日本栄養・食糧学会誌
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50 巻, 2 号
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  • 田中 紀子, 林 國興, 堀 清記
    1997 年 50 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    離乳直後の雌雄ラットに自発運動を長期間行わせ, 運動が引き起こす筋肥大に雌雄の差があるのか, タンパク質代謝と形態学の両面より調べた。得られた結果は以下のとおりである。
    1) 7週間の雌の運動量は平均約10km/dayであり, 雄の約4km/dayの2倍以上にも達した。雄では自発運動による体重増加の抑制が起こったが, 雌では運動による体重の変化はなかった。
    2) 長期間の自発運動によって雌雄ともに骨格筋重量は増加し, 筋肥大が起こった。運動量と筋重量との間には有意な正の相関関係があり, 筋重量は運動量が増加するにつれて増加した。また同じ運動量であれば雄の筋重量は雌のそれより大きかった。
    3) 筋腹中央部に現れた筋線維の形態には雌雄の差があり, 雄の線維は雌より面積は大きく, 線維長は長かった。しかし, 総線維数には雌雄の差はなかった。自発運動により線維長は伸長し, 線維数は増加した。その増加率は運動量の多い雌の方が大きかった。
    4) 筋タンパク質分解の間接的指標である3-methylhistidineの尿中排泄量は雄では変化しなかったが, 雌では運動により有意に減少した。
    5) 骨格筋DNA, RNA量は雌雄ともに運動により有意に増加した。タンパク質当りのRNAが増加することから, 筋タンパク質の合成は雌雄ともに促進すると考えられた。
    以上の結果からラットに自発運動を長期間行わせると雌雄ともに筋腹中央部では筋線維の長さが伸長し, 綿維数が増加することによって筋肥大が起こることが明らかにされた。筋肥大にいたる代謝経過としては雌雄ともにタンパク質合成が促進することによることが推測された。
  • 大條 英之, 則井 孝文, 鈴木 博雄
    1997 年 50 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ラットの亜鉛代謝に及ぼす食餌脂質量および脂肪酸含量の影響を組織亜鉛量の変動を指標として検討し, 以下に示す内容が明らかになった。
    1) 亜鉛欠乏および亜鉛適量条件において, 5%コーン油食および5%牛脂食を摂取したラットの成長, 血清APase活性, 血清, 腎臓, 下部小腸および大腿骨亜鉛量は亜鉛欠乏により低下したが食餌脂質間の違いは認められなかった。
    2) 20%コーン油食および20%牛脂食摂取ラットの組織亜鉛量に及ぼす影響を10%または20%の食餌タンパク質, 適量以下 (10ppm) の食餌亜鉛の条件を用いて検討した。血清APase活性, 血清, 大腿骨および下部小腸亜鉛含量は20%コーン油食摂取ラットに比べて20%牛脂食摂取ラットの方が高い値を示し, 大腿骨亜鉛量の差は低タンパク質食摂取条件においてより増大した。
    3) 20%コーン油食群および5%牛脂食群に比べて20%牛脂食群の体内亜鉛充足度は高く, 高牛脂食摂取ラットの亜鉛要求量の低下が示唆された。
  • 小川 博, 堺 通子, 高寺 恒慈, 目黒 忠道
    1997 年 50 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    田七人参粉末投与が通常食飼育SHRSPの血圧ならびに脂質代謝に及ぼす影響について検討を行った。
    1) SHRSPの血圧上昇は投与5週間目より7週間目にわたって抑制が観察され, 6週間目で有意な上昇抑制が認められた。
    2) 血清脂質代謝においては, 血清脂質含量への影響は認められなかったが, 血清apoE含量の有意な上昇が観察された。この上昇はHDLの亜分画の一つであるapoEに富むHDL (HDL1) の上昇に基づくものであった。さらに動脈硬化指数の一つであるapoB/apoA-Iの有意な低値が認められた。以上のことから田七人参粉末投与による血清脂質代謝改善作用が示唆された。
