日本栄養・食糧学会誌
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58 巻, 4 号
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  • 斉藤 雅信, 萩野 浩志
    2005 年 58 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ノリをペプシンで酵素分解して得られるオリゴペプチド (NOP) はアンギオテンシンI変換酵素 (ACE) 阻害活性を有し, 高血圧自然発症ラット (SHR) への単回投与にて血圧低下作用を有することが確認されている。本研究では, NOP中の降圧作用物質の解明とその作用機序について検討した。ノリの酵素分解物 (NOP粗製物) をNOP画分, 透析外液画分 (灰分画分) および透析内液画分 (糖・食物繊維画分) に分画し, それぞれSHRに28日間混餌投与した。その結果, NOP画分にのみ, 有意な血圧上昇抑制作用が確認され, 長期投与における降圧作用がNOPによることが確認された。NOP中のACE阻害ペプチドAla-Lys-Tyr-Ser-Tyr (AKYSY) のSHRへの単回投与における降圧有効投与量は0.2mg/kgであった。一方, NOP粗製物の降圧有効投与量は200mg/kgであり, NOP粗製物200mg中には, 0.135mgのAKYSYが含まれているので, NOPの降圧作用は主にAKYSYによることが示唆された。また, AKYSYを投与することにより, SHRの大動脈および肺のACE活性が低下することが認められた。
  • 谷口 歩美, 大串 美沙, 武智 隆祐, 渡邊 敏明
    2005 年 58 巻 4 号 p. 185-198
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ビオチンは, 種々の食品に広く分布している。しかし, ビオチンは, 五訂日本食品標準成分表には収載されておらず, 食品中の含量をはじめとして, 食品中での存在状態, 調理や加工による変化, 生体内における利用率などについて, ほとんど明らかにされていない。そこで, 日常的に摂取している代表的な101食品について, 食品中のビオチン含量を分析し, 諸外国の食品ビオチン量と比較した。食品群ごとにビオチン含量をみると, 豆類, 種実類, 卵類, 調味料および香辛料類で平均10μg/100g以上の高値を示した。一方, 野菜類, 果実類, 乳類, 油脂類では, ビオチン含量は低値であった。調味料では, ビオチンは多く含まれているが諸外国と大きな相違がみられた。これは, 諸外国では酵母類に由来し, わが国では醤油や味噌が, 大豆を原料に作られていることに由来する。しかしながら, 全体として, デンマークやドイツの食品成分表では, 食品のビオチン含量について, わが国と大きな相違は認められず, これらの国の食品のビオチン含量値も利用が可能である。平成13年度の国民栄養調査結果から食品群別にビオチン摂取量を算出した。本研究の測定値から算出した結果では, 1日あたり男性で110μg, 女性で92.3μgであり, 食事摂取基準 (2005年版) の目安量と比較して, それぞれ244%および206%であった。ビオチンは, 食品によって含量だけでなく, 遊離ビオチン率にも大きな相違がみられた。鶏卵では, 卵黄中の遊離ビオチン率が高値を示し, 卵黄がビオチンの供給源として有用な食品であることが示唆された。
  • 大西 竜子, 伊賀 契子, 桐山 修八
    2005 年 58 巻 4 号 p. 199-208
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    緑茶ポリフェノール (GP) の有用な生理作用はよく論じられている。一方, 一般に植物ポリフェノール類は in vitro でタンパク質とよく結合することも知られている。そこで, GPを飼料に0.2%または0.4%添加したとき, タンパク質の消化がどのように変化するのかをラットを用いて調べた。その結果, GPはタンパク質のみかけの消化率を低下させることが再現性よく示された。この飼料に1%グリシンを添加しても消化率の低下を阻止できなかった。また, GPと結合して難消化性となったタンパク質は大腸に流入することになるが, これがいわゆるレジスタントプロテインとして活用されるかどうかを知るため, レジスタントスターチ (高アミローストウモロコシデンプン, HAS) 含有飼料を摂取させたときのラットの盲腸内発酵がGPの有無でどのように変化するかを検討した。その結果, GP摂取によって盲腸内有機酸濃度は有意に低下し, GPは添加レベルに対応して強力な発酵抑制作用を示した。以上の結果からGP摂取は小腸内ではタンパク質の消化を低下させ, また大腸内発酵をも抑制することがわかった。用いた0.4%GP飼料から摂取されたGP量を基に, ヒトの栄養素等摂取量について重量比で換算すると, 緑茶11杯/日に相当し, 日常の食生活で十分摂取可能な量である。したがって, GPの有効な生理活性を強調するあまり, 過度の摂取を奨励する場合には, 注意が必要であると思われる。
