日本栄養・食糧学会誌
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51 巻, 5 号
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  • 大舘 順子, 田中 麻由子, 増山 律子, 上原 万里子, 鈴木 和春, 菅家 祐輔, 五島 孜郎
    1998 年 51 巻 5 号 p. 245-249
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    グルコース代謝とNの出納試験を高P食投与時にみられる成長の変化とあわせて検討するために, 高P飼料を自由摂取させた群, その飼料摂取量に合わせて正常飼料を摂取させた群と正常飼料を自由摂取させた群の3群を設け, 3週間の飼育を行った。その結果, 高P飼料を与えることにより, 体内N保留率は尿中N排泄率の上昇により低値を示すとともに, 尿中3-メチルヒスチジン排泄量が上昇した。さらに, 血清グルコース濃度には飼料を自由摂取させた2群間では差はなく, 制限給餌することにより有意に低下した。また, 高P食を投与することにより肝臓G6Pase活性は低下し, 肝臓中グリコーゲンの残存が観察された。高P飼料を投与することによって, グルコースや脂肪酸によるタンパク質の節約作用が低下し, タンパク質がエネルギー源として利用される可能性が示唆され, 成長抑制への関与が推測された。
  • 細山田 康恵, 黒田 圭一, 萩原 清和, 小畠 義樹
    1998 年 51 巻 5 号 p. 251-258
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    血清脂質濃度と組織へのペンタクロロベンゼン (PECB) 蓄積に及ぼす各種油脂と卵黄リン脂質の相互作用についてラットにより検討した。10%オリーブ油, サフラワー油またはDHA濃縮油を含む実験飼料を調製した。また, それら油脂の1/2を卵黄リン脂質に置換した実験飼料も調製した。いずれの飼料にも0.1%PECBを添加した。実験飼料を2週間投与後, 血清脂質濃度および血清と組織PECB濃度と, 糞中への見かけのPECB排泄比率を測定した。
    1) 血清総コレステロール, トリグリセリド濃度は, オリーブ油>サフラワー油>DHA濃縮油の順に低下を示した。オリーブ油群とサフラワー油群の1/2を卵黄リン脂質に置換すると血清脂質は著しく低下した。しかし, DHA濃縮油の場合は卵黄リン脂質置換効果はなかった。
    2) 肝臓, 副睾丸周辺脂肪のPECB濃度は, オリーブ油>サフラワー油>DHA濃縮油の順に低下した。オリーブ油とサフラワー油の1/2を卵黄リン脂質に置換すると, それら組織のPECB蓄積が明らかに低下した。しかし, DHA濃縮油の場合は卵黄リン脂質置換効果はなかった。
    3) PECB糞中排泄率は各群間に差は少なかった。肝臓薬物代謝酵素P-450, 血清GOTとGPTのいずれも各群間に差は見られなかった。
    これらの結果から, PECB蓄積は高不飽和度の脂肪酸により抑制されること, 低不飽和度の脂肪酸と卵黄リン脂質の組合せで, PECB蓄積は強く抑制されることが推定された。また, 飼料脂質によって受ける血清脂質と臓器PECB濃度の変化の傾向は強く相似すると推定された。
  • 上西 一弘, 江澤 郁子, 梶本 雅俊, 土屋 文安
    1998 年 51 巻 5 号 p. 259-266
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    健康な成人女性9名を対象に出納法による食品および食品別のカルシウム吸収比較試験を行った。被験者にカルシウム約200mgを含む基本食を3日間摂取させた後, 基本食にカルシウム約400mgを含む添加食を加えた試験食を4日間摂取させた。添加食は牛乳, 小魚, 野菜の3種類のいずれかであり, 1月経周期以上の間隔をおいてランダムに摂取させた。試験期間中は毎日, 採尿, 採便を行い, 尿中, 便中および食事中のカルシウム量を測定し, カルシウム出納を算出した。また, 各試験開始時と試験食移行時, 試験終了時に採血を行い, 血清のカルシウム関連物質を測定した。
    その結果, カルシウム出納は基本食摂取時にはマイナスとなったが, 試験食摂取時にはプラスとなった。各食品および食品群別のカルシウム吸収率は牛乳39.8%, 小魚32.9%, 野菜19.2%となった。牛乳は, 乳糖およびCPPがカルシウム吸収を促進し, 野菜は, 食物繊維やシュウ酸が吸収を阻害していると考えられる。血清のカルシウム関連物質では, 血清カルシウム, 副甲状腺ホルモン, カルシトニンには試験期間中変化はみられなかったが, 1,25(OH)2D3は基本食摂取後に上昇がみられ, 試験食摂取後には元に戻っていた。これは低カルシウム食に対する反応と考えられる。
  • 中井 義勝
    1998 年 51 巻 5 号 p. 267-272
