栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
35 巻, 3 号
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  • 鈴木 雅子
    1982 年 35 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    日常の砂糖摂取量が30 (g/day) 以下, アルコールの摂取習慣のない健康な成人男子 (年齢20~25歳) 10名を, 体位がほぼ同じような2集団にわけ, 1集団は10日の実験期間中の主食を玄米, 他の集団は白米とし, この2集団の対象者全員に砂糖を毎日50 (g/day) 摂取させた。栄養摂取量は実験開始前の総カロリー1, 992.2 (kcal/day) を実験中2, 520.2 (kcal/day) とした。こうした条件下で上昇するTC, TGに対する食品中, とくに玄米中の食物繊維の抑制作用について検討し, 次のような結果を得た。
    1) 2集団の食物繊維摂取量は, 1人平均玄米集団で33.3 (g/day), 白米集団で9.9 (g/day) であった。このうち玄米のみからは26.7 (g/day), 白米のみからは3.3 (g/day) を摂取していた。
    2) 血清総コレステロールは, 実験開始前玄米集団138.6 (mg/100ml), 白米集団145.8 (mg/100ml) であったが, 5日後玄米集団では11.0 (mg/100ml) の上昇があったのに対し, 白米集団は116.6 (mg/100ml) の上昇をしめした。
    3) 白米集団においてとくに上昇したコレステロールは, 動脈硬化症発症の原因の一つとされる, TC-HDL-Cであった。
    4) トリグリセライドについては, 実験終了時において, 玄米集団では14.2 (mg/100ml), 白米集団では21.6 (mg/100ml) の上昇がみられた。これらはいずれも正常値の範囲内における変化であったが, 玄米集団におけるトリグリセライドのほうが白米集団よりその上昇度合が低かった。
    5) 以上の実験結果より, 玄米中の食物繊維による血清コレステロール, トリグリセライドの上昇抑制作用が認められた。
  • 菅家 祐輔, 鈴木 和春, 五島 孜郎
    1982 年 35 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    たん白質源としてカゼイン, 大豆たん白質を, でんぶん源としてとうもろこしでんぶん, タピナカを用い, さらに鉄の添・無添加を考慮した8種の飼料を調製し, たん白質レベル10%の低たん白質食下で初体重50g前後のWistar系雄白ネズミを飼育し, 鉄の体内保留, 肝中濃度およびHb値への影響を, さらにCa, P, Mg出納上の変化を参考までに観察した。
    1) 低鉄レベルのとき大豆たん白質投与はカゼイン投与に比し鉄の体内保留, 肝中濃度, さらにHb値を高めた。
    2) 飼料中でんぶんの種類あるいは鉄レベルがCa, PそしてMgの出納に影響する可能性のあることが結論された。
  • 東條 仁美
    1982 年 35 巻 3 号 p. 167-173
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    幼若ラットに鉄不足飼料を投与し, 実験的に鉄欠乏貧血ラットを生成し, 鉄含量ほぼ同一にし, たん白源としてアミノ酸混合物を5%と20%にした2種の飼料を回復食として投与し, 回復におよぼすたん白量の影響をHt, Hb, RBC値の再生および各組織鉄含量を観察し, 以下の結果が得られた。
    1) 生後約4週齢のラットに鉄不足飼料を約6週間投与した結果, 著しい鉄欠乏性貧血を示した。
    2) 鉄欠乏ラットに各回復飼料を投与した結果, 血中Ht, Hb, RBC値の再生を認めたが, 低たん白食群 (5%) と高たん白食群 (20%) との間に有意差はみられなかった。
    3) 回復食投与21日後の各組織 (肝臓, 脾臓, 骨髄, 筋肉, 大脳) の鉄含量は対照群より低く, 両回復群の間に有意差は認められなかった。
    4) 以上より, 鉄欠乏性貧血からの回復に対するたん白レベルの影響は認められず, ラットの鉄欠乏状態, 成長, 摂取鉄量などとの関連について討議された。
  • 田中 紀子
    1982 年 35 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    正常時にはほとんど利用されないとされる尿素がたん白欠乏時にどのように利用されるか, そしてそのとき, 腸内細菌がどのように関与するかを低たん白食としてカゼイン食で飼育したラットについで検討し次の結果をえた。1) ラットを低たん白食で2週間以上飼育すれば小腸内ウレアーゼ活性の増加により多量の尿素をアンモニアに分解する能力を有する傾向のあることがわかった。
    2)15N尿素を投与すると投与後2時間目より48時間目に至るまで標準たん白食飼育ラット (対照) に比べ低たん白食飼育ラットの血漿たん白に尿素由来の15Nの高い取り込みが有意に見られ, たん白欠乏時には尿素が体たん白合成に利用されることが示唆された。また血漿たん白構成アミノ酸に取り込まれた15Nは低たん白食飼育ラットで著明に高かった。各アミノ酸の中で最も取り込みが高かったのはNEAAで次にEAA, Lysであった。
