日本栄養・食糧学会誌
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62 巻, 5 号
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総説
  • (平成20年度日本栄養・食糧学会学会賞)
    石田 均
    2009 年 62 巻 5 号 p. 235-243
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    糖尿病に合併する骨・ミネラル系の代謝異常の病態とその成因について以下の検討を加えた。2型糖尿病症例での骨芽細胞ならびに破骨細胞機能の測定により, 骨芽細胞機能の低下とともに, 一方で破骨細胞機能の亢進を認めた。そこで骨芽細胞由来のbone coupling factorの一つで破骨細胞の形成に対し抑制的な作用を有するosteoprotegerin (OPG) を測定したところ, 血中OPGは予想に反しむしろ高値の傾向を示し, しかも骨芽細胞機能ではなく破骨細胞機能との間に明らかな正の相関を, そして骨塩量との間には負の相関を認めた。すなわち糖尿病状態下では骨吸収の亢進が骨量の減少に重要な役割を果たすとともに, OPGは骨形成の低下にともなう骨量のさらなる減少に対し防御的に作用することが示された。またこの骨吸収の亢進の少なくとも一部には, 高血糖状態下でのポリオール経路の活性化と酸化ストレスの増大が関与している可能性が推測された。国民の高齢化にともない, この近い将来に骨量の減少を有する糖尿病患者数の増加が容易に予想されることから, 本研究を基盤とした骨減少症の病因の解明や, 治療ならびに予防法の確立が早急に求められている。
報文
  • 佐藤 明恵, 眞田 匡代, 小松崎 典子, 中嶋 洋子
    2009 年 62 巻 5 号 p. 245-251
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    若年者において, 動物性食品摂取量が増加し, 魚介類摂取量が減少している原因の究明を目的に, 4週齢ラットにラード食, 大豆油食, 魚油食を8週間摂取 (実験食摂取期間) させた後に, ラード食と魚油食の選択摂取 (選択摂取期間) を行わせ, 魚油の嗜好性に及ぼす成長期の摂取油脂の影響を調べた。実験食摂取期間後の血漿トリアシルグリセロールと総コレステロール濃度は, 魚油食群が他の2群に比べて低かった。選択摂取開始直後の魚油食摂取割合[魚油食摂取量 (g) /総摂取量 (g) ]はラード食群が最も高く, 大豆油食群, 魚油食群の順に低かった。しかし, ラード食群と大豆油食群の魚油食摂取割合はしだいに低下し, 逆に魚油食群は増加し, 選択摂取7-9日目以降の魚油食摂取割合は, 3群とも約20%となり, 選択摂取期間後の血漿脂質濃度にも3群間で有意な差はみられなくなった。したがって, 3群のラットは, 実験食摂取期間に不足した脂肪酸を選択摂取開始直後に補足し, その後は必須脂肪酸摂取割合 (n-6/n-3) 3でラード食と魚油食を選択摂取したことから, ラットは適正な比率で必須脂肪酸を摂取する能力を有していると推測された。
研究ノート
  • 岸本 正実, 幣 憲一郎, 田中 真理子, 和田 啓子, 福田 美由紀, 姫野 雅子, 桑原 晶子, 小川 蓉子, 木戸 詔子, 稲垣 暢也 ...
    2009 年 62 巻 5 号 p. 253-258
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    肥満は通常body mass index (BMI) によって判定されるが, 本来肥満は脂肪細胞過多である。そこで本研究では生活習慣病患者166名を対象に, BMIとbioimpedance analysis (BIA) 法による体組成の関係を検討した。BMIは体脂肪量と, 相関係数0.914と強く相関したが, 除脂肪量とは相関係数0.434と中等度にとどまり, BMIと除脂肪量の相関係数は, BMI≧25 kg/m2群ではBMI<25 kg/m2群より低かった。BMIによる肥満 (≧25 kg/m2) と, 体脂肪率による肥満 (男性≧20%, 女性≧30%) の関係は, 後者の判定に対して前者の特異度は高いが, 感度は低く, BMI25 kg/m2以上では, ほぼ確実に体脂肪率による肥満が存在するが, 25 kg/m2未満でもその存在を否定できない。栄養アセスメントにおいて, BMIに加えて体組成評価の併用が必要であり, また感度・特異度などによる解析を考慮すべきである。
  • 花井 美保, 江指 隆年
    2009 年 62 巻 5 号 p. 259-265
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    出納実験時に糞採取マーカーとして0.1%カルミン添加食を用いる必要性について検討した。フィッシャー系3週齢の雄ラット24匹をAIN-93G飼料にて1週間予備飼育後, 4群に分けた。実験飼料は2種; AIN-93飼料G (M) (Con) または, 糖質源をすべてスクロースにした飼料 (Suc) であり, 出納実験手法は2手法; マーカー使用群 (M) またはマーカー非使用群 (NM) とした。それぞれをConM群, ConNM群, SucM群, SucNM群とした。出納実験は, 本飼育開始直後 (1週目, I期), 3週目 (II期), 5週目 (III期), 5カ月目 (IV期) および7カ月目 (V期) にそれぞれ4日間 (V期のみ3日間) 実施した。M群には出納実験開始日と終了日に0.1%カルミン添加食 (赤色に着色) を与え, 翌日の糞採取の際, 赤色糞と白色糞を分別採取した。NM群は出納実験期間の糞をすべて採取した。乾燥糞重量, カルシウム吸収率から糖質源の差, 出納実験実施の時期の違いも含め, マーカー使用有無の影響を検討した。その結果, 出納実験開始翌日の糞には, 前々日由来の糞が排泄されることが示され, その量は加齢とともに増加することが示された。また, I期のSucM群とSucNM群の乾燥糞重量, カルシウム吸収率に差が認められた。ConM群とConNM群には差は認められず, その他の出納実験期でも糞重量にマーカー使用有無の影響は認められなかった。以上の結果から, 飼料交換直後に出納実験をする際, および週齢の異なる群間を比較する際などには, マーカーを使用する必要性があることが明らかとなった。同一飼料が継続的に給与されている場合は, ラットがコンスタントに飼料を摂取しコンスタントに糞を排泄しているという前提のもと, マーカーを使用しない出納実験が可能であると考えられた。
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