50gずつのじゃがいも, たまねぎ, 鯨肉, とうふを, 180℃で4分間あげ, 10分後さらに4分間あげ, 揚げの時間と, フライ油の疲れ度合, 泡立ち性, 脂肪酸重合の程度を調べた。
(1) 各揚げ物をあげることによって, フライ油の泡延距離が早くから拡がる。
(2) 各揚げ物をあげ, 疲れ度合を同じにしたフライ油の脂肪酸重合の程度はそれぞれ異なり, いずれも対照油に比べ, ダイマー部, 2次生成物部の蓄積量は少ない。
(3) じゃがいも, 鯨肉に吸着した油脂の脂肪酸重合の程度は, 揚げ物時のフライ油重合度より高い。
(4) 未加熱油 (泡延距離25mm) に, カゼインを1%添加すると, わずかに泡延距離が25.3mmと拡がり, 酸化重合油 (泡延距離40mm) に添加した場合には, 泡延距離41mmとなり, その拡がりは大きい。しかし, 添加したカゼインを除くとかえって泡延距離が38~40mmとなり, 小さくなった。
(5) 加熱重合油にカゼインを添加混合し, 脂質-カゼイン複合体を調製し, その窒素量を求めると10.9%となり, カゼインの窒素15.1%より少ない。
また脂質-カゼインの複合体の脂肪酸重合度は, カゼイン添加時のフライ油より高い。
以上の結果から, フライ油にカゼインを添加したときあるいは各種の揚げ物をあげた場合には, それぞれに酸化重合油が吸着し, 複合体を作り, 泡立ちの一原因になるものと考えられる。かかる観点からすれば, 泡立性, あるいは泡延距離から疲れ度合を判定するには, 揚げ物をあげた場合には, 若干の補正を加える必要がある。
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