日本栄養・食糧学会誌
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48 巻, 2 号
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  • 渡邊 令子, 山田 雅子
    1995 年 48 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    生体情報の一つであるHRを用いてエネルギー消費量を予測する24h-HRR法の基準値について, 成人男女 (20~69歳) を被験者として, 検討を行い次のような結果が得られた。
    1) 対象被験者の睡眠時間は, 年齢, 性別, 職業を問わず, 平均値で450±51分であり, 1日の約30%を占めている。睡眠時間帯は, 24時間HRのトレンドグラフ上で判別がきわめて明確なうえ, 被験者の睡眠時HRの日変動は, 3.5±1.7beats/minと小さく, 24h-HRR法の基準値として利点が大きいことが明らかにされた。
    2) 24h-HRR法によって, 1日の総エネルギー消費量を予測する場合, 基準値としてSHR-II (睡眠時約6時間のHRの平均値に1.2を乗じた値) を用いると, VO2/HR法によって得られたエネルギー消費量推定値に近似した値 (誤差, 1.9±5.6%) となり, 非常に高い正相関 (r=0.958, p<0.001) が得られた。
    以上の結果より, 24h-HRR法における基準値として, SHR-IIを適用することは, 簡便で, かつ本法によるエネルギー消費量予測値の精度をより高めることになり, 基準値として最も妥当性が高いと判断された。
  • 楊 志博, 諏訪 芳秀, 平井 孝一, 豊田 佳子, 浅見 純生, 田中 隆治
    1995 年 48 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    We examined chronological changes in muscle relaxation in ICR mice after p. o. administration of ethanol. The effect of ethanol was found to be dose-dependent. We also carried out an investigation to determine whether or not the muscle relaxation induced in mice by ethanol and acetaldehyde-induced acute toxicity could be suppressed by sesamin. When sesamin (500mg/kg/day) was administered p. o. for 7 or 14 consecutive days, the muscle relaxation induced by ethanol (1.5g/kg, p. o.) was markedly suppressed. Sesamin pretreatment also markedly prevented acetaldehyde-induced acute toxicity (LD50) in mice, but the ethanol clearance in blood did not show any significant changes. We have not yet determined the mechanism by which sesamin inhibits ethanol-induced muscle relaxation, although the effects seen unlikely to be due to enhanced clearance of ethanol alone.
  • 大塚 正道, 久保 孝夫
    1995 年 48 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    湿熱処理 (121℃, 15分) を施した干しシイタケとフラクトオリゴ糖の7: 3からなる混合物 (SK-204) が高血圧ラットに及ぼす作用について検討し, つぎの結果を得た。
    1) SHRに10%SK-204混合飼料を与えた群では, 14日以降に血圧上昇抑制および50日後における心臓の体重当り相対重量が対照群に対して有意に減少した。また, 脳および腎臓の病理組織学検査結果, 脳について基質的な変化は減弱する傾向を示した。
    2) Dahl Sを2群に分け, 1群は対照群として8%食塩混合飼料と, 他の1群にはこれに10%の割合でSK-204を混合した飼料で飼育した。28日後の収縮期血圧に有意の差が認められた。31日以降, 対照群に体重, 血圧の低下, 自発運動の抑制, 運動障害, 前後肢の麻痺発生等がおこり, 脳内出血がみられた。SK-204を併食すると, これらの症状がみられず, 心臓重量も対照群に比べ有意に減少した。また, 腎臓の病理組織学的検査による基質的障害も減弱する傾向を示した。
