草本類の消化率とリグニン含量との関係を調べるに当一方コロイド滴定法は前項の結果から前処理として3% HClおよび0.25%Na
2CO
3処理を行なった残渣についてリグニンを定量した。結果は第7表のようになった。
第7表に示されたように72%硫酸法においては前処理の如何によってリグニンの定量結果は大幅に変りエリス法の結果にいたっては, 前処理なしの場合の1/5~2/5程度に減少している。
また生育期別にみると若い試料ほど前処理なしの結果に対する比率が小さくなっている。これは若い試料には蛋白質や糖類の含量が多く72%硫酸によるフミン化も著しいので前処理の効果が大きく現われたものと思われる。したがって前処理によりフミン化をある程度減少せしめることが出来, 植物の生育に伴うリグニン含量の増加の傾向も幾分明らかに示されるようになるが, Norman, Jenkinsらが指摘したように72%硫酸法によるリグニン残液は窒素を含有しており, 窒素の存在のため生ずる増加の割合が一定していない。比較的信頼のおけるEllis法もこの欠陥をまぬかれていない。
一方コロイド滴定法の結果はエリス法よりもやや低いり, まずリグニン定量法の検討を行なってつぎのような結果を得た。
1. 72%硫酸法は糖類のフミン化が著しく, 定量結果に過大な値を招くこと, 前処理の如何によって値が大幅に変ってくることおよび植物の生育期に伴うリグニン含量の増加の傾向が明白でないことを認めた。
2. コロイド滴定法において蛋白質, べントーザン, アラバンおよびペケチンことに蛋白質が定量結果に大きな影響をおよぼすことをみとめ, これらの影響を除く前処理の効果を比較検討した結果草本類では3% HClおよび0.25% Na
2CO
3による前処理でほぼ員的が達せられることを認めた。
3. 72%硫酸法のうち, Ellisらの改良法は比較的信頼し得る結果を与えた。コロイド滴定法の結果はEllis法の結果よりやや低いが両法共に生育に伴うリグニン含量の増加の傾向をよく示した。しかしコロイド滴定法では短時間に多くの試料を分析出来るのでEllis法より便利であることを認めた。
本研究に当って御懇切な御指導をいただきました千手教授ならびに貴重な試料を恵与されました農林省, 中国農業試験場八幡技官に深謝いたします。
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