日本栄養・食糧学会誌
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48 巻, 6 号
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  • 川崎 晃一
    1995 年 48 巻 6 号 p. 419-427
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Clinical, epidemiological and chronobiological studies on the relationship between blood pressure and mineral intake have been on-going for the past thirty years. They can be divided into five groups. 1) Clinical studies on salt sensitivity in patients with idiopathic hypertension. 2) Chronobiological studies of blood pressure (BP) fluctuation and urinary electrolyte excretion in relation to BP regulation. These include the Fukuoka-Minnesota collaborative chronoepidemiological study, studies on the circadian rhythns of urinary electrolyte excretion during total parenteral nutrition, and the reapportionment of salt intake in relation to circadian blood pressure patterns. 3) The estimation of the 24-h urinary sodium and potassium excretion from spot-urine specimens. 4) Comparative epidemiological studies on the genesis of hypertension in Nepal. 5) The effects of high-potassium, high-magnesium or high-fiber intake on blood pressure and the metabolism of lipids and carbo-hydrates in man. A larger proportion of te population are expected to suffer from either mild or borderline hypertension in the future. Non-pharmacological treatment of this condition by regulating the dietary intake of minerals such as sodium, potassium, magnesium and calcium, is now considered to be of increasing importance for the treatment of this condition.
  • 名取 靖郎
    1995 年 48 巻 6 号 p. 429-439
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Regulatory mechanisms of hepatic protein metabolism and gene expression mediated by amino acids and vitamin B6 were investigated. 1) Rats were nourished by total parenteral nutrition, and the effects of variations in the amino acid supply on the rates of hepatic protein synthesis and degradation were investigated. Amino acids decreased the rate of degradation whilst the rate of synthesis was relatively unaffected. Protein degradation, therefore, predominates the regulation of liver protein mass. 2) Studies on cystathionase and aspartate aminotransferase (AspAT) in the liver of vitamin B6-deficient rats showed that their rates of synthesis and degradation were both increased. The enhanced degradation was caused by different susceptibilities of apo- and holo-enzymes to lysosomal proteolysis. 3) Pyridoxal phosphate (PLP) was found to modulate AspAT gene expression by preventing the glucocorticoid receptor from binding to glucocorticoid-responsive elements. PLP also modulated albumin gene expression by inactivat ng the DNA-binding activity of tissue-specific transcriptional factors such as HNF-1 and C/EBP. 4) Amino acid vinfusion increased the albumin mRNA level and decreased the PLP concentration. The decrease in PLP concentration would prevent the inactivation of tissue-specific transcription factors and enhance albumin gene expression. The present study sheds new light on the physiological role of PLP as a mediator of gene regulation in protein/amino acid nutrition.
