日本栄養・食糧学会誌
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61 巻, 1 号
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総説
  • (平成19年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    海老原 清
    2008 年 61 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    食物繊維は難消化性のために,栄養素中心の栄養学では注目されることはなかった。しかし,食物繊維には栄養素では達することのできない種類の栄養・生理機能があり,健康を維持する上で必須な食品成分であることが明らかにされた。現在,食物繊維の定義,分類,分析法については,まだ意見の一致をみていない。食物繊維の研究が進む中で,小腸で消化されないでんぷんの存在が明らかになり,それらはレジスタントスターチとよばれ,食物繊維と同様の栄養・生理機能を有することが明らかになった。食物繊維の栄養・生理機能は粘性やかさ形成能などの物理・化学的特性によって影響された。食物繊維やレジスタントスターチは生活習慣病予防を目的とした食品の開発に応用されている。
  • (平成19年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    西村 直道
    2008 年 61 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    高コレステロール血症を引き金とする動脈硬化症や心臓疾患が増加し,食品成分によるコレステロール代謝の正常化が重要視されている。著者は食物繊維およびタウリンによる血漿コレステロール濃度の低下機構を,それらの消化管内における作用に着目して調べた。その結果,発酵性の高い甜菜食物繊維(BF)で血漿コレステロール濃度低下作用が強く誘導されることを見出した。また,BFの作用発現に大腸の存在が必須で,大腸発酵が関与していることを明らかにした。有効な発酵産物の特定には至っていないが,発酵亢進だけでなく,糞中胆汁酸排泄の増加が同時に誘導されることが作用発現に重要であることを示唆した。タウリンの血漿コレステロール濃度低下作用には糞中胆汁酸排泄の増加が強く寄与していることを明確にした。この糞中胆汁酸排泄の増加がコレステロール7α-水酸化酵素の発現亢進ではなく,おもに回腸末端からの胆汁酸の吸収抑制に起因することを強く示唆した。以上より,血漿コレステロール濃度の低下が,食物繊維では消化管下部における発酵性に,タウリンでは回腸末端以降における胆汁酸吸収の抑制に起因することを示した。
報文
  • 冨山 隆広, 海方 忍, 石田 真己, 西川 英俊, 山崎 則之, 辻 潔美, 光武 進, 五十嵐 靖之
    2008 年 61 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎患者のほとんどは,乾燥肌,バリア機能の低下および皮膚炎症状がみられる。HR-1ヘアレスマウスは,皮膚にダメージを与える特殊な誘導食(HR-AD)によって,アトピー性皮膚炎様所見を示すことが知られている。本研究では,このモデルを用いて,グルコシルセラミドを高濃度含有するタモギタケエタノール抽出物(以下,タモギタケエキス,と記載する)の混餌投与がアトピー性皮膚炎様所見にどのような影響を与えるかを検討した。その結果,対照群(HR-AD投与群)では,皮膚水分蒸散量(TEWL)の経時的増加,角化亢進および真皮への細胞浸潤が認められるなど,典型的なアトピー性皮膚炎様所見を示した。それに対してタモギタケエキス投与群では,アトピー性皮膚炎様所見についていずれも改善する効果を示した(タモギタケエキスの投与量はセラミドとして0.1%および0.01%)。タモギタケエキスの混餌投与は,アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた実験系において,皮膚のバリアー機能を改善し,対照群で認められた皮膚炎症状の発症を抑制する作用を示したと予想される。
資料
  • 谷口 歩美, 武智 隆祐, 福嶋 厚, 渡邊 敏明
    2008 年 61 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    ビオチンは,種々の食品に広く分布している。しかし,ビオチンは五訂日本食品標準成分表には収載されておらず,食品中の含量をはじめとして,食品中での存在状態,調理や加工による変化,生体内での利用率などについて,ほとんど明らかにされていない。そこで,日常的に摂取している食品から代表的な330品目のビオチン含量を分析し,諸外国の食品中のビオチン量と比較した。今回,ビオチン分析を行った食品の中では,らっかせい,とうがらし,ぶた肝臓,にわとり肝臓,卵黄(生),インスタントコーヒー(粉末状),パン酵母(乾燥),ローヤルゼリーで50 μg/100 g以上の高値であった。また,食品群ごとでは,種実類やきのこ類,肉類(内臓を含む)で,ビオチン含量は高値であり,果実類や油脂類などにはビオチンは,ほとんど含まれていなかった。食品中のビオチン含量は,食品の種類や状態によって差異がみられたが,諸国間においても類似した結果が得られている。
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