栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
22 巻, 9 号
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  • 津郷 友吉, 菅野 長右エ門
    1969 年 22 巻 9 号 p. 587-600
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    牛乳におけるトコフェロールの含量, 分布, その抗酸化作用について, 著者らの研究を中心として紹介した。
    油脂および油脂を含む食品に対する抗酸化剤の添加は, 油脂の自働酸化によってひき起こされるビタミンやその他の必須栄養素の破壊および異臭の発生や人に対して毒性のある酸化生産物の生成を防止することに意義があるのであって, 添加した抗酸化剤自身が食品の消費対象である人に対しわずかでも有害のおそれがある場合は全く問題にならないことはいうまでもない。 その点トコフェロールのような天然の抗酸化剤の存在意義がある訳であるが, 天然の抗酸化剤はその活性および経済的な点で合成抗酸化剤に劣る欠点がある。 理想的な抗酸化剤とは, (1) 0.01-0.001%の低濃度で活性が強いこと, (2) その抗酸化剤およびその酸化生産物は全く毒性がないこと, (3) 長期間の貯蔵あるいは加熱後でも食品に特殊の色, におい, 味をつけないこと, (4) 基質と容易にまじりあうこと, (5) その抗酸化作用は油脂においてばかりでなく, 油脂を含む食品にも移行性があること, (6) 容易に入手できるものであって, それを使用した食品の価格にあまり影響をおよぼさないこと, (7) それを用いた食品から容易に検出, 同定, 定量できるものであることなどの条件に適合するものと考えられ, このような条件を満たす抗酸化剤の開発が期待されるのである。
  • 油脂の変質度と澱粉のα化度
    梶本 五郎, 向井 克憲
    1969 年 22 巻 9 号 p. 601-606
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    加熱劣化度の異なる大豆油および豚脂, あるいは変質度の異なる大豆油でサツマイモ, ジャガイモ (3.5×3.5cm, 厚さ1.0cm) をそれぞれの温度 (120~180℃), 時間 (1~3分) で空揚げし, その澱粉のα化度, 種物の内部温度, 揚げ物の水分量などを測定した。
    1. 120℃で揚げたサツマイモ, ジャガイモ澱粉のα化度には明らかに大差を認め, また油脂の種類に関係なく加熱劣化油で揚げたものほどα化度は低い。さらに劣化度が高くなるにしたがいα化度は低くなる。
    2. フライ温度が高くなるにしたがい, 劣化度間での揚げ物のα化度には, 次第に差が縮まり, さらにフライ時間が長くなるにしたがい, ほとんど差はなくなる。
    3. 180℃, 1分ではα化度は逆に新鮮油で揚げたものの方が低い。
    4. 変質大豆油で揚げたサツマイモ澱粉のα化度は, 加熱劣化油ほど顕著な差異を認めない。
    5. フライ温度が120℃, 140℃の場合, 明らかに加熱劣化油で揚げた種物内部温度は, 新鮮油に比べ低い。6. 加熱劣化油で揚げた揚げ物の水分量は, 新鮮油の揚げ物に比べ多い。
    7. 加熱劣化油ほど油脂の比熱は大である。
  • アルブミンおよび植物油と塩素ならびにナトリウムの関係
    遠藤 一, 後藤 たへ, 松木 弘子
    1969 年 22 巻 9 号 p. 607-610
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    諸処理を行なった食塩浸透食品の食塩含有量はCl含有量からの算出値の方がNa含有量からの算出値より平均して約30%多くなる。その理由の一つとして, Clは変性タンパク質および油と結合するが, Naはそれらと結合しないことを放射性Naを用いて推定した。
  • 燻液の間接添加と酸敗防止性
    梶本 五郎, 池田 美佐男
    1969 年 22 巻 9 号 p. 611-614
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    フライ豆, 即席麺および煮干いわしに燻液を間接添し, 保存性を検討した。 あわせ燻液中の酸敗防止成分の検索を行なった。
    1. 各食品の重量に燻液として0.1~1.0%になるよう間接添加し, 酸敗防止性を検討した結果, 添加量が多くなるほど, エチルエーテル抽出油のPO. V, CO. Vは低い。
    2. 燻液吸収紙を風乾させた, いわゆる燻液風乾吸収紙は, 燻液吸収紙の使用よりも酸敗防止性は高い。 したがって燻液の風乾物の方に有効成分が多く含まれているものと思われ, フェノール類として, グアヤコール, フェノール, m-, o-, p-各クレゾール, 2, 4-キシレノール, 3, 5-キシレノール, クレオゾ-ル, 2, 6-ジメトキシフェノールなどをTLC, GCで同定した。