  • 米本 千春, 香田 祐美子, 上中居 和男, 中野 長久
    1995 年 48 巻 6 号 p. 441-449
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    大豆オリゴ糖を発酵原料とした食酢のラット脂質代謝に及ぼす影響について, コレステロール・胆汁酸無添加飼料に粉末化した大豆オリゴ糖酢 (SOV) を添加して検討し, 以下の結果を得た。
    1) SOV 15%添加飼料中の含有オリゴ糖成分は約3.3%で, そのうち約64%がマンニノトリオースであった。
    2) SOV摂取により血清総コレステロールが低下傾向を示し, 血清中のVLDL-+LDL-Chol (=T-Chol-HDL-Chol) ならびにトリアシルグリセロール値は有意に低値であった。
    3) SOV摂取により肝臓コレステロール含量は有意な低下を示したが, 糞中総胆汁酸量には影響が認められなかった。
    4) SOV摂取により盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸量は有意に高値を示した。
    5) 肝臓コレステロール含量と5週目の血清中のVLDL-+LDL-Chol値には有意な相関が得られたが, 盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸量と肝臓コレステロール含量ならびに血清中のVLDL-+LDL-Chol値に対する相関性は傾向のみで有意な差は認められなかった。
  • 李 淳宰, 崔 元慶, 河 台烈
    1995 年 48 巻 6 号 p. 451-457
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    本実験では, ラットに食餌中ビタミンEを0mg/kg diet (STZ-0 E群), 40mg/kg diet (STZ-40 E), 400mg/kg diet (STZ-400 E) 添加し26日間飼育した後, ストレプトゾトシンで糖尿病を誘発させ, 4日後に解剖し, 生体内抗酸化防御機構に及ぼすビタミンEの影響を調べた。
    その結果, 体重増加はSTZ投与前にはSTZ-0 E群のみコントロールに比べ低い値を示したがSTZ投与後にはすべてのSTZ投与群で著しい体重減少が見られた。糖尿病群での血糖値はコントロールに比べ約3倍高く, 糖尿病群の中ではビタミンE投与量の差による影響は見られなかった。血清GOT, GPT活性はSTZ-0 E群およびSTZ-40 E群ではコントロールに比べ増加したがSTZ-400 E群では変化がなかった。肝組織中のXOD活性, SOD活性も血清GOT活性と類似した傾向を示した。肝臓中のGSH-Px活性はSTZ-0E群, STZ-40 E群ではコントロールに比べ著しく減少したがSTZ-400 E群では逆に上昇した。GST活性もGSH-Pxと同様の傾向であった。肝臓中のビタミンE含量はSTZ-0 E, STZ-40 E群ではコントロールに比べ50%, 36%それぞれ大きく低下したがSTZ-400 E群ではコントロールと差がなかった。肝臓中グルタチオン (GSH) 含量はすべての糖尿病群においてコントロール群に比べ減少したが, 酸化型グルタチオン (GSSG) 量は逆に増加した。しかし, ビタミンE大量投与群ではGSH/GSSG比が増加した。脂質過酸化物価 (TBARS) はSTZ-0 E群, STZ-40 E群ではコントロールに比べ有意に高い値を示したがSTZ-400 E群では有意差がなかった。
  • 西村 直道, 桐山 修八
    1995 年 48 巻 6 号 p. 459-467
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    本研究はピートの食物繊維 (BF) の盲腸内発酵および腸内細菌によるBFの発酵産物が, BFの血漿コレステロール低下作用に関与しているかどうかを調べることを目的とし, 異なる種類の抗生物質をラットに投与することにより, 盲腸内細菌叢を変えたとき, 血漿コレステロール濃度がどのように変化するかを検討した。さらに盲腸内に直接試験物質を投与できるように消化管手術を施したラットを用い, BF摂取ラットの盲腸内容物の各画分を投与して血漿コレステロール濃度に及ぼす影響を検討した。コレステロール無添加食時のBFによる血漿コレステロール低下作用について下記のことが示唆された。
    1) 飼料にネオマイシン硫酸塩を添加した場合にはBFによる血漿コレステロール低下作用が認められたが, ストレプトマイシン硫酸塩またはペニシリンGカリウム塩を添加した場合にはこれが認められなかった。
    2) 盲腸内短鎖脂肪酸 (SCFA) 量と血漿コレステロール低下作用の間には相関性が認められなかった。
    3) BFの血漿コレステロール低下作用と糞中の胆汁酸量との間には相関性がなかった。
    4) BF摂取ラットの盲腸内容物を水溶性画分, 脂溶性画分, 残渣に分画して, FF食摂取ラットの盲腸内に投与したが, BFの血漿コレステロール低下効果は生じなかった。
    以上のことからは, 従来推定されてきたSCFAの関与や糞中胆汁酸排泄の関与によってBF作用を説明することができなかった。しかし, 盲腸内への投与方法や投与量などまだ検討すべき問題もあり, BFの発酵産物の関与の可能性はまだ完全に否定できない。
  • 林 直樹, 中村 強, 吉原 大二, 柳井 稔, 竹下 保義
    1995 年 48 巻 6 号 p. 469-476
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    実験Iでは, 消化管手術後の下痢に対する大豆タンパク質の抑制効果を検討する目的で, 小腸切除ラットの十二指腸内に1kcal/1mlに調製した大豆タンパク質栄養剤 (SP栄養剤), カゼイン栄養剤 (CA栄養剤) および大豆タンパク質とカゼインが1: 2の比率で配合されている混合タンパク栄養剤 (MX栄養剤) を下痢が誘発される投与条件下で5日間飼育し, 下痢の発生率を検討した。
