表1にあげた食品についての文献がきわめて少ないため, 数値の比較対照が困難であるが, 従来広く用いられたOrr-Wattの“食品のアミノ酸含量表”の中にあられている食品のアミノ酸組成値と, 表1のそれとを比較すると, isoleucine arginine, lysineについては我々の得た値がOrr-Wattの値より高いものが多い。たとえばisoleucineについては, きゅうり, 玉葱, ピーマン, ほうれんそう, lysineについては, 芝えび, 大根, 玉葱, ピーマン, ほうれんそう, またarginineについては, 芝えび, 玉葱, ピーマン等の場合かなり高い値が得られた。Block-Bolling
5) によると, 芝えび (Shrimp) ではlysine 325および518mg/1g N, arginine 356および413mg/1g N, ほうれんそうではlysine 325mg/1g Nであり, またBlock-Weissのアミノ酸組成表
6) によると, ほうれんそうではlysine 475および294mg/1g Nで, いずれもわれわれが得た値より低く出ている。
また含硫アミノ酸について表1の値を上記文献の値と比較すると, おおむね大差は認められないが, ただ大根の場合にOrr-Wattの表が9mg/1g Nとしているのに対し, われわれの値は47mg/1g Nであり, この差はあるいは試料品種の差によるものではないかと思われる。
なおその他大根におけるaspartic acid, glutamicacid, 人参におけるcystine, glutamicacid等Orr-Wattの表の値より低い値の得られたものもあるが, おおむね従来の文献値より高い値の得られたものが多い。その理由としてはおそらく試料の加水分解方法のちがいによるところが大きいのではないかと考える。
またDNP法によって得たε-NH
2 lvsineの定量値についてみると, 微生物定量値に対して, 動物性食品 (3試料) では, 98.6ないし98.9%, また植物性食品では97.2ないし99.5%であって, ほぼ前報と同様の結果が得られた。
このε-NH
2 lysineの定量値は前報においても同様に従来認められている値にくらべてかなり高い。われわれが用いた試料の調製方法は, 前記実験方法 (1) のごとくであって, 加熱を全く避けており, これがε-NH
2 lysineの高値が得られた一つの理由ではないかと考えられるが, この点については現在検討中である。
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