強化精麦を健康, 不健康のヒトならびに実験動物に与えて, 血清電解質およびコレステロールに及ぼす影響を精白米とあわせ吟味した。
1. 健康のヒトでは両試験食の差異がみられないが, 糖尿病患者および病弱者の試験では, 強化精麦食により血清透析性カルシウムが増加し, 精白米食は逆に減少する傾向であった。
2. 健康動物試験では, 強化精麦投与により血清無機リンが減少し, 精白米投与では逆に増加した。
3. 四塩化炭素障害ウサギの試験では, 強化精麦投与により血清透析性カルシウムが増加し, 精白米投与では総マグネシウムおよび無機リンが増加した。
4. 飢餓回復に対する試験では, 短期飢餓のものは精白米に比較して強化精麦投与により血清透析性カルシウムが増加し, マグネシウムと無機リンが減少するが, 長期飢餓ではこの関係が逆になった。
5. 健康動物に精白米を投与すると強化精麦よりも血清総コレステロールが増加する。コレステロール添加食飼育や高コレステロール血動物では, 精白米に比較して強化精麦投与の血清総コレステロールが低値であり, 四塩化炭素障害のものでは強化精麦が高値を示した。飢餓動物では強化精麦による減少が緩慢であった。
以上を総括して糖尿病などの病弱者や実験的肝障害は, 比較的血清透析性カルシウムが低く, 無機リンが高値のアチドージス傾向があるが, 強化精麦食によって血清透析性カルシウムが増加し, 精白米食にみられるごとき高無機リンがなく, マグネシウムや総コレステロールの増加が少ないことなどから考慮して, 主食のとりいれ方に改善的役割があると思われる。
抄録全体を表示