栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
22 巻, 1 号
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  • 加熱油の呼吸系に対する影響について
    森 量夫, 橋本 美佐子
    1969 年 22 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    市販サラダ油を180℃に10時間, 200℃に100時間それぞれ加熱し, 次の結果を得た。
    1. 加熱油は新鮮な未加熱油より消化されにくい。
    2. 加熱油より分離したdimerはmonomerより酸化分解されにくい。
    3. dimerはsuccinic dehydrogenaseをやや阻害し, malic dehydrogenaseに対し著しく阻害的であった。
    4. dimerはcytochrome系に対しては特に阻害作用は認められなかった。
  • 川口 豊, 津郷 友吉
    1969 年 22 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    大豆乳の蛋白質の特徴を知る目的で調製方法を変えた場合の蛋白質の組成, 蛋白質粒子の形態, pHの変化に伴う蛋白質粒子の変化を脱脂乳と比較してしらべた。
    (1) 大豆乳は浸出のさい加熱すると, 全固形物, 蛋白質その他の成分含量は多くなり, 窒素化合物は酸沈澱区分が多く, 酸可溶区分は少なくなった。
    (2) 大豆乳蛋白質粒子は電子顕微鏡による観察によれば球状であり, 50mμ程度で牛乳のそれよりはるかに小さい。
    (3) 加熱浸出した大豆乳の蛋白質粒子は会合して巨大粒子を形成することが観察された。
    (4) 大豆乳, 脱脂乳ともpHが酸性になると蛋白質粒子は会合して大きくなるがこの傾向は大豆乳が顕著であった。またpHが2.4の強酸性液中の蛋白質粒子は膨潤していることが観察された。
    (5) 酸変性した蛋白質粒子をもとの液のpHの状態に規正した乳汁中の蛋白質粒子は形状を異にし, もとの形状にもどらないことが観察された。
  • 守 康則, 西山 幹子, 諸冨 節子
    1969 年 22 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    L-アスコルビン酸D-アラボアスコルビン酸 (エリソルビン酸) デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグロン酸の光分解性を比較検討し, さらにL-アスコルビン酸の光分解におよぼす気相 (O2, N2ガス), 酸化安定剤 (チオ尿素, EDTA), 光増感色素 (リボフラビン, エナシン, フルオレッセイン) の影響をしらべ, さらに光分解生成物の検索を行なって, 次の結果をえた。
    1. L-アスコルビン酸, D-アラボアスコルビン酸水溶液は光によりいちじるしい光分解をうけ, 後者の光分解度は前者より高い。
    2. デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグコン酸水溶液は光に対してL-アスコルビン酸溶液に比較してはるかに安定である。
    3. L-アスコルビン酸水溶液の光分解はN2ガスの通気により完全に抑制され, 酸素の存在下においてのみ光分解を惹起する。
    4. チオ尿素およびEDTAはL-アスコルビン酸の光分解をいちじるしく抑制する。
    5. リボフラビン, エオシン, フルオレッセインなどの光増感物質はL-アスコルビン酸の光分解をいちじるしく促進する。
    6. L-アスコルビン酸水溶液の光分解生成物として, デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグロン酸がみとめられる。
  • 桐淵 寿子, 福場 博保
    1969 年 22 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    各種マーガリンについて, トランス型不飽和脂肪酸の含有量を赤外吸収法によって求めた。 なお不飽和脂肪酸量, および脂肪酸組成をガスクロマトグラフイーによって測定し, これらのデーターとの相関から, 各マーガリンの特徴を考察した。
    アメリカ製マーガリンでは, ハード型ではトランス酸量46-73%であり, ソフト型では23-36% (一例を除く) であった。 これらマーガリンの不飽和酸含量は大体75-85%の範囲内で, 特に両者間に著しい差はなかった。 これに対し, 国産品では不飽和脂肪酸含量はソフト型43-65%に対し, ハード型23-31%で, ハード型の不飽和酸含量が著しく少なく, トランス酸量はハード型, ソフト型の間には著しい開きがなかった。
  • 井上 哲夫, 桂 英輔
    1969 年 22 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1956年より1967年の12年間に基礎代謝を測定した各種疾患患者1,293例および正常健康者75例のBMR, RQの成績は次の通りであった。 (図6)