    以上, SK-204は血圧上昇抑制作用に加え, 心肥大および脳出血の発症を抑制する作用をもつことが示唆された。
  • 宮澤 陽夫, 矢口 由香里, 藤本 健四郎, 西垣 壽人
    1995 年 48 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    タバコ煙暴露で増加する血漿化学発光の性質を, ラットとマウスを用いて調べた。ラットにタバコ煙を3分間暴露すると, 20分後には血漿化学発光が暴露前の約3倍に著増し, その後減衰して, 暴露80分後には暴露前の値にまで低下した。このタバコ煙依存の血漿化学発光は, 500~580nmに極大発光を示し, タバコ中のタール含量とは相関しなかった。α-カロチンおよびβ-カロチンの経口投与はこの血漿化学発光に影響を与えなかったが, スルフヒドリル化合物であるシステインやグルタチオンを血漿に添加すると発光は抑制された。
  • 宮澤 陽夫, 木村 晃子, 藤本 健四郎, 西垣 壽人
    1995 年 48 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ラットの赤血球 (RBC) をPercoll液を用いた密度勾配遠心法で低密度赤血球 (LD-RBC) と高密度赤血球 (HD-RBC) に分画し, そのリン脂質ハイドロパーオキサイド含量と食餌油脂の影響を調べた。その結果, ピルピン酸キナーゼ活性はHD-RBCでLD-RBCより低い傾向があり, 糖化ヘモグロビン含量は明らかにHD-RBCでLD-RBCより高く, HD-RBCは老化赤血球を多く含む画分と判断された。市販固形飼料 (F-2) 食, 大豆油食, 魚油食ラットともにLD-RBCとHD-RBCの過酸化リン脂質量に大きな差はなかった。しかし, 魚油食ラットの赤血球の過酸化リン脂質含量は大豆油食ラットより有意に高い値を示した。すなわち, 今回の実験から, ラットの赤血球において過酸化リン脂質の分布量はその密度 (老化度) に大きくは依存せず, むしろ食餌油脂の影響が大きく, とくに魚油の摂取は有意に赤血球の過酸化脂質を増やすことが明らかにされた。
  • 渡邊 智子, 土橋 昇, 高居 百合子
    1995 年 48 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    低濃度ラクツロース (1%) の幼ラットの生長および腸内細菌叢に及ぼす影響を明らかにする目的で実験を行った。
    ラクツロース1%含有飼料投与により,
    1) 成長は順調な経緯を示したが, 対照群に比べ若干体重増加量が低く, 後腹壁脂肪も減少した。その要因は糖質からの脂肪合成量の減少によると推察される。
    2) 45日目の飼料効率, タンパク質効率およびエネルギー効率は低下し, 窒素の消化吸収率および窒素利用率も低下した。
    3) 盲腸の増大が認められ, 盲腸内のpHは低下し, ビタミンB1およびB2量は増加した。盲腸内のBifidobacteriumも増加した。
    以上のことから, ラクツロースは低濃度 (1%) 投与においても, ラットの脂肪蓄積防止作用, 腸内の有用菌の増加に効果があることがわかった。
  • 永田 純一, 屋 宏典, 戸田 隆義, 知念 功, 大関 正直
    1995 年 48 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    エタノールおよび酵素処理された大豆由来高食物繊維含有素材の物理的特性とコレステロール負荷条件下でのラット脂質濃度, 糞中ステロイド排泄に及ぼす影響を市販の大豆由来高食物繊維含有素材と比較検討を行い, 以下の結果を得た。
    1) 電子顕微鏡による観察においてSBF粒子は, 多孔質構造を有していた。また物理的特性値である保水性, 膨潤性に関して, SBFは, セルロースおよびCADと比較していずれも有意に高い値を示した。
    2) 飼料摂取量ならびに体重増加量および肝臓重量に有意な差は認められなかった。
    3) 血清脂質濃度に関して, SBF摂食群は, 摂取後1週目にセルロース群およびCAD群に対しコレステロール濃度の上昇抑制効果が有意に認められた。この結果は, 再現性よく確認された。一方, トリグリセリド濃度は, セルロース群に対し低い値で推移するが再現性よく有意な低下を示さなかった。
    4) 肝臓脂質濃度は, SBF摂食群のトリグリセリド濃度に有意な低下を認めた。
    5) 糞中ステロールの排泄量は, 各群間で有意な差を認めなかった。
    以上の結果より, SBFのコレステロール濃度の上昇抑制効果はその物理的特性によるものと考えられ, 生理機能を有する優れた食品添加素材であると思われる。
  • 松尾 眞砂子
