日本栄養・食糧学会誌
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55 巻, 2 号
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  • 原田 理恵, 田口 靖希, 浦島 浩司, 佐藤 三佳子, 大森 丘, 森松 文毅
    2002 年 55 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    トリ胸肉より, ヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリン・カルノシンを豊富に含むチキンエキスを調製し, マウスに投与した場合の体内動態および運動能力への影響について検討した。チキンエキスをマウスに経口投与すると, アンセリン・カルノシンは分解されずにジペプチドのまま吸収されて血流に乗り, その血中濃度は投与約30分後に最大に達した。また, チキンエキスを10% (固形分換算) 配合した飼料を継続投与することにより, 大腿四頭筋内にアンセリン・カルノシンの有意な濃度増加がみられた。このチキンエキスを投与したマウスは, 投与開始6日目以降, 速い水流 (10L/min) のあるプールにおける疲労困憊までの遊泳持久時間が対照群に比べて有意に向上していた。この持久運動能力向上効果の一因として, チキンエキスの経口摂取により, 生体緩衝能力をもつアンセリン・カルノシンが血流を介して骨格筋内に蓄積されることによって, 骨格筋内の緩衝能が高まったことが推察された。
  • 川崎 寛也, 金森 弓枝, 伏木 亨
    2002 年 55 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    高炭水化物食 (HC diet) と「鰹だし」の風味を付加した高炭水化物食 (だし食; BF diet) とのマウス (ICR系雄, 5週齢) による24時間選択実験においてだし食が有意に好まれたことから,「鰹だし」の風味は高炭水化物食の嗜好性を高める作用があることが示唆された。また, 高脂肪食 (HF diet) と高炭水化物食を同時に与えて自由に選択させた群 (HC & HF群), 高脂肪食とだし食を同時に与えて自由に選択させた群 (BF & HF群) の2群において, BF & HF群はHC & HF群に比べて高脂肪食の摂取量が有意に減少した。以上の結果より,「鰹だし」の風味は高炭水化物食の嗜好性を高める効果があり,「鰹だし」の風味を添加した高炭水化物食は同時に与えた高脂肪食の摂取量を減少させたことが示唆された。
  • 大和 孝子, 紀 麻有子, 小畑 俊男, 太田 英明, 青峰 正裕
    2002 年 55 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    コーヒーとその主要構成成分 (カフェイン, クロロゲン酸) のラットにおけるストレス緩和効果について調べた。ラットの脳海馬における神経伝達物質セロトニン (5-HT) とドーパミン (DA) 放出レベルを in vivo マイクロダイアリシス法を用いて調べ, ストレッサーとして拘束を採用し, 拘束ストレスの負荷前後と, コーヒーと構成成分投与後の拘束負荷前後の5-HTとDA放出レベルを比較した。投与量はヒトがコーヒー1杯を摂取する際の量を基準にラットの体重に換算した値を用いた。拘束ストレス (100分間)は脳海馬細胞外5-HTレベルを著しく上昇した。コントロール実験として2回目拘束の直前に生理的食塩水投与を行った。2回目拘束を行った場合の5-HTレベルの上昇は1回目に比べ約85%であった。コーヒー投与では2回目拘束で1回目の約37%と低下し, 生食水の場合と比べて有意 (p<0.05) であった。カフェイン投与でもほぼ同様 (約33%, p<0.05 vs 生食水) であったが, クロロゲン酸投与ではむしろ1回目より若干増加した。DAレベルに関しても同様な傾向はあったが, 5-HTレベルほど顕著ではなかった。以上のことから, コーヒーは, ラットにおいても, ストレスを緩和するのに貢献していることを示唆する。
  • 健常者・経管栄養患者における測定
    後藤 冨士雄, 浜田 義和, 酒井 宏
    2002 年 55 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    午前1回排尿中の尿素 (U) /クレアチニン (C) 比の測定を行った。健康な3-7歳と11-12歳の幼少児のU/C比の平均値はそれぞれ男36.1, 女36.0と男22.1, 女19.2であった。14-15歳, 19-23歳, 21-60歳と61-94歳の健常者の各年齢層の平均値はいずれも15-18の範囲であった。59-87歳の老人病棟患者では男15.3, 女16.3であった。1,200または2,400kcalの栄養素を供給された経管栄養患者のうち, アミノ酸吸収量42.5g/日ではU/C比は14以下であり, 上記の健常者の平均値の範囲より低値であった。しかし52g/日以上では18以上であり, これより高値であった。
