日本栄養・食糧学会誌
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37 巻, 3 号
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  • 北野 隆雄, 高橋 恵美, 池原 慶子, 小倉 希容子, 梶原 苗美, 松平 敏子, 小石 秀夫
    1984 年 37 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    大阪市内の某福祉施設に居住する, 3~6歳の男児25名, 女児20名, 計45名を対象にN出納, エネルギー利用について調査研究を行なった。今回の調査において, 次のような結果を得た。
    1) 身長, 体重, N出納, エネルギー利用等に男女間の差を認めなかった。
    2) 日常食での平均N摂取量は403±9mg/kgであった。そのときのN吸収率, 体内N保留率は, それぞれ92.3±0.3, 16.9±1.6%であった。また, N摂取量 (Xmg/kg) と体内N保留量 (Y mg/kg) との回帰式は,
    Y=-84.9+0.395 X (r=0.624, n=45, p<0.01) であった。
    3) 日常食でのエネルギー摂取量は, 74.7±1.6kcal/kgであった。また, 日常食よりおよそ10gのタンパク質を減じた食事を与えたときのエネルギー摂取量も75.9±1.3kcal/kgと日常食との間に差は認められなかった。このときのエネルギー利用率は96.2±0.21%であった。また正味エネルギー利用率は, 93.9±0.3%であった。摂取エネルギー量 (X kcal/kg) と正味エネルギー利用量 (Y kcal/kg) との回帰式は,
    Y=-0.769+0.950 X (r=+0.998, n=21, p<0.01) であった。
    4) 尿中に排泄されたエネルギー量は, 日常食では, 1.70±0.14kcal/kg, 低タンパク質食で1.74±0.13kcal/kg, であった。また, 尿中N×6.25 (タンパク質1gに由来する量) に対するエネルギー量は, 日常食で, 0.88±0.05kcal/g protein, 低タンパク質食で1.25kcal/g proteinであった。
  • 徳田 節子, 奥寺 麻知代, 斎藤 衛郎, 薄木 理一郎, 金田 尚志
    1984 年 37 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 小麦胚芽油の血漿コレステロール減少効果を他の植物種子油と比較するため, ラットに小麦胚芽油不けん化物を2倍に増量して, 綿実油, 大豆油を与えたところ, 小麦胚芽油給与群の血漿コレステロールは他の植物油より有意に低下した。
    2) 小麦胚芽油を給与したラットの肝臓コレステロール値はとくに著しく減少した。
    3) 上記効果を示す成分を明らかにするため, 小麦胚芽油不けん化物をケイ酸カラムクロマトグラフィーで区分けし, ラットに与えた。
    4) その結果, β-シトステロール, カンペステロール, 24-メチレンシクロアルタノールを主とするステロールに富む区分を与えた群の血漿コレステロールおよび肝臓コレステロールは著しく低下した。
    以上の結果は小麦胚芽油中に多量に存在する植物ステロールおよびすでに報じた1) , 24-メチレンシクロアルタノールの相乗効果によると思われる。
  • ラットによるトコフェロールの吸収に関する研究 (第2報)
    兼松 弘, 知見 憲次, 牛草 寿昭, 新谷 勳, 藤田 忠雄, 亀井 正治, 神戸 保, 佐々木 清司
    1984 年 37 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    As an Experiment I, tocopherols in several tissues of rats in a normal and a vitamin E deficiency groups were temporally analyzed by high performance liquid chromatography, after forced administration p. o. of roughly equal mixture of α-, β-, γ- and δ-tocopherol (m-Toc). Similar to the Experiment I, the Experiment II was made by analyzing tocopherols in adipose tissue and back skin after a forced administration of m-Toc and after consecutive forced administration p. o. of δ-rich mixture of tocopherols (δ-rich-Toc) for 4 days.
    1) In general, the peak level of each tocopherol in tissues appeared by the order of small intestine, liver, serum and lung, after administration of m-Toc. It seemed that the uptake and disappearance in these tissues occurred by the order of δ≅γ>β>α.