    1995 年 48 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    おからテンペ (OT) を新しい食品素材として, 優れたレオロジー的特性を活かした用途の開発を目的とし, OTの保水性, 吸油性, 抗酸化性に基づく新たな効用を検索するためミンチ状にしたOTをハンバーグに, 粉末状にしたOTをココア風味のカップケーキに添加し, OTがそれらのレオロジーと官能に及ぼす影響を調べた。OTで合挽ミンチの20%を置換してハンバーグを調製するとドリップや焼き縮みが少なく, 4℃に保存しても生地が硬化しなかった。また味, 香り, 硬さとなめらかさに関する官能検査を行うと総合評点は無添加品の評点と大差がなかった。したがって, ミンチ状OTはハンバーグ素材として合挽ミンチの20%まで置換でき, しかも焼き縮みが少なく, 焙焼後低温に保存しても硬くならない効果を期待できた。
    OTで小麦粉の10%を置換して調製したココア風味カップケーキは4℃に保存しても生地の硬化やデンプンの老化が防止された。また, 40℃に保存すると油脂の酸化が抑制された。官能検査による総合評点はOT添加品と無添加品の間に差がなかった。したがって, 粉末OTはココア風味カップケーキ素材として小麦粉の10%まで置換でき, 貯蔵による生地の硬化, デンプンの老化, 油脂の酸化を防止することを期待できた。これらの結果は, OTは食品の加工・保存性を高める添加剤としても優れていることを示していた。
  • 後藤 冨士雄, 小野寺 洋子, 浜田 義和, 松浦 由美, 鈴木 博久
    1995 年 48 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    秤量法によって計算した1日タンパク質摂取量の適否を, 全尿によらず1回排尿中の尿素/クレアチニン比 (U/C比と略す) で判定する方法を検討した。
    1) 1日の全尿を代理する1回排尿試料は, 午前9時以降の最初の尿 (午前1回排尿) のU/C比が全尿のそれと高い相関を示した。
    2) 午前1回排尿のU/C比は前日の標準体重当りおよび実体重当り1日タンパク質摂取量と高い有意の相関が認められた。
    3) 20歳までの午前1回排尿のU/C比は, 年齢, 身長, 体重の対数値と片対数の回帰直線となったので, 未成年者では年齢, 体格の近いグループごとに測定したU/C比の平均値から計算した許容限界 (M±2σ) を逸脱する場合は, タンパク質摂取量の過不足者である可能性が高い。ただし, 成人では年齢のグループ分けは不要である。
    これらの結果から, 午前1回排尿のU/C比測定によって, 個人の前日のタンパク質摂取量の過不足を判定する可能性が示唆された。
  • 吉田 宗弘, 安藤 達彦, 舘 博
    1995 年 48 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Selenium contents were determined fluorometrically in rice imported from the USA, China, Thailand and Australia, and domestic soybeans and soybeans imported from the USA, China, Brazil, Argentina and Canada. Except for rice imported from Australia, most imported rice contained less than 50ng/g selenium. Several imported soybean specimens contained more than 200ng/g selenium, whereas most of the domestic soybeans examined contained less than 100ng/g selenium. However, the IOM soybeans imported from Indiana, Ohio and Michigan in the USA, which is the major source of soybeans for food processing in Japan, showed a low selenium value similar to that of domestic soybeans; most of the soybeans with a high selenium content were used for oil production. These findings indicate that there is no difference in selenium content between imported and domestic rice, and suggest that most soybeans used for food processing in Japan contain less than 100ng/g selenium, irrespective of whether they are of domestic or foreign origin.
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