日本栄養・食糧学会誌
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39 巻, 3 号
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  • 柏崎 浩
    1986 年 39 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 48名の健康な中高年主婦を対象として, 心拍数の24時間連続記録から推定したエネルギー消費量は, 1, 544±258kcal/dayであった。この値から算出した生活活動指数xの平均値は0.36±0.23であった。
    2) 日記法による生活時間調査記録を利用して, 基礎代謝基準値および既存データから各活動ごとのエネルギー代謝率 (RMR) をあてはめて求めたエネルギー消費量と生活活動指数はそれぞれ, 1, 983±249kcal/dayと0.60±0.14であった。
    3) 生活活動指数を0.35と固定して基礎代謝基準から, 個人のエネルギー所要量を算出した場合, 実際のエネルギー消費量に比較して20%以上の過大な見積りとなるのは全体の23%で, 逆に20%以上の過小見積りは6%であった。
    4) 日記法による生活時間調査において生活活動強度が過大に評価される傾向が認められた。心拍数法で求めた睡眠時を除く生活時間のエネルギー消費量 (kcal/min) と, 平均RMRとの間に相関は認められない (r=0.173, p=0.24)。あてはめた個々のRMRが実際の活動強度を反映していないことがその理由であるが, 生活時間調査法から得たエネルギー消費量は系統的に高く推定されるのではなく, 個人ごとに誤差の程度が異なる。
  • 金子 佳代子, 西田 京子, 小池 五郎, 平井 幸彦, 吉野 芳夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 165-168
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 成人女子5名の被検者に, 安定同位体58Fe をトレーサーとして投与し, fecal monitoring methodにより, 鉄の吸収率を測定したところ, 個人差および食事内容による変動が大きかった。
    2) 肉, 魚を含む日本人日常食における58Fe の吸収率は22~41%となり, 高繊維食ではその2分の1以下に吸収率の低下することが観察された。
    3) 本研究の結果, 58Feを利用することにより, 人体を対象として鉄の吸収率を実測することは可能であると考えられる。今後さらに対象者, 実験条件等を検討して研究を進める必要があると思われる。
  • 溝口 順二, 宮本 康夫, 今道 友則
    1986 年 39 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    The present study was undertaken to determine whether starvation could affect the exocrine pancreatic function in the rats. Male Wistar-Imamichi rats of 9 weeks of age were starved and changes in concentration of pancreatic enzymes during starvation period were examined. Amylase concentration started to drop from day 3 of starvation and decreased progressively to a level of 20% of that in the control rats on day 12. The concentrations of protease and trypsin, however, remained relatively unchanged by day 3 or 6, from that time, started te increase. Protease concentration reached a value, three and half times higher than that of the control rats on day 12. Plasma glucose concentration showed a slight decrease in the starved rats as compared to the control rats during starvation period. Plasma insulin level, in contrast, in the rats starved for 3 days was about one-tenth of that in the control rats. A treatment of insulin prevented a decrease in amylase concentration in the starved rats. Similar changes in pan reatic enzyme concentrations, decrease in amylase and increase in protease, were observed in the alloxan diabetic rats and the decrease in amylase concentration was recovered by insulin treatment. Based on these findings, it is concluded that the change in amylase concentration during the starvation period may be a result of a decrease in plasma insulin concentration.
