 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     新型コロナ感染症(COVID‒19)による院内クラスターの発生を防ぐためには,入院時にSARS‒CoV‒2感染の有無を調べる必要がある.ID NOWは13分以内に検査結果が出るためスクリーニング検査として有用であるが,偽陽性が問題となる.そこでID NOWが陽性の場合は,同時にPCRを併用して行ってきたが,その結果を後方視的に検討した.オミクロン株が流行した2022年に入院したID NOW陽性の41名の患者の中で,5名がPCR陰性であったが,そのうちの1例は2日後のPCRで陽性になった.ID NOW陽性でPCR陰性の場合は,翌日ないし3日後にPCRを追加し,感染の初期か感染性のない偽陽性かどうかを判定した.感染性のない偽陽性であっても,直近の既感染者であり,コホート隔離で再感染する可能性はないと判断できるものであった.

  • 大仲 佳祐, 栗原 聖治, 進藤 崇史, 岩間 淳哉, 小林 理奈, 小林 徹, 竹林 誠治, 櫻井 寿郎, 和田 始, 瀧澤 克己
    2024 年 29 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     人口の高齢化により,高齢者の急性硬膜下血腫(acute subdural hematoma, 以下ASDH)は増加の一途をたどっている.ASDHにおいて年齢は予後に影響する大きな因子のひとつであり,高齢者の予後は不良とされる.ASDHで緊急開頭血腫除去術を要する場合は,血腫の除去,出血点の同定と確実な止血,必要に応じた外減圧に対応するために大開頭が行われるのが一般的である.しかし,この方法は高齢者に対しては侵襲が大きいものと考えられる.当院では,高齢者ASDH症例のうち,比較的軽微な外傷を契機として発症し,脳表の動静脈が出血源であると予想される症例に対しては,大開頭への移行が可能な準備のもと,予想した出血源を中心とした小開頭で手術を行っている(縮小開頭血腫除去術).2017年1月から2022年9月までに17例で本法を施行したが,全例で血腫は良好に除去され,出血源の確認と止血を行うことが可能であった.高齢者のASDHに対する縮小開頭血腫除去術は低侵襲で安全性の高い有用な手技と考えられたが,適応症例の選択が重要であり,いつでも大開頭へ移行できるように準備をすることが必須である.

  • 木幡 一磨, 吉田 啓佑, 赤路 和則
    2024 年 29 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     【背景及び目的】3Dプリンターを臨床応用する報告は,脳卒中領域では未破裂動脈瘤に関連するものが多いが,破裂症例に対する報告は少ない.今回,くも膜下出血の緊急手術前に3D動脈瘤モデル作成の可否を時間的観点から検討した.【方法】対象:2022年1月から12月までの当院でくも膜下出血と診断された破裂脳動脈瘤連続19症例.中腔モデルと内腔なしモデルを各1個同時作成することを想定し,データ処理時間20分を加えた各症例の動脈瘤モデルのプリント所要時間を算出.動脈瘤を同定した検査から手術室入室までの時間経過を調査し,後方視的に検討した.【結果】手術開始までの平均時間は421分,3Dモデル作成所要時間の平均は180分,全19症例中17例で3時間以内に作成可能だった.手術開始までにモデル作成可能だった症例は11例であった.一方,治療に間に合わないモデルの不足時間は90分未満が6例,90分超が2名であった.【結論】破裂脳動脈瘤の術前検討にテーラーメイド動脈瘤モデルは症例により作成可能と考える.症例を適切に選択すれば手術開始に間に合い,術中の安全性に寄与できる可能性がある.