  • 岡田 秀紀, 工藤 雄博, 福士 江里, 小野寺 秀一, 川端 潤, 塩見 徳夫
    2005 年 58 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    植物エキス発酵液は約50種類の植物を原料として製造される。植物エキス発酵液のアルコール性胃粘膜障害の抑制効果についてラットで調査したところ, アルコール性胃粘膜障害の抑制効果が200mg/体重kgの投与で認められた。DPPHに対する活性を指標に Amberlite XAD-2およびODSカラムを用いたHPLCにより抗酸化物質を単離し, MSおよびNMR分析により構造解析したところクロロゲン酸とコーヒー酸を同定した。また, クロロゲン酸とコーヒー酸は100-200mg/体重kgの投与でアルコール性胃粘膜障害の抑制効果を示した。以上のことから, 植物エキス発酵液は, 抗酸化活性とアルコール性胃粘膜障害の抑制作用を有することが明らかとなり, これらの作用にクロロゲン酸とコーヒー酸が関与していることが示唆された。
  • 中村 リサ, 渡邊 愛子, 猪木 彩子, 為定 誠
    2005 年 58 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    シイタケ菌糸体抽出物 (extract of cultured Lentinus edodes mycelia: L.E.M.) の生体内脂質過酸化に及ぼす影響を検討した。L.E.M.の抗酸化活性をチオシアネート法で測定した結果, リノール酸酸化に対する抑制効果が認められた。また, 生体内の脂質過酸化反応に及ぼす影響を調べた。ラットに多価不飽和脂肪酸の多い魚油を過剰投与すると血清中の過酸化脂質が著しく増加したが, あらかじめL.E.M.を投与することにより抑制された。また, 過酸化処理したコーン油はラットに軽度肝障害を惹起させたが, L.E.M.は血清トランスアミナーゼ活性および過酸化脂質の上昇を有意に抑制し, 軽度肝障害に対する防御効果を示した。L.E.M.は抗酸化作用を有することで生体内における過酸化脂質の生成を抑制し, 脂質過酸化反応が誘導する軽度肝障害に対し有効であることが示唆された。
  • 石原 伸治, 渡辺 敏郎, Tapan Kumar Mazumder, 永井 史郎, 辻 啓介
    2005 年 58 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    メシマコブ (Phellinus linteus) は, 桑の木に選択的に寄生する多年生の木材腐朽菌である。近年, メシマコブの液体培養技術が確立され, メシマコブ菌糸体は子実体と同様の抗腫瘍活性を有することで知られている。このメシマコブ菌糸体について, 抗糖尿病作用を評価するための試験を行った。in vitro の試験として, メシマコブ菌糸体熱水抽出エキス (Phellinus linteus extract (PLE)) において, α-グルコシダーゼ阻害活性を測定した。その結果, メシマコブ菌糸体は, 子実体と同様酵素活性を阻害した。in vivo の試験として, 正常ラット, STZ糖尿病ラットによる経口糖負荷試験を行ったところ, PLEの投与により, 血糖値上昇を抑制する傾向が認められ, 正常ラットではショ糖負荷30分後, STZ糖尿病ラットではショ糖負荷60分後の血糖値を有意 (p<0.05) に抑制した。これらの結果から, メシマコブ菌糸体は糖尿病の予防に有効であることが示唆された。
  • 平成16年度日本栄養・食糧学会学会賞
    中野 長久
    2005 年 58 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    食餌, 特にエネルギーの過剰摂取は, 種々の生活習慣病につながることは良く知られている。そして, 食餌量を制限すると, 寿命の延長がみられることが, ラットやマウスなどの齧歯類をはじめとして, さまざまな動物で報告されている。また, 加齢に伴う各種疾患の発症抑制や, がんや高血圧, 糖尿病などの生活習慣病, さらにアレルギーに代表される自己免疫疾患の発症が抑制されることが知られている。しかしながら, 食餌制限によりこれらの疾患の発症が抑制されるメカニズムについては未だ不明な点が多い。そこで, 本研究では食餌制限による疾患抑制のメカニズムを明らかにする目的で, 特に免疫機能に焦点を当て, 制限食によるグルココルチコイド, その他のサイトカイン類の変動が免疫機能発動にどのように影響しているかを明らかにした。
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