in vivoの状態での脂肪組織成分 (FTM) と除脂肪組織成分 (EBM) の両体構成成分別に, その基礎代謝産熱量を推定するために, 以下の実験を行ない, 後述の結果を得た。
団体生活を営む18~19歳の男子学生15名について, 1977年1月と7月の2回, 次の諸項目を測定した。身長, 体重*, 皮厚*, BMR* water displacement methodによる体密度: ただし, *は8人について1976~1977年にかけで毎月1回測定。
ここで対象者のEBMとFTMの各重量当たり産熱量を
a,
bとし, それぞれ各人で一定であり,
Bi=Ei・a+Fi・bなる式が成立すると仮定して統計学的に,
a,
b値を決定した。また長嶺らが同一手技で測定報告した体構成成分, BMRの成績を借用して若干の検討を加えた。得た結果の概要は, 次のとおりである。
1) 肉体活動訓練を受けている上記8人のBMRは, 基準値よりも高く, 夏低冬高の季節変動を呈し, その変動幅は, 平均11.5%であった。
2) 体構成成分のFTMは, 1月より7月に増加, EBMは7月減少した。
3)
a,
b両値は, それぞれ1月: 29.8 (kcal/kg/day, 以下同), 25.0, 7月: 28.5, 18.7と算定された。両月間の差は
b値に大きくBMRの季節変動に脂肪組織代謝の役割が大きいことを示唆している。
4) 脂肪細胞中の脂肪分の重量を約80% (Forbes21) ) と仮定して, この比率から脂肪細胞の代謝量を推算すると, 夏93.5 kcal/kg/day, 冬125 kcal/kg/dayとなる (ただし, 本実験でのFTM重量が夏冬で異なっていたので, Forbesの数値をそのまま摘用できないが) 。
5) 長嶺らのデータ (19~22歳女性, 84名) を検討した結果,
a=26.1 kcal/kg/day,
b=16.8 kcal/kg/dayとなった。
6) 上記長嶺値をさらに検討した結果, 個人の基礎代謝量は, lean body mass当たりでみると重量が大なるほど小さくなるという偏りがみられた。純粋にEBMのみからの産熱量もまた, EBMの重量当たりでは, 同様の傾向がみられた。生体の代謝量は, その重量と相関するが, 正比例関係にはなく, 曲線関係にあると考えられる。
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