  • 刈部 博, 成澤 あゆみ, 永井 新, 亀山 元信, 中川 敦寛, 冨永 悌二, 日本脳神経外傷学会頭部外傷データバンク委員会
    2024 年 29 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     抗血栓薬内服下における頭部外傷は,頭蓋内血腫が大きく重症で転帰不良とされ,抗血栓薬を中断・中和し出血傾向を是正すべきか否かが問題となるが,その基準は確立していない.本研究では,近年行われた高齢者頭部外傷入院例の多施設共同登録調査(Think FAST registry)から,抗血栓薬内服下の頭部外傷の現状を検討し中断・中和基準について考察した.Think FAST registryに登録された65歳以上の頭部外傷入院例780例を対象に,年齢,性別,外傷前mRS,重症度,血液・凝固検査所見,CT所見(midline shift),talk and deteriorate(T & D)率,転帰などについて,抗血栓薬内服例と非内服例に分けて検討した.抗血栓薬内服例では中断・中和の有無により2群に分けた検討も行った.抗血栓薬内服例は非内服例と比較して,重症度に差はないが,有意に外傷前mRSが不良で,CT上midline shiftが強く,T & D率が高く,転帰不良であった.抗血栓薬のうち,抗血小板薬内服例では内服中断例は内服継続例と比較して,有意に重症でCT上midline shiftが強く転帰不良であった.抗凝固薬内服例では内服中断例は継続例と比較して重症度,転帰とも有意差は認められなかったが,中和例は非中和例と比較して有意に重症で開頭手術施行率が高く,転帰に有意差はなかった.抗血栓薬内服下の高齢者頭部外傷では,重症例に対する抗凝固薬中和療法は開頭手術を可能とし,一定の転帰改善効果が示唆されるが,中断のみでは効果は不十分と思われた.

  • 池田 憲祐, 岡田 啓, 佐々木 佑太, 藤井 照子, 吉田 裕毅, 丸山 啓介, 野口 明男, 塩川 芳昭, 中冨 浩文
    2024 年 29 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     我が国における高齢化の進行に伴い,破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血(aneurysmal subarachnoid hemorrhage; aSAH)患者も同様に高齢化し,年齢に配慮した治療方針に悩む機会が益々増加すると考えられる.今回,2013年4月から2021年12月までに当院に入院したaSAH患者491例のうち59歳以下と90歳以上を除外し,残る273例について60‒69歳(92例),70‒79歳(97例),80‒89歳(84例)の3群に分け,退院時modified Rankin scale(mRS)が0‒2を予後良好群,3‒6を予後不良群として,aSAH患者の予後不良因子および各年代における特徴を検討した.60‒69歳,70‒79歳,80‒89歳の年齢の平均および標準偏差はそれぞれ64.5±2.95歳,74.4±2.86歳,84.0±2.71歳であり,いずれの年齢層でも女性の割合が高かった.80‒89歳は60‒79歳と比較して発症前mRS 0‒2の割合が低く(p<0.001),高血圧症や虚血性心疾患を持つ割合が高く(p<0.001, p=0.041),抗血栓薬を内服している割合が高く(p=0.018),WFNS grade I‒IIIの割合が低く(p=0.027),手術を行う割合が低く(p=0.031),開頭術よりもコイル塞栓術が選択される割合が高く(p<0.001),治療の完成を達成する割合が低く(p=0.001),退院時mRS 0‒2の割合が低かった(p<0.001).単変量解析では,80歳以上,WFNS grade IV‒V,脳動脈瘤の局在診断,wide neck,非手術例が統計学的に有意な予後不良因子であり,多変量解析では80歳以上,WFNS grade IV‒Vが独立した予後不良因子であった.高齢化が深刻な我が国において80歳以上であることはaSAHの治療方針を決定する上で重要な判断材料になり得る.

  • 小野 光太郎, 須山 嘉雄, 桑原 和久, 川野 陽祐, 長岡 慎太郎, 河原﨑 知, 下川 能史, 西村 中, 有村 公一, 前田 一史, ...
    2024 年 29 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     Carotid webは頚部内頚動脈起始部後壁に発生し得る柵状構造物であり,線維筋性異形成の亜型と考えられる.Carotid web部分で血流のうっ滞が発生し,それによって生じる塞栓物質によって脳梗塞の原因となりうる.特に脳卒中危険因子の持たない若年患者において脳梗塞を引き起こすとされている.治療方法としては内科的治療のみでは再発する可能性が高く,頚動脈血行再建術が考慮される.頚動脈血行再建術の方法については,以前から頚動脈内膜剝離術の報告がされているが,最近は頚動脈ステント留置術(carotid arterial stenting; CAS)の報告が増加している.今回,我々は中大脳動脈閉塞症で発症した症候性carotid webに対して機械的血栓回収術に引き続きCASを施行し良好な経過を得た3例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

