1) 香辛料中に天然に存在する抗酸化物質であるトコフェロールと香辛料の抗酸化性との関係を明らかにするため, 24種の香辛料の総トコフェロール含有量をEmmerie-Engel法により定量した。
2) タラゴン, ブラックペパー, レッドペパー, バジル, オールスパイスは他の香辛料に比較してトコフェロール含有量が多く, いずれも100mg%以上であり, 果実部位から得られた香辛料は概して含有量が多い傾向があった。
3) セージ, ローズマリー, シナモン, ターメリック, ベイリーブスのトコフェロール含有量はいずれも50mg%以上100mg%以下であり, 葉茎, 木皮, 根塊から得られた香辛料である。これらの香辛料の部位は, トコフェロール含有量の多寡の判断基準にはならなかった。
4) キャラウェイ, コリアンダー, アニス・シード, クミン・シード, メース, フェネル・シード, ポピー・シード, セロリ・シード, ディル・シード, ナツメグはいずれも種子から得られた香辛料であり, トコフェロール含有量はきわめて少なかった。
5) 従来抗酸化性が最も強いといわれているセージ, ローズマリーおよび, 抗酸化効果がかなり強いといわれているクローブ, ターメリック, オレガノ, タイム, ナツメグのトコフェロール含有量は, 必ずしも多くなかった。
以上の結果から, 香辛料中のトコフェロール含有量と当該香辛料の抗酸化効果の強さとは一致しなかった。これは香辛料中に存在するトコフェロール以外の物質も, 香辛料の抗酸化性に関与していることを示唆するものである。
終りに本研究をご指導いただいた東京農業大学小原哲二郎教授に深謝する。
また本研究の実験を担当してくださった武井信也君, 永島俊夫君, ならびに香辛料をご提供いただいた高砂香料株式会社に深謝する。
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