日本栄養・食糧学会誌
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66 巻, 5 号
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総説
  • (平成25 年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    山﨑 正夫
    2013 年 66 巻 5 号 p. 241-247
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/21
    ジャーナル フリー
    共役リノール酸を始めとする共役脂肪酸は, 天然界においては比較的まれな脂肪酸であるが, その極めて強い生理機能が細胞, 動物レベルで示されてきた。このような機能性は私たちの健康に大いに貢献できる可能性を秘めており, 共役脂肪酸は機能性食品素材の候補として期待される。著者らは共役脂肪酸の機能性食品への応用を目指し, その体内動態を解析するため, ガスクロマトグラフィーによる分析法の確立を目的とした前処理方法を確立した。さらに, 細胞試験および動物試験により機能性の探索を進め, 共役脂肪酸は脾臓や腸間膜リンパ節リンパ球の抗体産生増強効果や, アポトーシス誘導による肝ガン細胞の致死活性があることを明らかとした。これらの作用は共役リノール酸の異性体により活性が大きく異なり, 共存するモノ不飽和脂肪酸によって機能性が影響を受けることを示した。本総説では共役リノール酸を中心とするこれらの機能性に関する知見を紹介したい。
研究ノート
  • 永井 亜矢子, 久保田 優, 東山 幸恵
    2013 年 66 巻 5 号 p. 249-254
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/21
    ジャーナル フリー
    正常な味覚閾値は健康な食生活に大切である。味覚閾値に影響を及ぼす因子の一つとして疲労やストレスが挙げられるが, それらが味覚閾値にどのような影響を与えるかを検討した研究は特に小児において殆どみられない。そこで, 健常な小学生男女58名を対象に, 疲労やストレスが味覚閾値とどのように関連するのかを検討した。味覚閾値は濾紙ディスク法を用いて4基本味を測定した。ストレスは唾液α-アミラーゼ活性を, 疲労はチャルダー疲労スケールを指標として評価した。唾液α-アミラーゼ活性によるストレス度別に4群で比較したところ, 味覚低下者数に違いはなかった。チャルダー疲労スケールでは, 非疲労群に比べ疲労群で有意に味覚低下者数が多かった (身体的疲労:酸味p=0.02, 精神的疲労:塩味p=0.03, 総合的疲労:酸味p<0.01, 苦味p=0.02) 。以上より, 小児において疲労は特定の味覚閾値を上昇させる可能性が示唆された。
  • 金子 真紀子, 三宅 正起
    2013 年 66 巻 5 号 p. 255-259
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/21
    ジャーナル フリー
    キュウリに含まれるギ酸の分布および味覚特性を明らかにするため, まず, HPLC法による分析法とキュウリ試料調製法について検討を行った。設定したHPLC分析法のギ酸定量限界は0.5 mg/Lであり, 再現性も良好であった。キュウリは, 果皮, 維管束, 果肉および種子, それぞれの部位に分け, HPLC分析試料を調製した。HPLC分析の結果, ギ酸は果肉と種子では検出されず, 果皮と維管束に局在することが示された。ギ酸標準水溶液の味覚特性を調べた結果, 低濃度 (<10 mg/L) では渋味を感じ, 濃度が高くなるに伴って渋味とともに苦味と酸味も強くなった。キュウリの渋味とギ酸濃度との関係については, 特に果皮を食したときに感じられる渋味は, ギ酸によるものと推察された。さらに, ギ酸を各種濃度に調整したキュウリの官能結果からも, ギ酸がキュウリの渋味の主な要因であることが示唆された。
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