PMAにより汚染された食品を通じて水銀 (Hg) が母体にはいり, さらにその乳汁を通じての乳仔へのHgの移行をしらべる目的で, 以下の実験を行なった。
PMA (
203Hg) を合成し, これを用い, 泌乳中のモルモット (体重700~800g) 6頭に1回経口投与, 5頭にくり返し経口投与 (5回) をした。 PMA (
203Hg) (1回につき500μg) をカプセルで投与し, 糞, 尿を経時的に採取, 投与終了後1週間経過後殺し臓器, 血液を採取した。 乳汁は原則として仔モルモットにのませたが, その一部を直接搾乳により得て測定に供した。 仔モルモットは親と同時に殺し臓器, 血液を採取した。 これらの試料中の
203Hgをウェル型シンチレーションカウンターで測定した。
1) 乳汁へのHgの移行 (母体)
投与期間中は, 少しずつふえるか, あるいは横ばい傾向をたどり, 投与終了後2日目からゆるやかに指数関数的に減少した。 実験期間中の総移行量は, 0.40±0.09% of dose (1回投与), 0.40±0.27% of dose (5回投与) で微量ではあるが, 実験期間中継続して移行した。
2) 乳汁より乳仔へのHgの移行
仔モルモットが吸乳した乳汁中のHgを100%とすると仔体内へのHg移行率は, 4.85±1.96% (1回投与), 5.07±2.78% (5回投与) で微量ではあるが移行することが明らかになった。
3) 糞, 尿へのHgの排泄 (母体)
糞へは, 59.7±2.8% of dose (1回投与), 61.7±4.3% of dose (5回投与), 尿へは13.2±1.7% of dose (1回投与), 16.4±3.4% of dose (5回投与) 排泄された。 排泄傾向は, いずれも指数関数的であるが, 糞ではかなり急で, 尿ではゆるやかで乳汁における傾向と類似していた。
4) 臓器などにおけるHgの残留 (母体)
全体的には, 18.6±3.1% of dose (1回投与), 11.4±3.2% of dose (5回投与) の残留がみられた。 量も濃度も腎臓がきわめて高く, ついで肝臓その他の順であった。 血液中には, 0.24±0.04% of dose (1回投与), 0.13±0.03% of dose (5回投与) のHgが存在した。
抄録全体を表示