  • 総窒素・水溶性窒素・TCA可溶性窒素・アミノ態窒素・ペプチド態窒素について
    草野 愛子
    1969 年 22 巻 9 号 p. 615-620
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    納豆製造過程における大豆蛋白質の変化を明らかにする目的をもって
    1 次の納豆製造過程において経時的に水分, 灰分, 総窒素を測定した。
    (1) それぞれ3種の納豆菌を接種して製造した納豆および市販納豆
    (2) それぞれ2種の納豆菌を接種し, 通気, 撹拌を行ないながら製造した液状納豆
    2 原料大豆, 蒸煮大豆, それぞれ2種の納豆菌を接種した納豆および市販納豆について各種形態窒素を測定した。
    その結果
    1 (1) 総窒素変動の究明においては乾物中総窒素よりも, 総窒素に対する灰分の比による方がより適当であると考えられた。
    (2) 納豆製造過程において総窒素は次第に増加し, 培養18時間で最高を示し, その後減少した。市販納豆についても同様の傾向が認められた。
    (3) 通気して実験的に製造した納豆では総窒素の経時的変動は認められなかった。
    これらの結果から納豆製造過程において何らかの理由による総窒素の変動すなわち総窒素がいったん増加し, 後減少する傾向は認められたが, その量はきわめて僅かであると推察された。
    2 (1) 納豆製造過程においては水溶性窒素の変動が著しい。すなわち蒸煮によって原料大豆の水溶性窒素は大部分不溶性となるが, 納豆では再び水溶性となり, いずれの納豆でも原料大豆のほぼ85%まで増加した。水溶性窒素中蛋白態窒素とTCA可溶性窒素の割合は2種の納豆でかなり相違した。
    (2) 120℃, 100分の蒸煮による大豆蛋白質の分解は少なく, 分解の程度は大部分ペプチドまでの弱いものと考えられた。
    (3) 納豆菌の培養によってTCA可溶性窒素, アミノ態窒素, ペプチド態窒素は著しく増加するが, 特にアミノ態窒素の増加は著しい。2種の納豆についてアミノ態窒素とペプチド態窒素の割合には差があり, 市販菌納豆においてアミノ酸の分解がより大であると考えられ, 同一の納豆菌による市販納豆についても同様の傾向が認められた。
  • 田村 真八郎, 大沢 文江
    1969 年 22 巻 9 号 p. 621-633
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    アミノ酸パターン類似率表を整理し, 類似率表により数量的に明確にされた各食品間のアミノ酸パターンの類似性, 非類似性につき報告した
  • リジン欠飼料およびメチオニン欠飼料投与による実験
    木村 利三, 横田 美智子, 粟田 順子, 村田 希久
    1969 年 22 巻 9 号 p. 634-638
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    リジンあるいはメチオニンを欠くアミノ酸飼料を投与した時の代謝変動を検討するために, リジン欠, メチオニン欠あるいは完全アミノ酸飼料を白ネズミに4日間強制投与し, その間の尿中窒素量, MNA量そして5日目の投与3時間後の肝臓TPase, TKase活性および脂肪量を測定した。
    その結果, リジン欠およびメチオニン欠飼料投与時の尿中窒素量およびMNA量は完全アミノ酸飼料投与の場合に比して高く, また肝臓TPase活性, TKase活性および脂肪量もリジン欠, メチオニン欠飼料投与で上昇した。これらの結果はこれまでのスレオニン欠, トリプトファン欠, フェニルアラニン欠飼料投与での結果と共通していた。しかしリジン欠飼料投与時の尿中成分量, 肝臓酵素活性および脂肪量の上昇程度は, これまで明らかにしたいずれの必須アミノ酸欠飼料の影響より明らかに低くリジンの代謝および栄養上の特異性をしめすものであった。一方メチオニン欠飼料は各必須アミノ酸欠飼料のなかでも, 代謝に最も顕著な影響をおよぼすものであることが明確になった。
  • 純度からみた調製法の検討
    金森 正雄, 三好 正満, 伊吹 文男
    1969 年 22 巻 9 号 p. 639-643
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    他の研究者によってすでに報告された5種類のκ-カゼイン調製法を比較検討した結果, 収量の点では各方法とも酸カゼイン43gより2ないし3gで有意の差はなかった。セファデックスゲルろ過とデンプンゲル電気泳動によって純度を比較したところ, Mckenjieらのカルシュウムーエタノール法とYaguchiらのセファデックス法が好結果を与えた。しかし, 純度の点で問題のあるSwaisgoodらのTCA法, Zittleらの尿素-硫酸法でも各々セファデックス処理を加えること, 酢酸アンモンによる沈澱形成時の温度条件を厳守することにより高純度のκ-カゼインを調製することができることを認めた。
