肥満をはじめとする生活習慣病は心疾患など重大な疾患に繋がる。FGF19とFGF21は, それぞれ小腸と肝臓で選択的に発現し, 抗肥満効果を有するホルモン様因子である。本研究では, FGF19とFGF21の新たな発現制御機構の研究を通して, 生活習慣病予防に寄与する食品成分の研究基盤の確立を目指した。小腸細胞の実験より, FGF19は小胞体ストレスにより発現が制御され, その応答性転写因子ATF4の新規標的遺伝子であることを見出した。一方, FGF21を解析した結果, FGF19と同様にATF4による発現制御を受けることを見出した。ATF4は小胞体ストレスに加え, 様々な刺激で活性化される。培養細胞とマウスを用いた実験の結果, FGF19とFGF21はそれぞれ選択的な発現制御を受けることを示した。以上の研究成果から, 転写因子ATF4がFGF19とFGF21の新たな発現制御因子であることが明らかとなり, 生活習慣病予防に対する新たな標的因子である可能性を示した。
米は日本において主食であり, エネルギー供給源としてだけでなくタンパク質の供給源としても重要な食品である。それにもかかわらず, 米タンパク質の生理学的機能性に関する研究は非常に限られている。著者らはこの米タンパク質に着目し, 栄養生理学的に基礎となる消化性ならびに機能性に関する研究を行った。その結果, 我々が摂取している精白米のタンパク質の1つであるプロラミンの消化性は炊飯処理で低下することを明らかにし, 逆にアルカリ抽出により精製した米胚乳タンパク質 (AE-REP) 中のプロラミンの消化性が高いことを in vivo レベルで証明した。さらに AE-REP を用いて機能性に関する検討を行ったところ, AE-REP は血漿総コレステロール, 肝臓中総コレステロールおよび中性脂肪の低下作用を有し, 糖尿病モデルラットでは AE-REP の摂取が糖尿病性腎症の進行を遅延させることを明らかにした。
糖質と脂質代謝系に対する食餌量制限の影響を研究するために, ラットを自由摂食と80%に食餌量を制限した2群で2週間飼育し, その代謝系指標の日内変動を17:00および18:00より3時間ごとに調べた。胃の内容物重量は17:00の給餌から10時間後の翌朝3:00までは制限食群の方が多かったが, 16時間後減少した。血漿遊離脂肪酸, 総ケトン体値は給餌16時間後の9:00には制限食群で高かった。血漿インスリン値は両群とも0:00 (給餌後7時間) まで高く, その後制限食群で特に低下した。肝臓グリコーゲン値は制限食群でも変動幅は同じであったが, 6時間早くピークに達した。一方, 制限食群では血漿, 肝臓TAG値, 体重増加と内臓脂肪組織重量が減少した。各指標の日内変動は制限食群で大きかった。制限食群は胃内容物が枯渇するような時点では, 飢餓状態と類似の糖質・脂質代謝状況を呈し, コルチコステロンが急増することから, エネルギー代謝ホメオスタシスの維持という点では短時間のストレスを回避できなかったと推察された。