    1. BMR (1) 正常対照各例の基礎代謝量 (Cal. /m2・毎時) をBoothby & Sandifordの標準値8) を基準として算出したBMRの平均は-7.3%で日本人の標準値9) (表1) を基準としたBMRの平均は-0.6%であった。 この差異は先に井上11) が指摘した通りBoothby & Sandiford標準値が日本人標準値より高いことによるもので, BMR算出の基準値としては日本人の場合, 日本人標準値を用いるのがよいと考える。
    BMRの正常範囲については±10%, ±15%などの意見12) があるが, 日本人標準値を用いたBMRのM±2×SDが-11.8%-+10.6%の範囲を示したことより±10%を正常範囲とするのが妥当と考える。
    (2) 甲状腺機能亢進例においてBMRの分布はいずれも正常区分以上にみられ平均値が高値を示し, 機能低下例ではいずれも正常範囲以下に分布し平均値が低値を示していたことは従来の知見5) とよく一致し, 甲状腺機能に対するBMRの診断的価値を確認した。
    ただEuthyroidismと診断された223例のBMRの大半 (70%) は正常範囲にみられたが残りの30%が高値または低値を示した事実は, 本症の発生病理・病態についてさらに検索を要すると考える。
    (3) 甲状腺機能亢進症以外でBMRの平均値が正常範囲をこえて高値を示した疾患は白血病と心不全であった。
    白血病でBMRが亢進することはDuBois5) も記しており, Dameshek13) はこれをleukemic process自身の結果であろうと推論している。 本集計において正常範囲にある14%以外の症例がすべてそれ以上の区分に認められたことは極めて特異的であった。 心疾患においてBMRの高い場合, DuBois5) は全例に呼吸困難を認めたと記している。 本報告の症例では検査中とくにつよい呼吸困難はなかったがBMRの分布は白血病のそれと趣きを異にしていた。 これらの成績と文献より白血病と心疾患におけるBMR亢進の発現機序は基本的に異なるものと思考される。
    (4) 甲状腺機能低下以外でBMRの平均値が正常範囲以下の低値を示したのはるい痩であった。 Plaut14) は低栄養でBMRが低下することを報じ, 桂15) は戦後の栄養失調症でBMRが低値を示すことを指摘したが, 基礎疾患のない低栄養, 神経性食思不振症などによるるい痩においても基礎代謝量は低下しBMRは低値を示すことを認知した。
    (5) その他の大部分の疾患ではBMRの平均値は正常範囲にありその分布も半数以上が正常区分に存しその上下の区分にほぼ同数の出現率がみられた。 ただ貧血, 腎疾患, 消化器疾患では正常区分以下に正常区分以上よりやや多くの出現率があり, BMRの平均値も正常範囲内で比較的低値を示した。
    (6) 悪性増殖性疾患では白血病と同傾向の成績を期待したが, BMRが高値を示したのは約30%で, 大半 (約60%) は正常区分にみられ, 約10%は正常範囲以下の低値を示した。 これは腫瘍の性状や病期がいろいろであることに由来するとも考えられるが, 悪性増殖性疾患の場合の基礎代謝は局所の増殖性過程よりも全身の栄養状態につよく影響されることを推定した。
    2. RQ
    RQは各疾患別に算術平均値で差異がみられても分布のばらつきが大きく, BMRのように各疾患において一定の傾向は指摘し得なかった。 これはRQが熱源栄養素の燃焼比のprofilとして表現されるため, 本集計のように疾患別に分けても各疾患にいろいろの病期があり同一疾患でも代謝相が異なるためこのような結果を来たしたものと考えられる。
  • 加熱条件の検討およびアミノ酸補足
    吉田 昭, 守時 圭子, 喜来 良子
    1969 年 22 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    凍結乾燥卵白を蒸気加熱するとそのタンパク質としての栄養価は著しく低下した。 100℃, 10分程度の蒸気加熱では一部の必須アミノ酸の添加でも栄養価はかなり回復したが100℃, 30分あるいは120℃, 30分の蒸気加熱では, もはや一部の必須アミノ酸の添加では効果が認められない程に全体の消化率が大きく低下した。 凍結乾燥でなく40℃の送風乾燥器中で乾燥させた卵白を同様に蒸気加熱した場合もかなりの消化率の低下が認められたがその程度は凍結乾燥卵白の場合程著しくはなかった。 あらかじめ卵白をグルコースオキシダーゼで酸化して除いた場合は蒸気加熱による影響はかなり軽減された。
    卵白を乾燥しないで蒸気加熱した場合, あるいは凍結乾燥卵白を定温乾燥器中で乾熱した場合は蒸気加熱と同じ温度, 同じ時間でも影響はほとんど見られなかった。 凍結乾燥卵黄は凍結乾燥卵白と同条件の蒸気加熱では全く栄養価は低下しなかったが, エタノールおよびヘキサンで脱脂した後, 蒸気加熱すると消化率はかなり低下した。 すなわち脱脂が卵黄の加熱による変化を阻止することが示された。
  • 後藤 たへ, 木須 靖子