  • 片山 純男, 三橋 重之, 大江 道夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    自家繁殖, 継代飼育したカニクイザルにサル用市販固形飼料を給餌し, 年齢別に腸内フローラの変化をしらべた。糞便1gあたりの総菌数は0.5~1歳 (A群), 2~3歳 (B群), 4~5歳 (C群), 6歳 (D群) の4群では1010個に推移したが, 10歳以上 (E群) では109.7とやや減少した。
    A~E群のいずれについても, 腸内フローラ中Bacteroidaceae, EubacteriumおよびStreptococcusの3種が優勢で主たるフローラを構成していた。
    A群ではこれらの主たるフローラのほかに, Bifidobacteriumが多くみられた。B群ではBifidobacteriumはA群とほぼ同数存在するが, LactobacillusがA群よりも増加した。C群ではMegasphaeraが増加し, Clostridiumが減少したが, 全体としてはB群とほぼ同じ傾向を示した。D群では主たるフローラの構成比率がB群およびC群とかなり異なっているほか, Megasphaeraが全群中でもっとも多かった。E群は主たるフローラの中でStreptococcusが他の群よりも明らかに減少していた。また, Megasphaeraも同様に他の群よりも減少した。
    これらの結果から, カニクイザルの腸内フローラは加齢により変化すること, さらにこの変化からカニクイザルを0.5~1歳, 2~5歳, 6歳および10歳以上の4群にわけることができると考えられた。
    ヒトの腸内フローラをしらべた他の報告と比較して若干のちがいがみられるが, カニクイザルをヒトのモデルとして栄養, 代謝実験に使用しうるものと考えられた。
  • 片山 純男, 三橋 重之, 吉原 大二
    1986 年 39 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    窒素源として乳タンパク質を, 糖質源としてデキストリン, 乳糖および乳糖の加水分解物を含有する低残渣型消化態経腸栄養剤S-185と, 窒素源としてアミノ酸混合物を, 糖質源としてデキストリンのみを含む無残渣型成分栄養剤ED-ACとを用いてカニクイザルを飼育し, 腸内フローラの変化をしらべた。
    1群4頭から成るカニクイザル2群についてクロスオーバー法により両栄養剤を供与した結果, Streptococcus, BifidobacteriumおよびPeptococcaceaeの3種の微生物は, 栄養剤の種類によってその構成比が有意に変化することがわかった。この中で宿主にとって有益と考えられるBifidobacteriumはS-185供与群では糞便1gあたり約1010個であり全菌数に対する構成比も28~35%を示したが, ED-AC供与群では同じく約106~108個, 0.01~0.71%であって, 明らかにS-185供与群で高かった。これに対しStreptococcusPeptococcaceaeはED-AC供与群でそれぞれ107~108個および109個であり, S-185供与群での値, 105~106個および108~109個よりも高かった。
    栄養剤の種類による構成比に有意差はなかったが, Bacteroidaceaeは全菌数に占める構成比がもっとも高く, S-185供与群では33~44%, ED-AC供与群では67~76%であった。また, BifidobacteriumとBac-teroidaceaeの増減は相互に拮抗しており, S-185供与群ではBifidobacteriumの増加とともにBacteroidaceaeが減少した。ED-AC供与群では逆の傾向がみられた。
    このような現象は飼料として用いた両栄養剤の成分組成, すなわち窒素源と糖質組成のちがいによるものと考えられたが, とくに糖質組成のちがいが大きいと考えられ, S-185に含まれる乳糖およびその酵素加水分解物が小腸で吸収されず大腸まで到達するため, 下部消化管中に存在するBifidobacteriumのような有用菌の増殖を促進するものと考えられた。カニクイザルで得られたこれらの実験結果はヒト成人にもあてはまるものと考えられる。
  • 桑野 和民, 三田村 敏男
    1986 年 39 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    南極オキアミ (オキアミ) の食用向け姿身製品を生産するための海水煮熟処理は, 鮮度低下, 自己消化, 黒変等を防止する手軽な方法として用いられているが, 有用成分の溶失, 食塩の浸透, 処理エネルギーが多い等の不利点もある。そこで, それらの不利点を解決し, オキアミをより有効に利用するために熱風煮熟処理を考案した。以下は, 船上処理への基礎データを得るために行なった試験機での試験結果を海水煮熟処理と比較した結果である。
