日本栄養・食糧学会誌
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67 巻, 6 号
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総説
  • (平成26年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    小林 美里
    2014 年 67 巻 6 号 p. 283-289
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病や脂肪肝は, その発症に環境因子と遺伝素因とが関与する多因子疾患である。そこで, 食事条件と相互作用してこれらの生活習慣病を発症させる疾患感受性遺伝子の解明を目指して, 食事因子と遺伝因子とを厳密に制御できるモデル動物を用いた遺伝解析を行なった。第一に, マウスSMXA組換え近交系統群を用いて, 非糖尿病・非脂肪肝のゲノムに潜在している複数の疾患感受性遺伝子が組み合わさることによって糖尿病や脂肪肝が発症することを証明した。次に, マウス第2番染色体に高脂肪食摂取によって糖尿病形質を誘導する量的形質遺伝子座 (QTL) の存在を示し, 第12番染色体に脂肪肝発症を誘導するQTLを同定した。さらに, この脂肪肝のQTLの候補遺伝子が肝臓脂質代謝へ関与する可能性を得た。今後, 食事因子と相互作用する疾患感受性遺伝子の同定を目指して研究を進め, その疾患遺伝子の食事因子による制御機構についても研究を展開したい。
  • (平成26年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    平坂 勝也
    2014 年 67 巻 6 号 p. 291-297
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    寝たきり・不動状態による筋萎縮 (廃用性筋萎縮) は多くの寝たきり患者を生み出し, 深刻な社会問題となっている。しかしながら, リハビリテーション以外に有効な対処法は確立されていない。一般的に, 廃用性筋萎縮は, タンパク質合成の減少とタンパク質分解の亢進によって特徴づけられる。我々は宇宙フライトやベッドレストに暴露した骨格筋のマイクロアレイの結果から, 廃用性筋萎縮の重要な原因酵素がユビキチンリガーゼ (ユビキチン依存性タンパク質分解経路の律速酵素) であることを発見した。したがって, ユビキチンリガーゼの活性を抑制することが筋萎縮予防の鍵となりうる。本総説では萎縮筋で見られるタンパク質分解機構と筋萎縮予防のための栄養学的なアプローチに関する知見を紹介したい。筋萎縮に関与する経路の分子機構の理解は, 新しい治療法のアプローチの開発のために重要であると考える。
研究ノート
  • 小山 達也, 由田 克士, 荒井 裕介, 中村 幸志, 櫻井 勝, 西条 旨子, 長澤 晋哉, 森河 裕子, 田畑 正司, 中川 秀昭
    2014 年 67 巻 6 号 p. 299-305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    地域自立高齢者76名を対象に主食・主菜・副菜を組み合わせた食事回数と栄養素等摂取量を比較検討した。2013年5月の2日間に食事記録法による栄養調査を実施した。主食・主菜・副菜の出現頻度を食事バランスガイドの0.5 SV以上の料理を摂取している場合に「あり」と定義し, 3種の料理が揃う回数を個別に算出し, 2日間の平均回数を算出した。3種の料理が揃う回数により1.5回以下, 2回, 2.5回以上の3群に分け栄養素等摂取量を比較した。男女ともに3種の料理が揃う回数が多いと食塩相当量が増加し, 女性ではビタミンCと食物繊維も増加した。3種の料理が揃う回数が多いと炭水化物を目標量範囲内に摂取する者の割合が増加した。主食・主菜・副菜の組み合わせた食事を増加させることは, 女性ではビタミンCや食物繊維摂取量の増加につながることが示唆された。
資料
  • 大西 智美, 江上 ひとみ, 西本 香代子, 中村 清美, 山口 繁, 多門 隆子, 佐藤 眞一
    2014 年 67 巻 6 号 p. 307-313
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    第一次大阪府食育推進計画の行政介入の評価のため, 2006年度と2010年度に行った質問紙調査結果を比較した。食育に関心の高いボランティア集団や協力企業等の状況を把握するために各種講演会などの参加者を対象に, 関心の低い者も含む一般集団として児童・生徒・学生およびその保護者を対象に行った。解析は, 大阪府立健康科学センターおよび大阪府立大学公衆栄養実践研究センターで行った。2006年は4,520人, 2010年は5,156人から回答を得た。環境レベルで, 食事バランスガイドを見た場所は, 外食店が3から5倍程度, 食材・食品店が1.5倍程度に増加し, 認知レベルで, 「食育の認知」, 「食事バランスガイドの認知」, 「メタボリックシンドロームの認知」が増加した。態度レベルで, 「食育への関心」は変化が無かった。行動レベルで, 「農業体験」は増加したが, 「朝食摂取」は欠食が増え, 「食育活動」は減少した。
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