    1969 年 22 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    基本食を東北地方乳幼児の日常摂取食餌に準拠して, 米, S. M. 卵, かつおの出しがら, 味噌, 野菜, 果物などで蛋白質14~18%, 脂肪10%とし, Seを1日1匹分0.05μgから5μg迄増加して離乳直後のウイスター系シロネズミを飼育した。 飼育実験を3回行なった結果いずれの飼育実験においてもSe添加区は対照のSe無添加区に比べて体重が少なく, 発育が劣っていた。 同様に肝臓重量は明らかに少なく脛骨の重量も少ない傾向であった。 肝臓脂肪含有量はSe添加区が明らかに少なく, そのT. B. A. 値も少ない傾向であった。さらにまた, 古い酸敗凍豆腐を5%混入した食餌にSe添加して与えたシロネズミは対照のSe無添加区シロネズミは飼育49日中に全シロネズミの3/4が死亡したのにSe添加区のシロネズミは1匹の死亡もなく生き残った。
  • 武藤 静子, 水野 清子, 伊東 明子, 内藤 寿七郎
    1969 年 22 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    給食用スキムミルクの栄養価, 特に良質蛋白質, Ca, V. B2源としての重要性から, これら3要素に重点をおき, 発育との関係を追求する為, 幼動物を用いてその栄養価値を検討した。
    比較の対象としては, 市販スキムミルクおよびカゼインを用い, 飼料の蛋白レベルは10%におさえた。
    離乳直後のWister系白鼠を同腹組合せで, 1群8匹とし8週間ad-libfeeding飼育を行ない, 1日おきに体重と飼料摂取量を測定した。
    また実験開始後, 2週目と5週目に窒素とV. B2出納試験を行ない, また飼料中のCaの利用率をみる為に実験終了の8週目に1側の大腿骨, 脛骨の骨の長さ, 乾燥脱脂骨の重量, 灰分, Ca含量を測定し, 次の結果を得た。
    1. 一般健康状態についてみると, 給食群は全部体毛が密で, 良好な発育と健康状態を示した。 市販群は3例の死亡 (肺炎による) 1匹の発育不良を除き, 他の4匹は給食群に劣らぬ発育を示した。 カゼイン群の発育は3群中最も劣った。 下痢はどの群にも全くみられなかった。
    2. 体重発育, 蛋白質効率は8週目迄, 常に給食群が最高位を示し, カゼイン群が最低値を示した。
    3. 窒素出納は3群とも強い正の平衡を示し, ことに飼料摂取の少ないカゼイン群は高い蓄積率を示した。 しかし窒素蓄積の絶対量は飼料摂取の多い給食, 市販両スキムミルク群に大きかった。
    4. V. B2出納試験では摂取量と尿中排泄量との差を一応体内におけるV. B2消費量とみなすと, 3群ほぼ同量の消費を示した。
    5. 骨の長さ, 重量は, カゼイン群がスキムミルク群に比べて劣ったが, 2種のスキムミルク群間では差はみられなかった。 摂取されたCa中, 1側の脚骨に蓄積されたCa量は, 給食群が最高, カゼイン群が最低で, 摂取量の5-6%であった。 骨灰分に対するCaの比率は市販群が最低, 給食およびカゼイン群に比べて有意性をもって低かった。
  • 松谷 康子, 猪俣 節子, 伊東 淳子, 中野 典子, 多田 真瑳子, 小川 安子, 小川 政禧
    1969 年 22 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1969/01/20
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    すでに超音波照射 (20KC) によりビタミンCが若干損失する事を述べたがここでは周波数を異にした際におけるビタミンC, ビタミンB1 などに及ぼす影響について検索した。また周波数20KCにおいてビタミンB1 およびその2, 3の誘導体, 蛤アノイリナーゼ活性などに及ぼす影響についても観察した。なおシステインの共存する場合に於いてはこれらの影響はかなり抑制せられる事を知った。これらの結果を要約すれば次の通りである。
    1) すでにL-アスコルビン酸が水溶液並びに燐酸緩衡液に於いて超音波照射 (20KC) により若干の影響を受ける事を報告したが, 本報では周波数 (50KC) 付近に於いてわずかに, 400KC付近においてはかなりの影響を受けこれらは溶液のpHが大なる程著しい事が判った。
    2) B1 -HClは水溶液並びに燐酸緩衡液溶液 (pH4.5, 6.8, 7.4) において超音波照射 (周波数20~28, 400~800KC付近) によりかなりの影響がみられるが, 50, 1, 200, 2, 000KCにおいてはほとんど影響がないように思われた。なおB1 -HClの酢酸塩緩衡溶液 (pH4.5) おいては燐酸塩緩衡溶液および水溶液の場合に比して超に音波照射の影響はわずかにすぎない。
    3) 周波数20KCにて60分間にわたって超音波照射を行なったB1 -HCl, B1 -NDS, DBT, B1 -ピロ燐酸エステルなどのB1 誘導体は超音波照射によりいずれも若干損失する事が判った。
    4) パセリ中のビタミンC, 大豆および米糠中のビタミンB1 など組織中のビタミンは超音波照射の影響は極めて僅少である。
    5) 蛤内臓抽出液は超音波照射 (20KC) によりアノイリナーゼ活性を減少した。
    6) L-システインの存在は超音波照射時におけるビタミンCおよびB1 などの損失をかなり抑制する。
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