1) 健康成人男子2名に合計5回にわたり, DL-メチオニン10gを経口負荷し, 血清遊離M量, 尿中M量を測定した。血清M量 (L型) は負荷15分後より上昇し2時間後に最高値 (116.5γ/ml) に達し, 10時間後迄かなり高濃度を維持し, その後次第に減少するが24時間後, 尚正常値の5~10倍の値を示すのが観察された。
2) 尿中M量はDL型, L型とも2時間尿に最も多く排泄され, 後次第に減少する。24時間尿中DL-メチオニン量は1.11gで, 翌日尿では測定不能であつたが, L型は24時間尿中に89mg, 翌日尿に13.9mgで, 翌々日には正常値に復した。尚D型では最初6時間尿中に24時間排泄量の約60%以上が排泄されるのに反し, L型ではその40%しか排泄されず, 排泄の遅延する傾向が認められた。
3) 国立東京療養所入所中の肺結核患者中, 血清肝炎を併発せる者17例と, ビラジナマイドによる肝障害を併発せる者1例につきDL-メチオニンを経口或いは静脈内に負荷し, 24時間後の血清M量を測定した。
4) 軽度肝障害時にはメチオニンの負荷によつても, 24時間後の血清M量は若干の増加を認めるのみであつたが, 重症例においては著明の増量を示すものがあり, 尿中にも多量に排泄されているものと推測された。
5) 更にかかる重症例に対するメチオニン投与の臨牀的意義に関して若干の考察を加えた。
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