栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
32 巻, 6 号
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  • 腎不全を中心にして
    平田 清文
    1979 年 32 巻 6 号 p. 353-362
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    以上の多年にわたる腎不全治療の結果から, 次のことが結論された。
    1) 腎不全とは病態栄養学的には主としてたん白質および窒素代謝の異常とこれに関連する諸物質から成る代謝性疾患としてみなすことができる。
    2) したがって腎不全の対策として病態栄養学的の積極的な近接 (approach) が可能である。
    3) 低たん白高エネルギー食事は腎不全の進展増悪を抑制するのでなく, 不全腎機能の改善をももたらすことが期待できることを明らかにした。
  • 川村 美笑子, 木村 修一
    1979 年 32 巻 6 号 p. 363-368
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    L-AsA酸化抑制作用をもつワラビ中の有効成分の本体を解明しようと試み, 以下の結果を得た。
    1) ワラビ成分のL-AsA酸化抑制効果 食用に適さないほど成熟したワラビ汁液には効果が認められなかった。反応溶液のL-AsA 1モルに対しCu2+0.7モルの存在で, 本有効成分のL-AsA酸化抑制効果は消失した。これより, Cu2+と有効成分の錯体形成が推測された。この効果は反応溶液のpHによって異なりpH 6.0で最も強かった。
    2) 有効成分の化学的性質 有効物のディスク電気泳動を行なった結果, アクリジンオレンジによって染色される核酸物質が含まれることが示された。紫外吸収スペクトルにおいて, プリン画分はアルカリ性で浅色移動を示し, またCu2+の添加により染色効果を示した。質量分析により有効物にはアデニンが含まれることが示された。
    3) 有効物の加水分解物およびその塩基組成画分のL-AsA酸化抑制効果 有効物の加水分解物およびその塩基組成画分のL-AsA酸化抑制効果を, 従来L-AsA酸化抑制効果の強いといわれている核酸関連化合物およびチオ尿素の効果と比較した。有効物のプリン画分は効果を示したが分画以前の効果とくらべると低下し, 加水分解物にはほとんど効果が認められなかつた。市販のRNA, プリン系塩基に効果が認められた。
    以上の結果から, 食用に適するワラビに含まれる成分がL-AsA酸化抑制作用を示すのはCu2+と錯体を形成する塩基を含むことも一つの原因と考えられたが, それ以外に, 加水分解されることによつて効果を失う核酸関連化合物と糖, 主として酸性糖からなる化合物を含むことによるものと推察された。
  • 木田 芳隆, 池田 郁男, 菅野 道廣, 山本 統彦
    1979 年 32 巻 6 号 p. 369-376
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ヒトを含む種々の実験動物の血清および血清LP中の植物ステロール (Phyto) の分布をしらべた。正常な成人男子にPhytoを投与しても血清中にはごく少量しか検出できず, ヒトでは他の動物と比較しPhyto吸収率は, かなり低いと判断された。Phytoの50%はLDL, 35%がHDLとして運ばれていた。Phytoを投与した場合, 産卵鶏血清では低い割合でしかPhytoは検出されなかったが, 雄鶏ではかなりの取り込みが認められた。Phyto食により卵黄中のChol濃度は低下した。卵黄へのPhytoの取り込みは増加したが, 絶対量はきわめて少なかった。配合飼料食のウマ血清ではPhytoの占める割合は低かったが, 血清Chol濃度が高いことから, 量的にはかなりのPhytoが血液中に存在し, 主としてHDLとして循環しているとみなされた。配合飼料食のウシおよびブタ血清ではPhytoの占める割合は低かったが, ウシの極低密度リポたん白質画分には試験した動物のうちで最高の割合でPhytoが含まれていた。ウサギは比較的よくPhytoを吸収するようであり, これはげっ歯類に共通なのかもしれない。各LP中の分布は動物種により異なり, またカンペステロール/β-シトステロールの比にも一定の傾向は認められず, Phytoの吸収能のみならずその代謝も動物種によりかなり異なることが示唆された。
  • 福場 博保, 津田 淑江
    1979 年 32 巻 6 号 p. 377-382
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    従来AsAはインドフェノール法やヒドラジン法で定量を行なっているが, レダクトンの混在する場合は真値を求めることは困難であり, しかもこれらの方法は操作が繁雑であるため, 等速電気泳動法を応用し, AsAの定量を試み, また酸化物であるDHA, さらにDKGの分離を試みた。その結果以下のことが認められた。
