油脂の酸敗に食品成分が影響するか否かを検討するため, あらかじめ, たん白質として脱脂したカゼイン, グルテン, アルブミン, 澱粉質として可溶性澱粉をえらびさらに蒸留水 (pH, 6.0) を用い, それぞれを単一および混合し, 油脂と混和し, 放置日数と油脂の過酸化物価および酸価を求めた。
その結果,
1. 油脂に対しカゼインが同量以上の混合添加になると, 放置日数とともに油脂の過酸化物価は高く, 20%以下の添加混合になれば, むしろコントロールに比べ過酸化物価は低い。
2. カゼイン, グルテン, アルブミンをそれぞれ油脂に20%添加混合し, 放置日数と油脂の過酸化物価を調べたが, いずれも異なったAOM酸化曲線を示した。
3. カゼイン, 澱粉, 水をそれぞれ2種および3種を等量混合させ, 油脂と混ぜ, 放置日数と油脂の過酸化物価, 酸価を調べると, カゼインと水の混合が著しく酸価を高め, ついで3種の混合物で, カゼインと澱粉, 澱粉と水の混合では殆んど酸価を高めなかった。また過酸化物価は酸価とは逆にカゼイン, 水の混合油は減少し, カゼインと澱粉, 澱粉と水混合油では増加した。
4. カゼイン, アルブミン, グルテンのそれぞれに水を混合させた場合も同様, 混合油の酸価は急激に増加しその増加量はカゼインが最も大で, 次いでアルブミン, グルテンの順である。
5. カゼインに対し, 水を同量, 1/2, 1/4, 1/10量ずつ添加混合した場合, 水の割合が多くなるにしたがい酸価を高めるが, 1/10量であれば, わずかに酸価を高める程度である。
6. 大豆油, オリーブ, 鯨油のみではわずかに酸価が増加する程度で, その増加は, 鯨油, 大豆油, オリーブ油の順である。これに反し, カゼイン, 水を添加混合すれば, 著しく酸価は増加し, その増加割合はオリーブ油, 大豆油, 鯨油の順で, 油脂のみの放置による酸敗と異なった結果が得られた。
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