    2) In a single administration of m-Toc, there was no evidence that δ-tocopherol was more readily accumulated in adipose tissue and back skin than the other tocopherols.
    3) After the consecutive administration of δ-rich-Toc, the concentration of δ-tocopherol in adipose tissue apd back skin showed to increase remarkably. But such administration of α-tocopherol showed no increase of it in the tissues. It was suggested that the accumulation of δ-tocopherol in these tissues is higher than that of other tocopherols.
    4) In the back skin of rats administered δ-rich-Toc, it seemed that δ-tocopherol was mainly present in the fat fraction, while α-tocopherol in the skin tissue.
  • 木村 善行, 奥田 拓道, 毛利 和子, 奥田 拓男, 有地 滋
    1984 年 37 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) コーンオイルに酸素を注入しながら180℃, 1時間加温して過酸化させた後, ラットに強制的に1週間経口投与すると血清中のGOT, GPT中性脂肪の遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇, 肝臓中の総コレステロール, 中性脂肪および過酸化脂質の蓄積が認められた。
    2) 過酸化コーンオイルとともに緑茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与した場合, 体重の増減は見られず, 血清中のGPT, 遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇が軽度抑制され, 肝臓中の中性脂肪の蓄積も軽度抑制された。血清中の総コレステロール, 中性脂肪, 動脈硬化指数, GOTおよび肝臓中の総コレステロール, 過酸化脂質については過酸化コーンオイル投与群に比較して有意な差は認められなかった。
    3) 過酸化コーンオイル投与ラットにウーロン茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与すると, 体重には変化はなく, 血清中の遊離脂肪酸および中性脂肪の上昇が軽度抑制され, 肝臓中の総コレステロールおよび過酸化脂質の蓄積が軽度抑制された。血清中の高比重リポタンパクコレステロール, 過酸化脂質, GOT, GPTおよび肝臓中の中性脂肪については過酸化コーンオイル投与群と比較して有意な差は認められなかった。
    4) 過酸化コーンオイル投与ラットに紅茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与すると, 体重の変化は認められず, 血清中の遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇が軽度抑制された。血清中の高比重リポタンパクコレステロール, 総コレステロール, 中性脂肪, GPTおよび肝臓中の過酸化脂質については過酸化コーンオイル投与群に比較して有意な差は認められなかった。
  • 星 清子, 竹久 文之
    1984 年 37 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    血清コレステロールと強い相関をもつ血清ビタミンEの妊娠に伴う生理的上昇に対する各種DF (リンゴパルプ, 小麦フスマ, セルロース, ペクチン, グァーガム) の影響を検討した。
    実験動物として, Wister系妊娠ラットを用い, 妊娠0から20日目まで各実験食 (10%リンゴパルプ食, 10%小麦フスマ食, 10%セルロース食, 10%ペクチン食, 10%グァーガム食, 5%グァーガム食, 無繊維食) で飼育後, 21日目に屠殺し, 血清ビタミンEコレステロール, リン脂質, 肝臓および胎仔中のビタミンE量を測定し, 次の結果を得た。
    1) DFはコレステロールの生理的上昇を抑制することはなかった。
    2) 小麦フスマ, セルロースは血清ビタミンE/コレステロール比を上昇させた。