    1) 島津細管式等速電気泳動IP-1Bを用いアスコルビン酸関連化合物の分離定量を行なった結果, リーディング液: 0.01N塩酸-β-アラニン (pH 3.6), 0.05% PVA, ターミナル液: 0.01N n-カプロン酸, 定電流50μAで泳動し次のPU値が得られた。
    AsA=0.63±0.02, DKG=0.28±0.02
    また定量性も認められた。
    2) 本定量において糖による定量性の阻害はなかった。
    3) DHAは水溶液中, 水和物として存在していると思われ, 易動度が小さく, いずれのリーディング液, ターミナル液の組合せにおいても泳動図を得ることができなかった。
  • 福場 博保, 津田 淑江
    1979 年 32 巻 6 号 p. 383-388
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    前報においてAsAの定量法として細管式等速電気泳動法が応用できることを報告したので, 本報では食品中のAsAを実際に測定し, その実用性を検討した。その結果以下のことが認められた。
    1) 試料の抽出には2%チオ尿素-0.01N塩酸を用いるとき, 回収率もよく短時間に泳動が終了することを認めた。
    2) β-アラニン系リーディング液 (pH 3.6) の条件では食品中のAsAはGluとミックスゾーンを形成し測定が不可能となるが, このミックスゾーンは, α-ナフチルアミン系リーディング液 (pH 2.5) では, 分離できることを確かめた。なおβ-アラニン系リーディング液 (pH 3.6) の場合にも電位勾配検出器による同定と254nmにおける紫外部吸収を求める紫外部吸光検出器による定量を併用することによってAsAの定量は可能であることを確認した。
    3) AsAとAAsAの分離は電位勾配検出器, 紫外部吸光検出器のいずれを用いても成功しなかった。
  • 中川 靖枝, 辻 啓介, 岩尾 裕之, 辻 悦子, 鈴木 慎次郎
    1979 年 32 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    起源の異なる菌株から分離されたコレステロール酸化酵素によるコレステロール定量法について検討した。コレステロールに構造が近似したシトステロール, スティグマステロールに対する3種の酵素反応は, おのおの約70%, 約60%であった。本酵素の基質特異性をみるため類似ステロール7種を用いて酵素反応を試みた。同時にLiebermann-Burchard反応とKiliani反応を行なったが, 両呈色反応では各ステロールの色調が一様でなかった。酵素法では色調は同様であったが, いずれもコレステロール以外の物質も呈色に影響をおよぼすことが明らかとなった。種々なステロールを含有する試料について, 酵素法, 比色法, ガスクロマトグラフ法で比較定量した。酵素法と比色法では数値に大差がなく, コレステロールのみを分画定量できる点においてガスクロマトグラフ法が最適であった。本研究の一部は第10回コレステリン研究会 (1977) にて報告した。
  • 沖田 卓雄, 菅野 道廣
    1979 年 32 巻 6 号 p. 397-401
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    たん白質源としてカゼイン, 全卵たん白質, 大豆たん白質, 小麦グルテンおよび米たん白質を用い, 窒素含量を同一 (3.2%) にした飼料をラットに2週間与え, 空腹時血漿および肝臓脂質濃度を測定した。同時にコレステロール (CHOL) 1%あるいはさらにコール酸ナトリウム0.25%の添加効果を調べた。
    1) カゼイン飼料群に比し, 大豆たん白質および全卵たん白質飼料群では血漿CHOL濃度は低い傾向にあり, 実験1では有意差があった。
    2) カゼイン飼料群では, 1% CHOL食による肝臓CHOL濃度の上昇は最も顕著であり, 全卵たん白飼料群では最も少なかった。
    3) ラットにおいても, 食餌たん白質の種類によって血漿, 肝臓のCHOL濃度に違いが出る可能性が指摘された。このような差異はたん白質のアミノ酸組成の違いや特定のアミノ酸の相対的濃度の違いなどにより生じると推察された。
  • 新崎 輝子, 美野 典子, 黒田 充恵
    1979 年 32 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 2種の食用褐藻, マツモHeterochordaria abietinaとコンブLaminaria japonicaから5%水酸化ナトリウム抽出たん白質の精製を行い, 淡緑を帯びた白色粉末のたん白質を得た。それらの窒素含量は, それぞれ11.7%と10.4%であった。