  • 杉山 寿美, 上本 久美, 石永 正隆
    2002 年 55 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    女子大学生を対象として2001年5月に, (1)“サプリメント (栄養補助食品等)”,“ドリンク剤 (医薬品, 医薬部外品等)”の利用状況, (2)食生活の現状, (3)健康に関する行動・意識についてアンケート調査を実施した。サプリメントの利用経験がある者は54%であった。サプリメント利用群は非利用群と比較して, 体調不良を訴える者, 食に関する情報を雑誌から得ている者, レトルト・惣菜の利用頻度が高い者が多かった。さらに, サプリメント利用群は, ダイエット経験者が多く (体型に差は認められない), ファッション・おしゃれに関心が高かった。また, サプリメント利用群ではドリンク剤の利用も多かった。これらのことから, 体調不良と雑誌からの情報が, 栄養素の不足や不安感を感じさせ, サプリメントを利用させていると推察された。今後, 食事として栄養素を摂取することの意義およびサプリメントの利用方法について指導することが重要であると考えられた。
  • 平成13年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞
    井手 隆
    2002 年 55 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    食品成分が肝臓脂肪酸酸化と合成系に与える影響をラットで系統的に追究した。大豆リン脂質は肝臓のトリグリセリド合成を著減させる。この低下は脂肪酸合成低下が主要因となり引き起こされることを明らかとした。卵黄やサフラワー種子リン脂質も同様な生理作用をもつことを示し, また脂肪酸合成低下は脂肪酸合成系酵素の遺伝子発現の変化によることも明確にした。α-リノレン酸の血清脂質濃度低下作用の発現機構に関連し, ミトコンドリアとペルオキシゾームの脂肪酸酸化系酵素の基質特異性とα-リノレン酸摂取によるβ酸化系酵素活性と遺伝子発現増加が, 大きな役割を果たすことを明確にした。ゴマに含まれるリグナンであるセサミンの血清脂質低下作用発現機構に関し, セサミンが強力な肝臓β酸化酵素の活性上昇と遺伝子発現誘導作用をもつことを示した。また, セサミンは脂肪酸合成系酵素遺伝子発現を低下させ, この低下に転写因子ステロール調節エレメント結合タンパク質-1 (SREBP-1) 遺伝子発現低下とその活性化抑制が関与することを示した。
  • 平成13年度日本栄養・食糧学会奨励賞
    井上 和生
    2002 年 55 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    現代の日本では日常的な疲労感が多くの人で問題となっている。疲労感はだれでもが感じる現象であるがその生成機構は明らかではない。運動によって疲労させたラットの脳脊髄液を他の動物の脳室内に投与すると疲れたように動かなくなることからそこに疲労に関与する物質があると予測された。淡水産腔腸動物の一種であるヒドラを用いたアッセイによりこれが transforming growth factor-beta (TGF-β) である可能性が示された。抗TGF-β抗体によって中和した脳脊髄液やTGF-βそのものを脳室内に投与する実験より, これが動物の自発行動を抑制する活性そのものであることが示された。脳脊髄液中のTGF-β濃度が運動強度の大きさと相関する結果と合わせて, 脳内のTGF-βが疲労感の生成に関与することが明らかとなった。
  • 平成13年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞
    大荒田 素子
    2002 年 55 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2002/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    脂質過酸化物を一次生成物のヒドロペルオキシドと二次生成物の低分子分解物に分けてマウスに投与したところ, いずれの場合も胸腺およびパイエル板などの免疫関連臓器が障害を受けやすいことを見いだした。そこで実際の食生活により近い状態で過酸化脂質を摂取した場合に受ける影響を明らかにする目的で, 酸化した大豆油を含む食餌でマウスを長期間飼育したところ, 胸腺および脾臓細胞の免疫能が変動した。このとき, 肝機能等は影響を受けなかった。次に食餌性脂質と生体内脂質過酸化および免疫系との関連について検討する目的で, 各種食用油脂を含む食餌でマウスを飼育した結果, n-3系高度不飽和脂肪酸を多く含み, 赤血球膜構成リン脂質過酸化の亢進が確認された魚油の摂取により免疫能が変動した。これらの結果は, 食物から摂取あるいは体内で生成する過酸化脂質が選択的に免疫系に影響を与えることを示唆している。
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