    3) 肝臓脂質代謝においては, 肝臓脂質含量ならびにマイクロソーム分画のコレステロール代謝関連酵素活性, いずれも有意な変動は認められず, 田七人参粉末投与が肝臓脂質代謝に及ぼす影響は小さいものと考えられる。
  • 讃井 和子, 世利 謙二, 井上 修二
    1997 年 50 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    小腸スクラーゼ活性を選択的に阻害するL-アラビノースを14C-スクロースとともにラットに投与し, 6時間までの呼気14CO2排出量および消化管内14C-残存量を測定した。その結果,
    1) 14C-スクロース摂取後6時間までの呼気14CO2排出量は, 同時に投与したL-アラビノースによって有意に抑制された。L-アラビノースの作用は用量依存的であり, 50mg/kgおよび250mg/kg投与群の抑制率はそれぞれ31.7%, 45.6%であった。
    2) ラットにおけるスクロース負荷後の血糖上昇も同時に投与したL-アラビノースによって有意に抑制された。
    3) 呼気14CO2排出量および血糖上昇に対して, L-アラビノース50mg/kgは作用比較物質アカルボース1.5mg/kgと同等の抑制作用を示した。
    4) L-アラビノース投与群では14C-スクロース摂取から6時間後において盲腸および結腸部に多量の残存14Cが認められた。
    以上の結果から, L-アラビノースはスクロースとともに摂取した場合, スクロースの消化吸収を抑制し, そのエネルギー利用を低下させると結論された。
  • 徳江 千代子, 片岡 栄子
    1997 年 50 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    乳腐製造工程において最も物性や風味形成に関与すると考えられる脂質成分の変化について明らかにした。
    1) 乳腐熟成中の脂質の化学的特性は, IVは120~131, SVは199前後であまり変化なく両方とも大豆油の範囲内であった。AV, POVは熟成中に増加したが乳腐では低下した。
    2) 乳腐熟成中の脂質組成は, NLが90.4~92.9%, GLが4.1~5.3%およびPLが3.0~4.3%であった。
    3) 乳腐熟成中のNLについては90%以上含まれていたTGがカビ豆腐で1/2, 乳腐で1/4に減少した。PLではPC, PE, PIで約70%を占め, これらにより中性脂質-タンパク質の乳化・分散が起こり, 乳腐独特のチーズ様物性と食感を付与していると考えられる。
    4) 乳腐熟成中のTL, NL, GLおよびPLの主要な構成脂肪酸は18: 2, 18: 1, 16: 0であり, GLおよびPLでは熟成の進行により不飽和脂肪酸が減少し飽和酸が増加した。
    5) 不ケン化物成分として乳腐にはγ-, δ-トコフェロールなどの抗酸化性をもつものが多く含まれており, さらに血中コレステロールを低下させる大豆中のβ-シトステロールも乳腐に多量に含まれていることなどから栄養学的にも意義ある食品であることが認められた。
  • 坂井 堅太郎, 小川 路恵, 高嶋 治子, 水沼 俊美, 真鍋 祐之
    1997 年 50 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    加熱殺菌方法の異なる3種類の市販牛乳 (低温殺菌, 高温短時間殺菌および超高温殺菌牛乳) に含まれるタンパク質成分のペプシンに対する消化性を, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と, 牛カゼイン, 牛α-ラクトアルブミンおよび牛β-ラクトグロブリンに対する特異抗体を用いたウエスタンブロット法により検討した。カゼインは牛乳の加熱殺菌方法の違いに拘らず, ペプシンにより速やかに分解された。低温殺菌および高温短時間殺菌牛乳中のα-ラクトアルブミンはペプシン消化に対して抵抗性が認められた。超高温殺菌牛乳では, α-ラクトアルブミンのペプシン消化に対する抵抗性はやや減少したものの, 十分に維持されていた。