    1) 熱風煮熟処理試験機は, ヒーター部 (1.5kW/hr), 送風部 (2m3/min), 処理部 (~400g/回) 等からなるものである。試験時の熱風温度は180℃とし, 1~7分間処理を行なった。また, すべての系は密封して熱風を循環させ, 乾燥による歩留り低下を防ぐとともに, 純水を連続的に添加しながらの処理も行なった。
    2) 製品歩留りは5分の処理で海水煮熟処理が92%, 熱風煮熟処理の熱風のみの処理が58%, 純水を添加 (3ml/min) しながらの処理が80%であった。それに対して固形分歩留りは同じく5分の処理で熱風煮熟処理のほうが7%以上高く94% (熱風のみも純水添加も同一) であった。
    3) 煮熟効果 (タンパク質の不溶化, 黒変の防止) は, 海水煮熟処理がわずかに高く, 速かったが, 実用上の問題はないと考えられた。
    4) 海水煮熟処理では処理中に食塩が浸透し, 3分の処理で生の約3倍 (2.6%) にまで含有量が上昇した。熱風煮熟処理は当然浸透はない。
    5) オキアミ1,000kgを加熱処理するためのエネルギーを算出したところ, 海水煮熟処理がA-重油使用量で約62kg (現場での平均値は65kg) であるのに対して, 熱風煮熟処理は, 乾燥防止のため真水を10%添加したとしても, 13.0kgでよく, 燃料費を1/4以下におさえられる結果となった。
    上記の結果から, 熱風煮熟処理の有用性がうかがえたが, さらに窒素歩留りや品質等の検討を加える必要がある
  • 南極オキアミの熱風煮熟処理について (第2報)
    桑野 和民, 酒巻 千波, 三田村 敏男
    1986 年 39 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    南極オキアミ (オキアミ) の食用向け姿身製品製造のために開発した熱風煮熟処理と, 現在行なわれている海水煮熟処理について, 前報に引き続き検討し, 以下の結果を得た。
    1) 窒素 (N) 歩留りは, 前報の固形分歩留り同様熱風煮熟処理が高かった。N歩留りの内訳をみると, 2.5% TCA可溶性N (ペプチド態N, アミノ態N, ヌクレオチド態N等) が海水煮熟処理では約48%にまで減少していたのに比べて熱風煮熟処理では約82%と小幅の減少であった。この差は製品の味にも現われ, 熱風煮熟処理による製品は, 旨味が強く感じられた。
    2) ペプシン消化率は, 熱風煮熟処理したものは生に比べて若干低かったものの, 海水煮熟処理したものよりは高く, 消化性の問題はないと考えられた。
    3) 粗脂肪の歩留りにおいても, 熱風煮熟処理の優位性に変りはなかった。TBA値は熱風煮熟処理したほうが高かったが, 問題はないと考えられた。
    4) カロテノイド含有量は, 加熱処理により5~8%の減少が認められたが, 他成分のような大きな差は認められなかった。
    5) 色差計で測定した製品の色は, 目視の結果と同様海水煮熟処理した製品はオレンジ色が強くなっていたが, 熱風煮熟処理したものは生とほぼ同じ色相で, 赤味の強いきれいな製品であった。
    以上の結果, 熱風煮熟処理はオキアミ姿身製品を製造するための優れた処理方法であると考えられた。
  • 田口 邦子, 河端 信, 大槻 耕三, 田中 敬子
    1986 年 39 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    大豆発酵食品である納豆およびテンペーについて, 発酵による難消化性多糖の変化について検討を行なった。
    納豆においては, 対照の蒸煮大豆に比べて, OIR中のDE量には, ほとんど変化が認められなかったが, ペクチン物質の含量が増加し, その構成糖では, ガラクチュロン酸, アラビノースおよびガラクトース含量が増加した。
    テンペーにおいては, 発酵によりヘミセルロース量が減少した。これは, テンペー菌の生産した分解酵素により, ヘミセルロースが分解された結果と考えられる。一方, テンペーのシュウ酸塩不溶残渣中の構成糖として, とくにグルコサミン含量が増加したことは, 菌体不溶性多糖として, 新たにキチンが生産されたことが考えられる。
  • 白石 久二雄, 河村 日佐男, 大内 昌子, 田中 義一郎
    1986 年 39 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 日常食からの元素1日摂取量を求めるため, ICP-AESを用い多元素同時分析の有効性について検討した。
