日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
57 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 田仲 一雅, 古賀 邦正, 川村 智一, 川端 一彰, 副島 徹, 遠藤 敏広, 坂東 経雄, 福田 クニ子, 金井 直明, 榊原 学
    2004 年 57 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    MC-FANを用いて採血後, 血液試料の流動性を血液の通過時間を指標として解析した。血液試料の経時変化の要因は, 試料の血小板粘着凝集能の個人差を反映したものであることを見いだし, これは採血後10分以内に試料に応力変化を与えずに測定すればほぼ無視しうることが明らかとなった。このような条件のもと12名の成人健常者を対象として, 梅エキス粒の1カ月間摂取により, 1) 血小板粘着凝集能の高い血液では, 物理的ストレスへの耐性が高まること, 2) 血小板凝集性は示さないが, 流動性の低い血液は流動性が高くなること, 3) 血小板凝集性は示さないが, 流動性の高い血液は流動性が低くなること, 4) 全体として通過時間の平均値に収斂する傾向を得た。これらの実験事実から梅エキス粒の長期摂取は物理的刺激に過敏に反応して血小板粘着凝集する血液の性質を改善する予防医学的効果が示された。
  • 五十嵐 香織, 中村 寛子, 中西 由季子, 中台 忠信, 岡安 誠, 蛭沼 利江子, 榎本 秀一, 木村 修一
    2004 年 57 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    鉄欠乏症は三大栄養素欠乏症の一つであり, 受胎可能年齢の女性, 幼児および小児に多く発症する。特に, 本研究で対象としたベトナムにおいては罹患率が高い。発展途上国における鉄欠乏症の改善には, 鉄強化は有効な手段であると考えられる。キレート化合物であるエチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム (EDTA鉄) は, 1999年, JECFA (The Joint Food and Agricultural Organization/World Health Organization Expert Committee on Food Additives) に食品強化政策の管理下での使用に安全性が承認された鉄強化剤である。本研究では, まず, 強化対象である魚醤の品質に及ぼすEDTA鉄および各種鉄強化剤, 硫酸第一鉄, クエン酸第一鉄および乳化ピロリン酸第二鉄の影響について, 溶解性, pHおよび色調の面から検討した。EDTA鉄は, 他の鉄強化剤に比べ魚醤に対して高い溶解性を示した。さらに, EDTA鉄添加魚醤のpHは, 1カ月保存後においても, 著しい品質の低下は認められなかった。次に, 貧血ラットを用い, AIN-93または米粉およびグルテンをタンパク質源とした飼料におけるEDTA鉄の鉄欠乏状態における改善効果を他の鉄強化剤と比較検討した。AIN-93にEDTA鉄を添加した飼料を摂取した群は, 他の鉄強化剤を摂取した群と比較し, ヘモグロビン濃度の回復に顕著な差は認められなかったが, 血清鉄濃度および肝臓中鉄含有量は, 他の鉄強化剤投与群に比べ低値を示した。一方, 米粉およびグルテンをタンパク質源とした飼料にEDTA鉄を添加した群は, 肝臓中鉄含有量は, 他の鉄強化剤投与群に比べ高値を示したが, ヘモグロビン濃度の回復および血清鉄濃度において他の鉄強化剤投与群に比べ顕著な差は認められなかった。以上の結果より, EDTA鉄は, 魚醤に対し高い溶解性および安定性を示し, 植物性食品をおもに摂取する場合に鉄欠乏に対する改善効果が高く, 他の鉄強化剤とほぼ伺等の効果を有することから, ベトナムにおける鉄強化食品に適した強化剤であると考えられた。
  • 松本 暁子
    2004 年 57 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    地上から400kmの宇宙空間に日本を含む世界15カ国が共同で建設を進めている国際宇宙ステーション: ISSがある。ISSは微少重力の宇宙空間に長期間滞在しながら未知の可能性に望む「宇宙研究所」として, 新薬や新しい素材などの開発を行う。そして, この実現のために国や人種を超えた取り組みが行われており, 宇宙飛行士は今も宇宙でISS建設を進めている。しかし, 特殊な宇宙環境下での滞在によって, 人間の身体は, 循環器系・骨代謝・筋肉系・血液免疫系の変化や放射線被曝などさまざまな宇宙医学生理学的影響を受けるため, 宇宙で活動するためには適切な栄養摂取が重要である。人間が宇宙空間に到達してから40年以上が経過しているが, その間に宇宙での栄養についても研究が進み, ISS長期滞在時の栄養摂取基準が定められている。現時点の宇宙食は米国かロシア製のみであるが, 今後は栄養学的に優れた日本食の特色を生かした宇宙日本食の導入によるISS計画への貢献が期待される。
  • 永尾 晃治, 柳田 晃良
    2004 年 57 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    共役リノール酸 (CLA) は, 反芻動物由来の食肉や乳製品中に含有する微量脂質成分で, リノール酸の位置・幾何異性体の総称である。これまでにCLAには抗がん作用, 抗肥満作用, 抗動脈硬化作用, 抗糖尿病作用などの生理作用が報告されているが, ごく最近, 抗高血圧作用も見いだされている。すでにCLA異性体の違いによる生理作用の違いについても報告されており, 10t, 12c型は抗がん作用, 抗肥満作用, 抗糖尿病作用を, 9c, 11t型は抗がん作用をもつことが示唆されている。また動物種による応答の違いも一部認められている。ヒトにおけるCLAの生理作用に関しては, ポジティブな効果も報告されているが, 信頼のおける評価を得るにはさらなる臨床研究が望まれる。
feedback
Top