低温殺菌と高温短時間殺菌牛乳中のβ-ラクトグロブリンは, α-ラクトアルブミンと同様に, ペプシン消化に対して抵抗性を示したが, 超高温殺菌牛乳では, ペプシン消化に対する抵抗性はほとんど消失し, カゼインでみられるペプシン消化のパターンに類似していた。ラットに低温殺菌または超高温殺菌牛乳を強制的に経口投与し, 胃内容物中のβ-ラクトグロブリンの消化を調べたところ, 超高温殺菌牛乳投与ラットの消化度は低温殺菌牛乳投与ラットに比べて明らかに高かった。これらの結果から, 市販牛乳中の各タンパク質成分のペプシンに対する消化パターンは異なることが示された。また, 超高温殺菌処理によって, β-ラクトグロブリンのペプシン消化に対する抵抗性が著しく消失することから, 超高温殺菌牛乳はβ-ラクトグロブリンのアレルゲン性が緩和された牛乳としての有用性が示唆された。
  • 吉田 恵子, 四十九院 成子, 福場 博保, 田所 忠弘, 前川 昭男
    1997 年 50 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ブラックマッペの発芽にともなう各部位のタンパク質の変化を, ゲル濾過法を用い検討した。同時にプロテアーゼインヒビター活性およびプロテアーゼ活性を調べ, タンパク質の変化と酵素活性の変動との関連性をも検討した。さらに7日発芽体の部位別の, 遊離アミノ酸組成を調べたところ以下のことが明らかとなった。
    1) 発芽にともない, 子葉のタンパク質量は減少したが, 胚軸では, 発芽とともにわずかではあるが増加した。
    2) 未発芽豆の子葉と胚芽のタンパク質組成を比較したところ, 三つのピークが認められ, 子葉においてその比率は, 分子量の大きいものから順に, 7: 2: 1, 胚芽では4: 5: 1であった。また貯蔵タンパク質と思われるピーク1 (分子量の最も大きいもの) について, ディスク電気泳動でタンパク質組成を比較したところ, 同じパターンを示した。
    3) 発芽にともない, 子葉では低分子量のピークが増加したが, 発芽7日目でも貯蔵タンパク質は残存していた。胚軸, 幼根では低分子量のものが大部分を占めていたが, 幼芽においては高分子量のタンパク質のピークも認められた。
    4) 低分子量画分をさらに分画すると, 発芽にともないピークは, より低分子量域に移行していた。
    5) プロテアーゼインヒビターは子葉, 胚芽のみに存在した。また子葉ではAPase, BAPAase, LNAase, CPaseとも発芽初期に活性が増大し, 胚軸では発芽後期にAPase, CPase, LNAaseの活性が増加した。
    6) ブラックマッペの7日発芽体の遊離アミノ酸は, 胚軸, 幼根に多く認められ, アスパラギン酸, バリン, イソロイシン, アルギニンが多かった。
  • 灘本 知憲, 川村 正純, 浦部 貴美子, 安本 教傳
    1997 年 50 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) ブタ小腸を20℃に保存すると, 半日から1日後に特異的な悪臭が感じられた。このとき一般細菌, 酵母, 嫌気性菌, 乳酸菌, 大腸菌群のいずれもが増殖指数期にあった。主要な揮発性成分であるMMは半日後には, またエタノールは1日後以降に著しい発生量を示した。
    2) 新鮮ブタ小腸を高圧処理すると生菌数は激減し, その後の20℃下での保存において少なくとも1日間は新鮮な状態を維持できた。
    3) ブタ小腸を嫌気状態で保存しても特異的な悪臭は軽減されなかった。
    4) 抗菌効果の期待される数種の食品添加剤は, 高濃度では悪臭発生を抑制したが, 添加許可基準量では効果がなかった。
    5) 悪臭の主要成分MMの発生量と嫌気性菌群数の間に高い有意な相関が認められた。
    6) 高圧処理した新鮮ブタ小腸にブタ小腸由来の嫌気性菌群を接種することで悪臭の再現が認められた。
    以上の結果より, ブタ小腸保存中に発生する悪臭が嫌気性菌の急速な増殖に伴って起こることが明らかとなった。
  • 川村 正純, 灘本 知憲, 浦部 貴美子, 林 賢一, 安本 教傳
