日本栄養・食糧学会誌
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64 巻, 3 号
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総説
  • (平成 22年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    五十嵐 喜治
    2011 年 64 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    食品・食品素材・未利用緑葉資源などに含まれるポリフェノールの活用を行うため、その探索と生理機能について検討を行い, 次のような結果を得た。 (1) 黄杞茶 ,藤茶などに含まれるフラバノノール類にも肝障害予防機能があること。 (2) マルビン、ルブロブラッシン, ナスニンなどアントシアニンは抗酸化・ラジカル消去能を有するとともに血清総コレステロール値の低下, HDL-コレステロールの上昇など, 脂質改善機能を有すること, また, アシル化アントシアニンのいくつかは体内ラジカル産生が原因となる体内酸化を抑制すること, 低分子のシアニジン配糖体は糖尿病の進行に伴う体内酸化を抑制すること。 (3) カテキン類のうち, 体内産生ラジカルが原因となる酸化障害をエピガロカテキンガレートが最も強く抑制し, 次いで, エピカテキンガレート、エピガロカテキンが強く、エピカテキンではほとんど効果のないこと。 (4) フラボノールの 3あるいは 4´位の配糖体化は体内酸化に基づくその肝障害抑制機能に影響しないが, 7位の配糖体化では効果が著しく低下すること。 (5) 7位に糖を有するフラボン類は糖部分のマロニル化により肝障害予防機能が上昇することなどが明らかとなった。
  • (平成22年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    宮本 賢一
    2011 年 64 巻 3 号 p. 137-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    リンは生体に広く分布しており, 細胞内シグナル伝達, エネルギー代謝, 核酸合成および酸-塩基などに関与している。リン代謝調節機構は, その破綻が低リン血症や高リン血症から生じる病態によって明白なように生命維持に必須である。低リン血症はクル病および骨軟化症を引き起こす。一方で, 高リン血症は心血管疾患に深く関与している。血中リン濃度維持の中心臓器は腎臓であり, また腸管および骨の三つの臓器が協調してリン代謝を制御している。生体には3種類のナトリウム依存性リントランスポーター (SLC17, SLC20, SLC34) が, 腎臓に発現している。我々は, これらリントランスポーターの同定や機能解析, またノックアウトマウスを作製して, その役割を明らかにした。一方で, 低リン血症や高リン血症を示す疾患の解析から, 新しいリン代謝系 (FGF23/klotho) が明らかにされた。 FGF23/klothoの発見は, 慢性腎臓病に伴うリン代謝異常の病態を理解する上で重要な知見をもたらした。また, 早期慢性腎臓病における心血管障害と食餌性リン負荷との関係も明らかにされつつある。本総説では, 我々の知見をもとに, リントランスポーターの役割と新しいリン代謝系の発見について, 最近の進歩を概説した。
報文
  • 巴 美樹, 外山 健二
    2011 年 64 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    料理中にグルタミン酸ナトリウムを主とするうま味調味料を添加した場合と無添加時とを比較して, 嗜好性が高まるかどうかの検討を行った。対象は, 健常中高年女性30名および健常青年女子29名である。試験食は, 20品目の料理について, 無添加, および0.25%, 0.5%, 1.0%の中の3種類の濃度から, 2種類の濃度のうま味調味料を添加した計3種類とし, 被験者に最も好ましいと感じたものを選択させた。中高年では, 0.5%添加の7品目, 0.25%添加の1品目の料理で有意に嗜好性が高まり, 青年女性においても同様の結果がみられた。同じ料理の無添加料理は, いずれも有意に好ましいとは選択されなかったことから, 料理によっては, うま味調味料添加による料理の嗜好性向上に効果があることが示唆された。
  • 矢口 (田中) 友理, 石川 仁, 邵 力, 佐々木 敏, 深尾 彰
    2011 年 64 巻 3 号 p. 159-167
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    本研究では日本人における喫煙習慣と食習慣の関連を明らかにするため, 40歳以上の住民5,350名を対象として喫煙, 禁煙, 非喫煙の3群に分けて栄養素および食品群摂取量について解析した。栄養素および食品群摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票 (BDHQ) より算出し, 喫煙習慣については生活習慣調査票への自己申告記入によった。喫煙率は男性42.3%, 女性8.6%であり, 喫煙者の年齢は男女とも非喫煙者に比べて若かった。喫煙者では男女ともにアルコールエネルギー比率が高く酒類や非アルコール飲料の摂取量が多い一方, 抗酸化栄養素や無機質, 食物繊維摂取量, 緑黄色野菜と果実類の摂取量が少なかった。禁煙者は男性42.3%, 女性5.6%であり, 男女とも非喫煙者に比べて酒類摂取量は多かったが, βカロテンや緑黄色野菜摂取量に差はなかった。これらの結果より, 日本人喫煙者は非喫煙者に比べて好ましくない食習慣を有することが示唆された。
  • 西田 浩志, 栗山 由加, 川上 賀代子, 武井 裕輔, 千葉 貴裕, 増田 秀美, 風間 克寿, 大塚 彰, 佐藤 眞治, 小西 徹也
    2011 年 64 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    芽キャベツとケールの交配から生まれた新しい野菜であるプチヴェールはカルシウムなどをはじめとしたミネラルやビタミン・βカロテンなどの栄養素に富んだ野菜であることから, その機能性に関する研究成果が待たれている。本研究では高脂肪・高ショ糖・高コレステロールの肥満誘導食 (ウエスタン飼料) を与えたマウスに対してプチヴェールがどのような影響を及ぼすかを検討した。通常食群 (CT), 通常食+5%プチヴェール群 (PV), ウエスタン飼料群 (W), ウエスタン飼料+5%プチヴェール群 (WPV) の4群を設定した。ウエスタン飼料給餌による体重および内臓脂肪重量の増加をプチヴェールが抑制した。トリグリセリド (TG) およびコレステロール値を測定したところ, 血中および肝臓ではプチヴェールの明確な作用が確認されなかったものの, 糞中への排泄量をプチヴェールが有意に促進することが分かった。また, ウエスタン飼料による肝臓中の脂肪酸合成酵素 (FAS) の活性上昇をプチヴェールが抑制することも明らかになった。 プチヴェールは脂肪酸代謝や糞中への脂質排泄を制御することでマウスの肥満を抑制することが示唆された。
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