    2) アルカリ可溶たん白質のアミノ酸組成と原藻中のアミノ酸組成を比較した。アルカリ可溶たん白質では両者間にきわめて高い類似性があり, かつ卵白アルブミンのアミノ酸組成との類似性も認められた。
    3) それらのアミノ酸価は, マツモ95 (T), コンブ73 (T) であり, E/T比はそれぞれ2, 779 (マツモ), 2, 989 (コンブ) であった。
    4) ペプシン, パンクレアチン, プロナーゼによる消化性は, カゼインの消化率を100とするとマツモは5時間消化では, それぞれ42.7%, 68.3%, 97.8%であり, 24時間消化では, 85.0%, 100%, 100%でかなりよい結果を得た。コンブは, 5時間では8.8%, 54.0%, 69.2%であり, 24時間では25.1%, 71.2%, 83.8%で, マツモにくらべて悪く, 両者のたん白質の消化性に明らかな差が認められた。
  • 近藤 義和, 川本 恵子, 竹田 範子, 船津 軍喜
    1979 年 32 巻 6 号 p. 409-416
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    多量の糖質を含む食品のアミノ酸分析法を次のように確かめた。
    試料をギ酸に溶解し, その一部を加水分解管に採取し, 減圧下カセイソーダ上でギ酸を除く。1%チオグリコール酸を含む塩酸を試料たん白質に対し2,000倍量以上加え, 10-1mmHg下で封管し, 115℃で20時間加熱する。シスチンは過ギ酸酸化しシステイン酸として, チロシンとトリプトファンはアルカリ加水分解物について測定する。これらの結果, アミノ酸分析結果はかなり改善されたが, なおいくつかの問題点を残した。この方法を用いて数種の穀類と豆類のアミノ酸分析を行なったところ, 食品アミノ酸組成表にくらべて高い値を示すものが多かった。
  • 中野 三津子, 山本 悦子, 難波 敦子, 堀越 フサエ, 宮川 金二郎
    1979 年 32 巻 6 号 p. 417-419
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    図1, 2に示したごとくマイクロ波加熱による凝固卵白のプロテアーゼによる水解度は, 普通加熱にくらべかなり低い。生たん白質が変性により水解されやすくなることは周知のことであるが, 変性たん白質が二次的会合により凝固する場合, 会合の度合によっては水解度に差がみられることも予想される。マイクロ波加熱は電磁場内での誘電体分子の運動に起因するものであるが, たん白質分子が電磁場内で運動することはないとされている。このことは表2に示したごとく, 出力差による凝固卵白の水解度に差がみられないことからも示唆される。今回の実験では, 20秒以上の照射により試料温度が93℃に達することから, 十分卵白たん白質が変性されていると推定され, 30秒照射では写真2に示したごとくスポンジ状に凝固し, 水分含量も減少する。これらの結果から, 熱凝固した卵白のゲル内の水が急激な沸騰により膨張しゲル内に圧縮された部分が生ずる。このため凝固たん白質がさらに部分的に会合し, 普通加熱による凝固卵白にくらべ水解されにくくなるものと推定される。
  • 山添 義隆, 大坪 藤代
    1979 年 32 巻 6 号 p. 420-423
    発行日: 1979/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    有明海産汽水魚ムツゴロウ, ワラスボの筋肉組織と卵についてNa, K, Ca, FeおよびPについて分析を行なった。また, NaとKについてはその存在形態について検索し, 次のような結果を得た。
    1) ムツゴロウ肉質中および卵中のNa, K, Ca, FeおよびPの含有量はそれぞれ110, 320, 29.4, 3.9, 122mg%および70, 210, 29, 2.0, 15mg%であった。ワラスボではそれぞれ順に130, 340, 68, 5.4, 150mg%および72, 200, 27, 1.4, 12mg%であった。また両魚種とも含有量は筋肉でK>P>Na>Ca>Fe, 卵ではK>Na>Ca>P>Feの関係にあった。
    2) 筋肉組織水抽出物中の結合型と遊離型のNaの割合は, ムツゴロウでは46.0%, 54.0%でその比は1: 1.17, ワラスボでは37.6%, 62.4%でその比率は1: 1.65であった。またKではムツゴロウで27.0%, 73.0%でその比率は1: 2.7, ワラスボでは20%, 80%でその比は1: 4.0であった。
    3) 汽水魚の結合型NaとKおよび遊離型NaとKの含有比は海産魚にくらべ比較的小さい。
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