ラットに質および含量の異なるタンパク食 (10%カゼイン食, 10%アルブミン食, 30%アルプミン食) を10日間投与した後, 無タンパク食1, 2, 3, 4, 5, 7, 14, 21日間投与によりタンパク欠乏状態へと切り換えた。 この間の動物の血漿・肝臓。 筋肉中のタンパク含量・核酸含量・遊離アミノ酸 (FAA) 濃度を測定し, さらに各組織と血漿のFAA濃度比を算出した。 以上より, タンパク欠乏適応過程におけるこれらの変化に及ぼすタンパク欠乏期前の投与タンパク質の質および含量の差による影響を検討した。 その結果は, 次のとおりである。
1) 血漿中のタンパク含量, 肝臓・筋肉中のタンパク質/DNA・RNA/DNAは, タンパク欠乏初期では, C
10群, A
10群, A
30群の順で減少を始め, 欠乏期前の投与タンパク質の質の違いではC
10群よりA
10群のほうが, また, アルブミン群間では含量の高いA
30群のほうが, タンパク欠乏に対して, タンパク含量, RNA含量の減少を抑制する傾向があった。
2) 欠乏5日目以降のタンパク質/DNA・RNA/DNAの変化は, 肝臓と筋肉で異なり, 肝臓は3群とも5日目から14日目にかけて増加傾向を示したが, 筋肉では3群とも減少傾向を示した。
3) 血漿・肝臓・筋肉中のほとんどの必須アミノ酸は3群ともタンパク欠乏期に減少し, 非必須アミノ酸は血漿。 肝臓中のほとんどが増加, 筋肉中では減少した。 いずれも初期は変動が大きかったが, 7日以降では変化がわずかとなり3群とも近似の値を示すFAAが多かった。
4) 組織/血漿FAA濃度比では, Lys, His, Thr, Metが特徴的な動向を示した。 タンパク欠乏期に, Lysはいずれの群も肝臓/血漿濃度比と筋肉/血漿濃度比はほぼ等しく, 組織間相互でのLys濃度比は一定に保たれていた。 Hisは3群とも低下し, とくに筋肉/血漿濃度比において著しかった。 Thrは肝臓および筋肉/血漿濃度比が, Metは肝臓/血漿濃度比が, C
10群は低下, A
10, A
30群は上昇傾向を示し, タンパク欠乏前の投与タンパク質の質の違いによる影響が認められた。
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