  • 三神 和幸, 林 健太郎, 柴田 洋平, 内村 昌裕, 神原 瑞樹, 吉金 努, 萩原 伸哉, 永井 秀政, 秋山 恭彦
    2024 年 29 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     杙創とは,比較的鈍的な長尺の異物による穿通性損傷と定義され,特に頭頚部領域に発症する事は極めて稀な外傷形態である.今回我々は,左頚部に刺さった鉛筆を抜去するにあたり,鉛筆により損傷した椎骨動脈に対してコイルを用いた母血管塞栓術を行った頚部杙創の一例を経験したため報告する.10歳女児.特記既往なし.鉛筆を持ったまま転倒して左頚部に鉛筆が刺さり救急要請された.ドクターカー出動対応で,現場にて先端がずれないようガーゼで作った丸太で鉛筆を挟み固定した.頚椎カラーは異物が邪魔となり装着不能であっため,頭部を用手的に固定保持しながら当院へ搬送した.来院時,バイタルサイン異常なし,意識障害なし,神経脱落所見なし.鉛筆は第7頚椎椎体左側に刺さっており,造影CT検査で左椎骨動脈第6頚椎~第1胸椎レベルに造影欠損を認め,鉛筆が椎骨動脈を貫通もしくは圧迫している所見と考えられた.鉛筆抜去後に大量出血を来す恐れ,あるいは血流再開に伴い血栓が頭蓋内へ飛散する恐れがあり,右椎骨動脈の発達が良好である事を確認の上,予め左椎骨動脈をコイル塞栓術にて塞栓する方針とした.全身麻酔,挿管を行った上で血管造影室へ移動し,造影欠損部の近位側を母血管塞栓し完全閉塞を確認した上で,ハイブリッドER室で鉛筆を抜去した.抜去の際に,逆行性と思われる出血がみられたものの,10分間の頚部圧迫により止血が得られた.治療後明らかな神経脱落所見はみられず,その後も創部感染や仮性動脈瘤形成なども来さず安定して経過し,第30病日目に自宅退院した.重症頚部損傷による椎骨動脈損傷は死亡率が高い.その多くが頚椎骨折を伴う鈍的損傷であり,椎骨動脈の走行の大部分が骨構造に守られているなどの理由により,杙創を含めた穿通性損傷の頻度は低い.穿通性椎骨動脈損傷の治療には血管内治療が有効であり,異物抜去に際し注意すべき点は,順行性血流を確実に遮断する事,並びに逆行性血流を止血する術を検討しておく事である.治療に先立ち画像検査を使用し,状況を精確に評価した上で,患者背景に沿った必要十分な治療を行うことが肝要である.

  • 粟津 智恵, 小原 雅子, 栄山 雄紀, 長澤 潤平, 渕之上 裕, 松浦 知恵, 久保田 修平, 三海 正隆, 阿部 光義, 狩野 修, ...
    2024 年 29 巻 1 号 p. 74-83
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル オープンアクセス

     当院における院内発症脳梗塞患者における臨床的特徴および初期対応の現状と課題を明らかにすることを目的に調査を行った.対象は2009年1月から2019年6月までに東邦大学医療センター大森病院に入院した患者において,入院中に脳梗塞を発症した79例を抽出した.男性47例,女性32例で年齢は72.7±9.8(44‒93)であった.退院時modified Rankin Scale 0‒3を予後良好群,modified Rankin Scale 4‒6を予後不良群とし,両群を比較検討した.その結果,良好群29例,不良群50例であり,不良群は良好群よりも既往疾患として悪性腫瘍が有意に多く(p=0.001),意識障害が強かった(p=0.003).院内発症脳梗塞患者の発見から脳卒中専門診療科へのコンサルテーションにおいて4.5時間以内に限定して比較した場合においては,予後良好群は予後不良群よりも時間を要していた.今後院内発症脳梗塞患者への迅速な対応を行うために,脳卒中診療科以外の医療従事者への啓発や診療体制の整備を進めることが重要である.

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