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    摂食障害いずれの病型においても, その1/2に高コレステロール血症が存在した。その成因の少なくとも一部は病型により異なる。すなわち血清総コレステロール値と体重率の間にANやABでは相関があったがBNではなかった。またANでは血清総コレステロール値と血清T3値との間に相関があった。しかし, いずれも弱い相関であった。BNではBITEの大食スコアと血清総コレステロール値との間に有意の相関があった。したがって, 神経性無食欲症と神経性大食症では高コレステロール血症の成因が異なる可能性がある。今後はコレステロール生合成および代謝に関与する因子の遺伝的背景も考慮する必要がある。さらに高コレステロール血症を有する摂食障害患者が動脈硬化を将来きたすか否かは今後の課題である。
  • 小川 博, 望月 聡, 目黒 忠道
    1998 年 51 巻 5 号 p. 273-278
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    高コレステロール食投与SHRSPを使用し, カボス果汁にエタノールを加えることにより得られた沈澱画分 (カボス果汁粕) が血清ならびに肝臓脂質に及ぼす影響についてコレステロール代謝を中心として検討し, 以下の結果が得られた。
    1) 有意な血清コレステロール上昇抑制作用が認められた。これはVLDL, LDL両分画における上昇抑制に基づいていた。
    2) 血清コレステロール上昇抑制作用機構として肝臓よりコレステロール含量が低いVLDL (β-VLDL) が分泌されることが示唆された。
    3) HDL全体としての影響はほとんど認められなかったが, 構成アポタンパク (apoA-I, A-IV) の変動が認められたことから, HDLの組成へ影響を及ぼすことが示唆された。
    4) 肝臓コレステロールならびにトリグリセライドの蓄積が有意に抑制され肝臓肥大 (脂肪肝) 抑制が認められた。同時に cholesterol 7α-hydroxylase, ACAT両活性の有意な低下が認められた。
  • 下田 博司, 川守 秀輔, 河原 有三
    1998 年 51 巻 5 号 p. 279-287
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    スリランカに自生するニシキギ科の植物サラシア・レティキュラータ (Salacia reticulate) より得た水抽出物 (SRE) の, 食後の過血糖に及ぼす作用を, ラットおよびヒトボランティアで検討した。SREはショ糖, 麦芽糖およびα化デンプン負荷によるラットの血糖値の上昇を用量依存的に抑制した。しかしながら, ブドウ糖や乳糖による血糖上昇に対しては, 抑制作用を示さなかった。ショ糖に対する血糖上昇抑制作用は, 他の麦芽糖やα化デンプンより強く, ショ糖負荷直前の投与で奏効し, 投与量の増加に伴い作用の持続時間も延長した。
    次に, 各種グルコシダーゼおよびα-アミラーゼに対する阻害活性について検討を行ったところ, SREは酵母およびラット空腸由来のα-グルコシダーゼに対して強い阻害作用を示すとともに, α-アミラーゼに対しても阻害作用を示した。一方, β-グルコシダーゼの活性には影響を及ぼさなかった。SREのラット空腸由来各種α-グルコシダーゼに対する阻害活性の強度は, スクラーゼ=イソマルターゼ>マルターゼの順であった。さらに, 健常人ボランティアにショ糖 (50g) を負荷した耐糖能試験において, SREはショ糖負荷5分前200mgの服用で, 30分後の血糖値を有意に抑制した。
    以上の結果より, SREはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼ阻害作用に基づく過血糖抑制作用を有し, ヒトにおいても少量で食後の過血糖を抑制することが明らかとなり, 糖尿病患者の食事療法に応用できる有望な食品素材であると考えられる。
  • アブデエレム デイリベル, 森田 明美, 木村 美恵子, 糸川 嘉則
    1998 年 51 巻 5 号 p. 289-293
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ビタミンB1栄養状態に及ぼす加齢の影響を, 老化促進モデルマウス (SAM) を用いて検討した。市販固形飼料を与えて育てた雌雄のSAMP1 (促進老化系) およびSAMR1 (正常老化系) の2, 6, 10カ月齢における肝臓, 脳, 腎臓, 心臓および骨格筋中のビタミンB1含有量を測定した。腎臓におけるビタミンB1は, 雌雄ともに各月齢でSAMP1の方がSAMR1より低く, 逆に心臓や筋肉においてはすべての月齢で雌雄ともにSAMP1の方がSAMR1より高い値を示した。雄のSAMP1の心臓では加齢に伴い有意にビタミンB1濃度は低下した。これらの結果は組織中の加齢によるビタミンB1含有量の変化に遺伝的な因子が関与していることを示唆した。
  • 石見 佳子, 池上 幸江
    1998 年 51 巻 5 号 p. 294-298
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
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