  • ほうれん草の硝酸・亜硝酸塩の含有量ならびに貯蔵・加工による変化
    畑 明美, 緒方 邦安
    1969 年 22 巻 9 号 p. 644-648
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    ほうれん草中の硝酸および亜硝酸塩の含有量について, 葉身, 葉柄およびかぶに分けて測定した。 また, ポリエチレンフィルム包装貯蔵を行ない, 貯蔵方法および貯蔵温度による影響を検討した。 さらに硝酸塩の含有量について調理加工による変化ならびに缶詰ほうれん草および調理ほうれん草の貯蔵中の変化をみた。
    1) ほうれん草中の硝酸塩含有量は42-2,575p. p. m. で個体差が大である。部位別に含量は異なり葉柄が多く葉身, かぶの順であった。
    2) 生鮮ほうれん草の貯蔵中における硝酸・亜硝酸塩含量の変化はほとんどみられない。 亜硝酸塩はほうれん草20℃密封貯蔵10日後のものに検出された。 このほうれん草はやや腐敗したものであって食用にはしがたいものであった。
    3) 調理ほうれん草では6℃貯蔵4日後に亜硝酸塩が検出され, 同時に硝酸塩は減少した。
    4) 缶詰ほうれん草中では貯蔵中変化なく, 温度による影響もなかった。
    5) ほうれん草を茹ることにより, 茹汁への硝酸塩の溶出は55.7~73.5%であり, 水でさらすことにより, さらに9.7 - 16.5%の溶出がみられ, ほうれん草中に残ったものは13.8 - 28.3%であった。
  • 2) 必須脂肪酸の結合部位を異にするトリグリセリドの影響
    山本 以和彦, 門田 明彦, 佐藤 義親, 菅野 道広, 和田 正太
    1969 年 22 巻 9 号 p. 649-654
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    肝臓ミトコンドリアの構造と機能に及ぼす食餌脂肪の影響に関し, 必須脂肪酸の含量はほぼ等しいがグリセリド構造を異にする大豆油およびラードを調製し, 5%の濃度で離乳ラットに投与した。さらにこれらにコレステロール (1%) を添加した区を設けた。6および13週間飼育後, 肝臓ミトコンドリアの膜の性質および脂質成分をしらべた。
    6, 13週ともにコレステロール無添加の場合には大豆油区とラード区でswellingに差はなかった。コレステロールを添加すると一般に無添加に比べswellingの速度および程度が低くなる傾向が認められた。この場合6週飼育ではラードは大豆油に比べその傾向が顕著であった。
    リン脂質の脂肪酸組成は大豆油区とラード区で6週では大差はなかったが, 13週では前者はパルミチン酸が多く, アラキドン酸が少なかった。コレステロールを添加しても両油脂間で脂肪酸組成に著しい差はないが, 無添加区に比べパルミチン酸, ステアリン酸, アラキドン酸が減少し, リノール酸が増加した。
    13週間飼育した場合リン脂質およびコレステロール濃度はラード区と大豆油区間で差はなかった。コレステロールの添加によりコレステロール濃度が増加したが, この場合にも両油脂間で大差はなかった。
    以上の結果は食餌脂肪のグリセリド構造が, 特にコレステロールを同時摂取した場合には, 肝臓ミトコンドリアのリン脂質の組成 (あるいは恐らくはその構造) に影響を及ぼし, ひいてはミトコンドリアの膜機能に変化を惹起することを示唆する。
  • 含銅農薬添付蔬菜のCu2+除去と組織学的検索
    木村 友子, 梅村 けい子, 小川 安子, 小川 政禧
    1969 年 22 巻 9 号 p. 655-659
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    以上述べたように蔬菜果実類に対する超音波洗滌処理は銅イナン含有農薬添付による残留銅イオンの除去に対し非常に有効であることが判る。しかし, 処理の条件によっては, 組織, 細胞を破壊し, 食用に供し難くなる怖れなしとしない。最初1分間の超音波処理による急激な第1次的洗滌効果に比し, 5分間, 10分間と処理時間を延長した時, 処理時間に比例してなされる銅イオンの除去は困難であって, 完全に除去しようと試みれば遂には組織, 細胞の破壊を招く。従って, 組織, 細胞を損傷することなく, 付着する銅イナンを除去するためには, 更に検討を要するものと思われる。
    本研究の要旨は昭和43年12月1日, 日本家政学会中部支部第15回例会においてこれを報告した。
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