さつまいもの一種である紅天使を健康な女子大学生22人に摂取させた。加熱後皮をむいた紅天使の食物繊維は2.9 g/100 gだった。摂取開始前1週間を対照期とし, その後1週間単位で紅天使を1日300 g, 0 g, 100 gとそれぞれ摂取させた。排便のたびに手元にある直方体の木片 (37 cm3) と糞便を見比べ便量を目測した。その結果, 対照期には1.8±0.2 (個分/1日平均) だった排便量が, 300 gの紅天使摂取により約1.6倍に, 100 g摂取により約1.5倍に増加した。排便回数も紅天使摂取量の増加に伴い増加した。300 g摂取でお腹の調子は良くなり便が柔らかくなったと評価されたが, 膨満感に有意な変化はなかった。各期の最終日には便の一部を採取し, 腸内常在菌構成を16S rRNA遺伝子を用いたT-RFLP法により解析した結果, 紅天使摂取により酪酸産生菌として知られるFaecalibacterium属を含む分類単位の占有率が有意に増加した。
国民健康・栄養調査を始め, 多くの食事記録調査において, 材料等が不明な料理は事前に準備したレシピ (SR) で標準化する。本研究は, 高齢者の食事評価にSRを用いることの妥当性を検証するため, 地域高齢者に秤量記録法で調べた主要料理21種類と, 国民健康・栄養調査SRの栄養量を比較した。妥当性は一致率とロバスト法のZスコアを指標とした。一致率とは, SR栄養量の±20%の範囲が観察料理のパーセンタイル値11点 (3rd, 10th, ・・・90th, 97th) のうち何点を含むかを示した割合である。結果, SRの一致率は平均22.3%, レンジ10.9% (煮物) から50.0% (カレーライス) で, 副菜は主食や主菜よりも低かった。Zスコアは概ねの料理の栄養素で±1.0未満だった。この指標によるとSRは高齢者にも有効な食事評価ツールであったが, 実際の料理は変動が大きいので, SRの妥当性は今後も検証が必要である。
玄米には様々な微量栄養素や機能性成分が含まれ, 肥満や生活習慣病の予防における有効性も示唆されている。しかし, 玄米の普及率は低く, 主な原因として食味の影響が考えられる。表面加工玄米は, 玄米の食味改善を目指して作られた玄米であり, その継続摂取可能期間や食べやすさを玄米と比較する各期4週間の探索的なランダム化クロスオーバー試験を実施した。対象は40‐64歳の健常男女10名 (男性4名, 女性6名) とし, 期間中は試験食摂取状況等の記録を義務付けた。開始時と各期終了時に身体計測, 早朝空腹時採血, 質問紙調査を行った。両試験食とも期間中の脱落はなかった。対象の80%は玄米に比べて表面加工玄米が食べやすいと評価した。また, 表面加工玄米の「継続日数スコア」は, 玄米に比べて高い傾向にあった (p=0.068) 。
本研究は, 国内における男女の最高齢マスターズ世界記録保持者各1名ずつの食事摂取状況を報告することを目的とした。対象者は, 日本人男性陸上競技100 m 100歳クラス世界記録保持者 (略称=M, 102歳) と, 日本人女性最高齢水泳95歳クラス世界記録保持者 (略称=F, 98歳) だった。身長, 体重, 体脂肪率を測定した。秤量法による食事摂取状況調査を行い, 1日当たりの栄養素等摂取量, 食品群別摂取量, 栄養素密度をエクセル栄養君Ver. 6.0 (建帛社) を用い算出した。エネルギー摂取量はMが1,432 kcal, Fが1,691 kcalだった。たんぱく質摂取量はMが48.4 g (1.12 g/kg体重) , Fが75.8 g (1.63 g/kg体重) だった。Mの栄養素摂取量は, 後期高齢者の若い世代と比較すると少ないが, 100歳代の非競技者よりも多い栄養素等摂取量だった。Fの栄養素等摂取量は, ビタミンB12を除き高高齢エリートアスリートの平均値より低値となったが, 多くの項目で国民健康・栄養調査の75歳以上の平均値よりも高値だった。