    投与3日目の下痢発生率はSP群で6%, またMX群は29%であり, 対照のCA群の53%に比較して顕著な低値を示し, SP群およびMX群で下痢抑制効果が認められた。この抑制効果は5日目においても示された。
    実験IIでは, 大豆タンパク質をパンクレアチンで消化した後得られた高分子画分 (HF画分) をCA栄養剤に添加し下痢に及ぼす影響をCA栄養剤およびSP栄養剤と対比し, HF画分が大豆タンパク質の下痢抑制効果の発現に関与する可能性について検討を行った。
    投与3日目のHF群の下痢発生率は24%とCA群の78%に比較して明らかな低値を示し, 下痢抑制効果が認められた。5日目においてもHF群はCA群に比較して顕著な低値を示した。一方, HF群とSP群は, 投与期間を通じて下痢発生率に有意差は認められず, 抑制効果は同等であった。
    以上, 大豆タンパク質はカゼインに比較して小腸切除ラットに誘発させた下痢を明らかに抑制し, この効果はカゼイン配合量の3分の1を大豆タンパク質に置換しても発現した。さらに, この効果の作用機序の一つとして, HF画分の関与が示唆された。
  • 松井 美預子, 中井 理江, 豊沢 功, 福田 満
    1995 年 48 巻 6 号 p. 477-483
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    種々の豆種子を用いて, アリューロン層組織の構造とアリューロン層組織に含まれるGRP (高グリシンタンパク質) の含有量を調べ, 次に示す結果を得た。
    1) ダイズ (Glycine max品種エンレイ), 黒ダイズ (Glycine max, 品種タンバグロ), ツルマメ (Glycine soja) のアリューロン層細胞壁は, 赤インゲンマメ (Phaseolus vulgaris, 品種タイショウキントキ), 斑入インゲンマメ (Phaseolus vulgaris, 品種トラマメ) のものよりも厚みが増していた。
    2) ダイズのアリューロン層細胞壁に特異的なGRPは主としてペクチン画分に存在した。
    3) 3種のダイズのアリューロン層の熱水可溶性画分のGRP含有量は2種のインゲンマメのものより高かった。
    4) ツルマメや黒ダイズから抽出したGRPの推定分子サイズはそれぞれダイズと同じ約30kDaであった。以上の結果から, ダイズ属植物のアリューロン層のGRPはアリューロン層の細胞壁構造強化に何らかの役割を担っていると推察した。
  • 井上 清, 向山 美雄, 岡 博, 三沢 宏
    1995 年 48 巻 6 号 p. 485-489
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    非薬物療法で経過観察可能と判断された軽症ないし境界域一次性高血圧患者23名を対象にした, クロレラの投与試験を実施した。患者のうちクロレラの摂取を理解し積極的に協力してくれた13名に, 他養的に純粋培養したクロレラを毎日1.5g, 6カ月間投与した (クロレラ群)。他の10名は生活指導のみによる経過観察とした (対照群)。両群の高血圧症関連の諸臨床症候の推移を観察し, 以下の結果を得た。
    1) クロレラ群は, 摂取3カ月後から収縮期血圧および拡張期血圧が有意に低下した。試験前値に比べ6カ月後の血圧下降度は, 収縮期血圧が14.1±1.9mmHg, 拡張期血圧が6.3±1.8mmHgであった。「降圧薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に示された降圧度判定基準によると, クロレラ群13例中3例が「下降」, 5例が「下降傾向」, 5例が「不変」であった。一方, 対照群では, 試験期間中血圧の有意な変化は見られなかった。
    2) クロレラ摂取の前後に行ったアンケート調査から, 高血圧症関連の愁訴の減少と全体的な体調の改善が見られた。
    3) クロレラの摂取による副作用は, アンケート調査, 臨床検査から認められなかった。
    以上の結果から, クロレラの摂取は軽症の高血圧症の改善に有効であることが示唆された。
  • 田中 珠美, 東 明正, 松田 一郎, 鈴木 公, 浅川 牧夫
    1995 年 48 巻 6 号 p. 490-493
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    現在市販されている22種類の経腸栄養剤のセレン含量を蛍光光度法で測定した. セレン含量はおのおのの経腸栄養剤により, 0.04~5.74μg/100kcalと大きな差異を認めた。卵白を加えた経腸栄養剤が牛乳タンパクのものよりも比較的セレン含量が高く, また, アミノ酸に分解した成分栄養剤は低値であった。これらの経腸栄養剤のみで必要エネルギーを得るとすると3.2~146.4μg/日となり, 米国における推奨栄養所要量 (RDA) 0.87μg/kg/日の約50%しかセレンを摂取できない経腸栄養剤が大部分で, なかにはRDAの1割以下しか摂取できないものが見られた。経腸栄養剤によるセレン欠乏症を予防するために, セレン含量の低値の経腸栄養剤に対してセレンの添加が考慮されるべきである。
  • 藤沢 和恵, 吉野 昌孝
    1995 年 48 巻 6 号 p. 494-497
    発行日: 1995/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    パン生地および発酵前後のイノシン酸, グルタミン酸を定量し, 両者の増減の機構とパンの旨味との関連を考察した。
    1) イノシン酸, グルタミン酸とも, パン生地として用いた小麦粉の中で強力粉に最も大量に含まれ, ついで中力粉, 薄力粉の順であった。
    2) 発酵によりパン中のイノシン酸は約2倍に増加する一方, グルタミン酸は1/2以下に減少した。
    3) パンの旨味物質としてはイノシン酸が発酵により増加しており, その蓄積はパン酵母のAMPデアミナーゼの高い活性とイノシン酸分解酵素 (5′-ヌクレオチダーゼ) の低い活性に起因すると結論された。
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