    2) 1960年代に札幌と京都で, 1980年代に水戸で陰膳法にて採取した試料を灰化し塩酸溶液にした。まず, ナトリウム, カリウム, カルシウム, マグネシウム, リンの主成分を測定後, これらの元素を標準溶液に同一濃度水準で添加した。他の10元素はMatrix matchingによりバックグラウンド, および物理干渉を除いて測定した。
    3) 水戸の9食分合併試料のマトリックスは, 京都, 札幌の30食合併試料のマトリックスとほぼ一致し, 同一条件で測定できた。
    4) 成人男子1日当たりの摂取量は, ナトリウム4.7g, カリウム2.0g, リン1.1g, カルシウム0.58g, マグネシウム0.21g, 鉄12mg, 亜鉛7.7mg, アルミニウム4.7mg, マンガン4.0mg, ストロンチウム2.3mg, 銅1.3mg, バリウム0.45mg, ニッケル0.22mg, モリブデン0.18mg, イットリウム4μg, であった。
    5) ICRPの標準人の摂取量と比較すると, ナトリウム, マンガン, ストロンチウムに若干高い傾向があるが全体的に低く, とくに, カルシウム, ニッケル, モリブデン, 銅摂取量は約2分の1であった。
  • 鈴木 和春, 上原 万里子, 遠藤 幸江, 五島 孜郎
    1986 年 39 巻 3 号 p. 217-219
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    被験動物として初体重75g前後のWistar系雄ラット24匹を用い, 乳糖 (LO), ラクツロース (LU), ソルビトール (SO), 対照 (C) の4群に分け, 46日間飼育し, 飼育終了前5日間にわたり出納試験を行ない, Fe, Zn, Cu吸収におよぼす乳糖, ラクツロースおよびソルビトールの影響について比較検討を行なった。その結果, LU群の吸収率および体内保留率はLO群に比しZn, Cuで高値を示し, Feは保留率で高値を示した。さらに, CuはSO群の体内保留率がC群に比較して高値を示した。
    ラクツロース投与は, Fe, Zn, Cuに対してよい利用度を示すことが示唆された。
  • 太郎良 裕子, 鳴坂 美和子
    1986 年 39 巻 3 号 p. 220-230
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    鈴木らにより提案された個別性指標を用いて, 1962年から1981年の20年間 (3,000献立表) にわたる岡山市学校給食共同献立表における個々の献立の個別性を検討した。
    その結果, 求められた個別性指標値を用いることにより, 20年間 (3,000献立表) の食物消費の様相について年別変化を数量的に把握する可能性を示唆した。稿を草するに当たり, ご助言をいただきました本学家政学部高橋正侑教授に感謝いたします。
  • 細谷 圭助, 森 真弓
    1986 年 39 巻 3 号 p. 231-233
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    食パン, 菓子パンおよび洋菓子を中心とし, その他, 牛乳, チーズ, 味噌および醤油中のプロピオン酸塩またはプロピオン酸を定量した。まず定量方法について検討した結果, 水蒸気蒸留量は250mlのとき, ガスクロマトグラフィによる回収率は平均99.26%であった。
    食パン中のプロピオン酸含有量は, 0.0025~0.0045g/kg, 菓子パンでは0.0042~0.0485g/kg, 洋菓子では0.0021~0.6525g/kgであった。製造会社によっても含有量が異なり, 菓子パンではA社製のものは他社製に比べ約10倍多かった。季節によっても含有量は異なりパン類および洋菓子において, 冬期に少なく, 夏期に多かった。
    パン以外の日常食品として, 牛乳ではプロピオン酸含有量は0.0005~0.0009g/kgであり, チーズでは0.0154~0.0261g/kgと多く, 味噌では0.0020~0.0050g/kg, 醤油では0.0027~0.0060g/kgであった。
  • 鯨 幸夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 234-237
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
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