新しく考案した亜硝酸塩定量法を用いて, 肉加工の際に使用される数種の食品添加物が, 発色剤として作用する亜硝酸塩の挙動にどのような影響を及ぼすかについてmodel systemを用いて検討を行なった。
すなわち, pH5.0およびpH6.0のベロナール緩衝液中に, 亜硝酸塩単独, および亜硝酸塩と共にNa-AsAを含むmodel systemに, 食品添加物のうち, (1) 塩づけ剤 (食塩, 硝酸カリウム), (2) 調味料 (グルタミン酸ナトリウム, コハク酸ナトリウム, グルコース, ショ糖), (3) 各種リン酸塩 (NaH
2PO
4, Na
2HPO
4, Na
3PO
4, Na
2H
2P
2O
7, Na
4P
2O
7, Na
5P
3O
10, Na
6P
6O
18), (4) 防腐剤 (ソルビン酸, ソルビン酸カリウム, ソルビン酸ナトリウム, AF2) を, それぞれ通常肉加工の際に使用される量加えて各試料溶液を0℃で調製し, これらに4℃で72時間保持, 75℃で1時間加熱などの処理を施したのち, 各試料溶液中に残存する亜硝酸塩を比色定量した。
得られた結果はつぎのとおりである。
(1) 供試したほとんど大部分の食品添加物において, pH6.0の場合よりもpH5.0の場合の方が, 亜硝酸塩の挙動に及ぼす影響が顕著であった。
(2) Na-AsAが共存する場合, 大部分の食品添加物が亜硝酸塩の分解を促進する作用を示したが, 硝酸塩, トリポリリン酸塩およびヘキサメタリン酸塩がかえって亜硝酸塩の分解を抑制した。 ピロリン酸塩の作用は特異的で, 添加直後には亜硝酸塩の分解を抑制したが, 4℃で72時間保持すると逆に亜硝酸塩の分解を促進する傾向を示した。
(3) ソルビン酸とその塩類は, いずれも単独で亜硝酸塩の分解を促進したが, Na-AsAが共存すると, ソルビン酸は亜硝酸塩の分解を促進したのに対して, ソルビン酸塩類はかえって亜硝酸塩の分解を抑制した。
AF2は, 亜硝酸塩の挙動になんら影響を及ぼさなかった。
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