    1997 年 50 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ブタ小腸保存中の悪臭成分メチルメルカプタン (MM) を生産する嫌気性菌の分離を試みた。分離数が最も多く, かっMM産生能が最も高かったのはProteus mirabilisであった。メチオニン添加による増菌培養でMM産生量は著しく促進された。このとき分離されたMM産生菌はすべてP. mirabilisであった。これらの結果はブタ小腸保存中に発生する悪臭成分MMの主要生産菌がP. mirabilisであることを示している。
  • 高崎 智子, 斉藤 静男
    1997 年 50 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    腸内代謝産物生成に及ぼす乾燥酵母摂食の影響をラットを用いて検討した。
    4週齢Sprague-Dawley系雄性ラットに対照精製飼料および20%乾燥酵母飼料を3週間投与した。試験期間中の糞中有機酸 (ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, n-酪酸, iso-酪酸, n-吉草酸, iso-吉草酸, リンゴ酸, コハク酸, 乳酸) 含量, 飼料投与3週後の盲腸重量および盲腸内容物のpHをそれぞれ測定した。
    試験期間中の糞中有機酸含量は, 乾燥酵母飼料群が対照飼料群と比較して乳酸, 酢酸, プロピオン酸, η-酪酸, コハク酸などで有意に増加した。とくに, 乳酸, 酢酸の生成量が多かった。
    乾燥酵母は, 乳酸や酢酸を主発酵産物として生成する腸内細菌によって分解, 発酵されやすく, また酪酸やプロピオン酸を産生する菌種によってもよく利用されていることが示唆された。乾燥酵母飼料群の盲腸重量は対照飼料群と比較して約2倍ほど重かった。この盲腸内容物量の増加は, 乾燥酵母中の難消化性多糖によると考えられる。盲腸内容物のpHは乾燥酵母を摂食した群が対照飼料群と比べて低い値を示した。すなわち, 乾燥酵母飼料群は盲腸内において有機酸の生成量が増加したと推定できる。
    以上より, 乾燥酵母はBifidobacterium属増殖因子としての利用だけではなく, その他の有機酸産生菌の増殖促進因子としてなり得ることが確認できた。また, 糞中有機酸量の増加ならびに盲腸内容物のpHの低下から, 乾燥酵母摂食によって腸内環境改善作用および整腸作用などが確認された。
  • 古賀 民穂, 竹内 智代, 菅野 道廣
    1997 年 50 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    大学寮食および食堂の定食7日分21食を分析することにより, トランス酸の摂取量を推定した。1日分の食事のトランス酸量は0~1.29gで, 平均0.63gとたいへん低いものであった。t-18: 1が主なトランス酸でtt-, ct-およびtc-18: 2が検出されず反芻動物の肉類および乳製品からのトランス酸が主であると推定された。平成6年度の国民栄養調査, 食用加工油脂の統計年報および食用精製加工油脂の脂肪酸分析データから日本人1人1日当りのトランス酸摂取量を算出すると1.8gであった。
  • 山田 思郎, 武田 純
    1997 年 50 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Maturity-onset diabetes of the young (MODY) は常染色体優性遺伝を示す若年発症のインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) である。最近, ポジショナルクローニングの戦略によりMODY 3遺伝子が同定され, さらにこの情報をもとにMODY 1遺伝子も同定された。その結果, MODY 3とMODY 1は転写調節因子 (HNF-1αとHNF-4α) をコードする遺伝子の異常によって惹起されることが判明した。これらの知見は, インスリン合成や分泌において重要な遺伝子発現の障害や膵B細胞の形成不全を背景として糖尿病が発症する可能性を示唆する。
  • 沖谷 明紘
    1997 年 50 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
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