    3) ペクチン, グァーガムは, とくに胎仔ビタミンE量を低下させた。
  • 鯨 幸夫, 石黒 弘三
    1984 年 37 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    洋種ホウレンソウを材料に用い, 栽培環境の違いが, 植物体内のL-アスコルビン酸含量に及ぼす影響を, 植物の形態とも関連させて, 食品栄養的な見地から検討した。栽培は, 屋外自然区 (A区: 相対照度100%), 屋外遮光区 (B区: 相対照度25~32%), ビニールハウス区 (C区: 相対照度25~32%, 加温) の3処理区で行なった。L-アスコルビン酸の定量は, 高速液体クロマトグラフ (HPLC) によって行なった。
    1) 葉の形態を調べるためSLA (葉面積cmcm2/葉身乾重) を計算した。B, C区でのSLA値は, A区より大きく, 遮光処理により葉が薄くなったことを示している。
    2) 生重100g当たりのL-アスコルビン酸含量は, A区>B区>C区を示した。遮光処理によってL-アスコルビン酸含量は減少したが (p<0.01), 遮光条件下の加温による効果は, 統計的には認められなかった。
    3) 単位重量当たりのL-アスコルビン酸含量と, 葉身部のクロロフィル含量との間には, 有意な正の相関関係が認められた (r=0.647, p<0.01)。
    4) ビニールハウスで栽培されたホウレンソウは, 生育が早く, 形も美しいが, 露地栽培と比べて, 単位生重量, および, 単位乾重量当たりのL-アスコルビン酸含量が低下しており, これは, 栽培環境の光の減少と, 加温による生育促進が原因と考えられた。
  • 鯨 幸夫, 石黒 弘三
    1984 年 37 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    洋種ホウレンソウを材料に用い, 栽培環境の光照度, 温度, 培地鉄濃度の違いが, 植物体内の鉄含量に及ぼす影響を, 食品栄養的な見地から検討した。栽培は, 1982年9月から11月にかけて, 次の条件で行なった。屋外自然区 (A区: 相対照度100%), 屋外遮光区 (B区: 相対照度25~32%), ビニールハウス区 (C区, 遮光: 相対照度25~32%, 加温栽培区) の3処理区で行なった。鉄含量の定量は, 原子吸光光度法によって行なった。
    1) 葉身部乾重100g当たりの鉄含量は, 遮光処理によって増加したが (p<0.05), ビニールハウス区での遮光条件下での加温効果は認められなかった。
    2) 葉柄部乾重100g当たりの鉄含量は, 遮光処理によって増加したが (p<0.05), B区とC区との間では, 有意差は認められなかった。
    3) 培地鉄濃度 (Fe-EDTA) を, 3.65, 14.6, 29.2, 51.1 ppmの4段階に変化させた場合, 葉身部および葉柄部乾重100g当たりの鉄含量に有意差は認められなかった。
    4) 個体当たりの葉身部に含まれる総鉄量と, 個体当たりの葉面積, 葉身部重, 地上部重との間には, それぞれ, 有意な正の相関関係が認められた。
    5) 個体当たりの葉柄部総鉄量と, 葉柄部乾重, 地上部乾重との間にも, 有意な正の相関関係が認められた。
  • 伊藤 和枝, 小野 チエ子, 村井 都, 熊川 キミエ
    1984 年 37 巻 3 号 p. 251-266
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ナトリウム摂取量の大半を占めるのは調味料中のナトリウムであるが, その調味料は調理形態によっては使用したすべてが摂取されるのではなく, 調理または喫食時にかなりのロスが考えられる。そこで食事調査におけるナトリウム摂取量をより正確に把握するため, 素材別, 調理法別, 調味割合別に, 調理による調味料ナトリウムの変動から, 調理後可食部への歩留りを残存係数として算出した。
    残存係数のおもなものは, 次のとおりであった。
    1) 魚しょうゆ煮の煮汁の残った状態では, 切身骨付0.55, 切身骨なし0.65であった。
    2) 魚塩焼の青魚切身骨付0.60, 切身骨なし0.75, 姿0.25, 白身魚姿0.40であった。
    3) おでん0.50, すき焼き0.85であった。
    4) 和風酢の物0.58, 洋風ドレッシシグサラダ0.55, ほうれん草ごま和え0.85であった。
    本実験の成績は, 食事調査におけるナトリウム摂取量把握の精度を高めるため, 調理に使用した調味料重量に残存係数を乗じた数値を純摂取量として用いることとした。また調理形態別, 調味割合別, 素材別に異なる調味料ナトリウムの歩留りは栄養指導の実践的な資料として広く活用しうるものと考えられる。
  • 吉田 企世子, 森 敏, 長谷川 和久, 西沢 直子, 熊沢 喜久雄
