病院で無菌室に入室している患者に出されている滅菌された食事について, 栄養成分の残存率を調べた。滅菌前後の検定, 計算値と測定値の検定には符号順位和検定法を用いた。
1) タンパク質, 無機質は, 滅菌前後で変化はなく, よく一致した。
2) レチノール, β-カロテン, ビタミンE, ビタミンB
1, ビタミンCで, 滅菌前後に有意差が見られた。とくにビタミンCの損失は顕著で滅菌後の含量はわずかであった。
3) コレステロール, 脂質, 脂肪酸は, 滅菌前後に有意差は見られなかったが, 脂肪酸は, 残存率が低く, 散布図上で大きくばらついた。脂質の多い4献立は, 残存率がとくに低く, 他の献立と異なった。
栄養成分について滅菌後の残存率を求めたが, 病院で栄養士が把握する栄養量は, 食品成分表からの計算値である。しかし, 計算値と測定値の間には差があることが多く報告されている。今回, ビタミン類は滅菌後の残存率が低いことがわかったが, 計算値をもとにした場合, さらに低くなることが予想される。病院において滅菌食献立を作成する際には, ビタミン類, とくにビタミンCに注意が必要と思われる。
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