北海道特別支援教育研究
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北海道特別支援教育研究第15巻1号
  • 蔦森 英史
    原稿種別: 特集
    2021 年 15 巻 p. 5-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    LDは学習面に関する特性であり、発見が遅れやすいことが知られている。二次障害に至る前に発見、対応するためにも、LDの特性理解をすることが不可欠である。日本におけるLD、特に発達性読み書き障害は、複数の認知機能が関わると考えられている。今回は音韻情報処理と視覚情報処理の代表的な障害に焦点を当てて概観した。指導法に関しては、ルリヤの機能的再編成の考え方に触れながら、かな文字の読み、書きに関する効果的な訓練方法を紹介した。集団指導における合理的配慮に関しては若干の具体例を紹介した。北海道において、発達性読み書き障害への理解と対応は十分な状況とは言えないが、教育機関、行政機関、研究機関ともに課題への解決を模索していく事が重要と考えられる。
  • ―学校現場にいかに研究結果を還元できるか―
    奥村 香澄
    原稿種別: 特集
    2021 年 15 巻 p. 15-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    注意欠如・多動症(AD/HD)とは、多動-衝動性、不注意といった状態像を示す神経発達症群の一つである。教育現場にも多く見られており、落ち着きがない、忘れ物が多いなどの行動面だけではなく、学習面においても困難さを抱えていると考えられている。本稿では、AD/HDの実行機能について脳画像研究、特に近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた研究のレビューを行った。近年では、より教室環境に近い状況で実験を行うなど、研究と教育現場を結びつける知見も見 られるようになってきている。今後いかに、これらの研究の知見を教育現場に還元できるかどうかが重要な課題であると言える。
  • ―PBSに基づくアプローチによる検討―
    石塚 誠之, 金曽 美来, 小林 楓花, 帯川 大輝, 小山 茉由, 應矢 志保, 増子 智也
    原稿種別: 特集
    2021 年 15 巻 p. 23-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    本研究では、癇癪行動を呈した発達障害児を対象として、PBSに基づく行動支援を実施し、その効果について検討した。対象児は自閉スペクトラム症の診断があり、幼稚園等で行うゲーム等の勝敗のある遊びにおいて、負けそうになったり、負けたりすると頻繁に癇癪行動を起こしており、適切な行動で自分の気持ちを表現できるようになって欲しいという保護者の強いニーズがあった。癇癪行動の機能分析の結果、要求機能が3.75点と最も高く、癇癪を起こす要因として、思い通りの結果や活動を得ようとする様子が見られた。本指導では、輪投げ、魚釣りを勝敗のある遊びとして、怒りのマネジメントプログラムを実施した。結果、輪投げではベースライン期で適切行動生起率の平均値が35.7%であったが、トレーニングを重ねることで、癇癪行動を起こしても気持ちの切り替えができ、「負けないから」「つぎ頑張る」といった言葉を発する場面が増え、輪投げ、魚釣りともに最終的なポストテストでは適切行動の生起率が100%となった。また勝敗のある遊びの場面以外でも、幼稚園での行事等で失敗をしても癇癪を起こさずに過ごし、また激しい癇癪を起こすことな く、自分の気持ち、感情を言葉にして発することが増えた。激しい癇癪を起こすことなく、自分の気持ち、感情を言葉にして発する行動が汎化したが、これらは、適切な行動で自分の気持ちを表現できるようになって欲しいという保護者の強いニーズに合致しており、その変容はPBSの目指す対象児及び家族のQOLの向上につながったといえる。これらの結果によりPBSに基づく怒りのマネジメントプログラムが自閉症児の癇癪行動の低減に有効であることが明らかになった。
  • 齊藤 真善, 佐藤 凛佳
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 15 巻 p. 33-41
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    定型発達大学生を対象に、無意味綴り文の音読中の眼球運動の分析を行った。条件は、規則的に音読する「2文字ずつ条件」と「3文字ずつ条件」と不規則的に音読する「3-2文字反復条件」の三つであった。結果、拍節リズム(2モーラ音韻単位)に相当する「2文字ずつ条件」は他の条件に比べ、音読のエラー数、視線の逆行数が少なく、かつサッケードの距離が等間隔になる傾向が認められた。また、サッケードが等間隔になることは音読時間の短縮に影響していた。仮名文字列の音読の際、視覚的な情報の処理単位を最小かつ規則的に抽出することは、流暢な音読を促進すると考えられた。
  • 札幌市発達障がい通級指導教室でのアンケート調査を通して
    山下 公司, 藤原 千華, 春田 和之, 村井 めぐみ, 齊 葉子, 佐藤 史人, 小野寺 基史
    原稿種別: 資料論文
    2021 年 15 巻 p. 43-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    札幌市発達障がい通級指導教室担当者に、新型コロナウィルス感染拡大防止のための臨時休業等が子どもに及ぼす影響についてアンケート調査を実施した。その結果、ケースによっては臨時休業が有効に作用する場合も見られた。学習面での困り感を示す場合、学習補充の時間となり、対人面で困り感を示す場合、接触が減ることで自己肯定感の低下を防ぐことにつながった。一方、不安傾向の強い場合や家庭環境が整わない場合においては、より困難さが顕在化する場合も見られた。今後、臨時休業になった場合は、困難さを深刻化させないためにも、通級指導教室が「変わらない存在」であることが望まれる。
  • 穴田 千果, 安井 友康
    原稿種別: 資料論文
    2021 年 15 巻 p. 51-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    特別支援学校における運動部活動の状況を明らかにすることを目的に、北海道内の知的障害高等支援学校の運動部の活動状況や地域との交流、卒業生の参加などに関するアンケート調査を行った。調査対象25校のうち回収校数は22校、回収率88%、回答者数は69名であった。その結果、ほとんどの学校で運動部が設置されているが、活動は週に2日が多く、長期休業中の実施も少なかった。また半数近くが卒業生との交流を行っていたが、その頻度は年に2-3回が多く、地域情報などを含め卒業後の運動環境の整備が求められた。
  • 加藤 順也, 北村 博幸
    原稿種別: 資料論文
    2021 年 15 巻 p. 63-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    本研究ではSchneider and McGrew(2018)で示されているCHC理論について概観したあとに新たに示された学習効率(Gl)と検索の流暢性(Gr)について臨床活用へ向けた考察を行った。CHC理論については、階層構造と広範的能力及びその限定的能力の定義・内容について示した。学習効率(Gl)と検索の流暢性(Gr)については、KABC-Ⅱの語の学習と語の学習遅延がいずれも学習効率(Gl)に位置づけられることが明らかとなった。今後の課題としては、検索の流暢性(Gr) の評価方法の確立が必要であると考えた。
  • 紺野 佳苗, 千賀 愛, 安井 友康
    原稿種別: 資料論文
    2021 年 15 巻 p. 75-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー
    本研究は北海道の教員免許保持者のインクルーシブ教育に対する意識・態度の傾向を明らかにすること及び関連する要因を探ることを目的として、教員免許保持者166名を対象者にアンケート調査を実施した。その結果127名から回答を得た(回収率76.5%)。インクルーシブ教育が子どもや教師に与える影響について、特別支援教育経験の有無による比較を行ったところ、特別支援教育の「経験がない者」は、「ある者」に比べ、「障害のある子どもとともに学ぶことで他の子どもの障害理解が進む」と考えるとともに、「自分の知識や技術への不安」が大きく、「学級づくりについての相談する機会」を求める傾向が強いことが示された。
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