    1984 年 37 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    有機質肥料として, なたね油かすおよび骨粉を用いて栽培したトマト (品種: サターン) の示す物性を, 無機質肥料および有機無機混合肥料で肥培されたそれとの比較において検討した。その結果は次のとおりであった。
    1) 果肉の硬さは, 果頂部, 果底部とも有機区が最も硬く, 無機区, 混合区はだいたい同じ傾向であった。これは, 官能検査において記述法により表現された評価と一致した。
    2) 凝集性, 咀しゃく性は, 果頂部, 果底部とも有機区が最も大きく, 混合区, 無機区の順にその差が示された。
    3) 付着性は, 果頂部は有機区, 無機区に差はなく, 果底部は混合区, 無機区, 有機区の順に大きかった。
    4) 果皮の硬さは, 果頂部は有機区が大きく, これは官能検査の評価と一致した。
    5) 有機区は果頂部と果底部の果皮の硬さが均一であったが, 無機区および混合区ではその差が大きかった。
    以上のことから, 有機区のトマトは果肉がしまっており, また果皮も硬く, これは嗜好性に影響するだけでなくトマトの貯蔵性も高めていると考えられる。
  • 浅野 一朗, 松下 雪郎
    1984 年 37 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    生鮮材料に含まれる過酸化脂質の検索法を確立するため, 牛レバーを材料にして, 抽出, 分析法を検討した。すなわち, 抗酸化剤BHTを添加したソルベントで抽出し, 抽出後ただちに還元し, ついで水添, TMS化し, GC-MSにて分析した。用いた牛レバー中には100g中0.012gの過酸化脂質が含まれていた。また過酸化脂質は, オレイン酸, リノール酸, アラキドン酸, ドコサヘキサエン酸に由来すると推定された。
  • 坂井 和男, 福地 知行, 村上 篤司
    1984 年 37 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    廃棄されている大根葉の有効利用法の一つとして, 大根葉から葉タンパク質 (LPC) を回収し, その栄養, 回収率, 色調について検討した。
    1) 大根葉を破砕して, 繊維質を除いた緑色ジュースを作り, これから加熱法によって緑色のLPCを得た。
    2) LPCのタンパク質含量は固型物換算で約72%であり, そのアミノ酸価も100と高い。
    3) 原料大根葉に含まれるタンパク質量の約53%がLPCとして回収される。この回収率は, 原料大根葉のタンパク質含有率によらず, ほぼ一定である。
    4) 大根葉の破砕を2度行なうことにより, タンパク質回収率は4%上昇する。また緑色ジュースのpHを5付近まで下げることによって, 回収率は3%上昇した。塩析効果は認められない。
    5) 緑色ジュースのpHを7付近に調整することにより, 最も鮮明な緑色LPCが得られる。
  • 豆腐ように関する研究 (第3報)
    桂 正子
    1984 年 37 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 1984/06/12
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    豆腐ようの揮発性カルボニル化合物についてGLCで分析を行ない, さらに熟成過程中のプロテアーゼ活性および還元糖の変動についても比較検討した。
    1) 2, 4-DNPHの含有量は, 泡盛漬で0.38~0.54 (g/kg), エタノール漬で0.27~0.43 (g/kg) であった。いずれも熟成期間3か月で最大値を示し, 生豆腐の2, 4-DNPH含有量0.04 (g/kg) の約6~13倍であった。
    2) 揮発性カルボニル化合物をGLCによって分析した結果, 泡盛漬豆腐ようには, ホルムアルデヒド, アセトアルデヒド, プロピオンアルデヒド, イソブチルアルデヒド, ジアセチル, 2-メチルブチルアルデヒド, イソバレルアルデヒド, n-バレルアルデヒド, カプロンアルデヒド, 2-ヘプタンそしてフルフラールの11種類のカルボニル化合物が含まれており, 熟成させることにより減少する傾向にあった。
    3) プロテアーゼ活性については, pH 3.0~4.0付近とpH 5.5~7.0付近でプロテアーゼ活性を示した。
    4) 還元糖については, 生豆腐には, 1.9mg/g含まれており, 1か月漬けたものに6.4mg/gと急激に増加し, その後, 3か月と6か月漬けたものはほぼ一定で5mg/g程度であった。
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