    3)15N尿素投与後1時間目の門脈血血漿遊離のLys, EAA, NEAAに15Nの高い取り込みが低たん白食飼育ラットで見られた。このアミノ酸への15Nの高い取り込みは抗生物質投与により強く抑制されたことから, 尿素からアミノ酸への合成には腸内細菌が大きく関与しでいると思われる。
    4) 以上のことから単胃動物のラットについてたん白欠乏時には多くの尿素がアンモニアに分解され, それは腸管から吸収される一方, 一部のアンモニアは腸内細菌によりアミノ酸に合成され肝臓に運ばれ, いずれも体内でたん白質に合成される経路のあることが示唆された。おわりに終始ご懇篤なご指導, ご鞭撻を賜わりました兵庫医科大学吉村寿人名誉教授ならびに堀清記教授に厚くお礼申しあげます。
  • とくに胆汁酸に関連して
    遠藤 幸子, 綾木 義和
    1982 年 35 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    「うるか」中の苦味物質と胆汁酸との関係を追究するため, 「うるか」中の胆汁酸を薄層クロマトグラフィー, ガスクロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリーによって分析し, また「うるか」から抽出した総胆汁酸画分について苦味に関する官能検査を行なって次の結果を得た。
    1) 「うるか」中の胆汁酸成分としてコール酸およびタウロコール酸を同定した。
    2) 「うるか」中にはコール酸が17.5×10-4M, タウロコール酸が5.5×10-4Mの濃度で含まれていた。
    3) 鮎の新鮮胆 胆汁中にもタウロコール酸のほかコール酸が証明された。
    4) 味覚に関する官能検査において, 「うるか」から抽出した総胆汁酸画分の苦味の弁別閾値はコール酸濃度 (遊離型: タウリン抱合型=17.5: 5.5, モル濃度比) として8×10-4M, 標準胆汁酸混合物 (同じ組成比) のそれは4×10-4Mであった。また, コール酸およびタウロコール酸については, それぞれ8×10-4Mおよび4×10-4Mであった。
    5) 「うるか」の総胆汁酸画分の精製を進めると, それに従っで苦味が増強した。
  • 北條 祥子
    1982 年 35 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    Glucosylsucrase (G2F), maltosylsucrose (G3F) 等の混合物であるcoupling sugarは虫歯を誘発しにくい代用糖 (低う蝕性甘味料) として期待されている。代表的なう蝕誘発菌であるStreptococcus mutansはG2F, G3Fを代謝しにくく, これらの糖からほとんど酸生成をしない。
    本研究ではS. mutansが長期間G2F, G3Fと接触することによりこれらの糖質への適応現象が生ずるか否かを検討し, S. mutansのこれらの糖質の代謝機構を調べた。
    1)S. mutrans strain GS 5はcoupling sugar含有培地中で長時間連続培養 (200時間) およびG2F, G3F含有培地中で長時間 (72~100時間) 静置培養すると増殖した。しかし, 菌の収量はglucose培養菌の約1/2であった。
    2) 適応菌ではG2Fの代謝能が上昇し, G2Fからglucoseやsucroseとほぼ同程度の速度で酸生成した。
    3) 適応菌ではG2Fの膜透過系であるphosphoenol-pyruvate依存性のphosphotransferase systemの誘導がみられた。
    4) 可溶性, 顆粒性および菌体外酵素画分における糖質水解活性を調べた。適応菌では可溶性画分のmaltaseの誘導がみられた。しかし, いずれの画分においてもsucrose, G2FおよびG3F水解活性の上昇および粘着性グルカン合成酵素であるglucosyltransferase活性の上昇は認あられなかった。
    5) この菌のinvertaseはPi依存性であるがG2F, G3Fの水解はPiに依存しなかった。G2Fの水解後にはfructoseがglucoseの約3~6倍多く遊離し, maltoseの生成がみられた。
    以上の結果よりS. mutansは長期間coupling sugarおよびG2F, G3Fと接触するとこれらの糖質に適応してこれらの糖質の代謝能が上昇するが, これは糖質のとり込み系であるPTSが誘導されるとともに, 糖質の水解酵素であるmaltase等が誘導され, これらの糖質を利用し易くなったためと考えられる。
  • 北條 祥子
    1982 年 35 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本研究では低う蝕性甘味料として開発されたcoupling sugarの主成分であるglucosylsucrose (G2F), maltosylsucrose (G3F) が口腔内常在菌のfructosyltransferaseにより分解されるか否かを検討した。
    S. salivarius 13419株のトルエン処理菌をG2F, G3Fとともに反応すると多量のfructanが生成し, 多量のfructoseが遊離した。gtucoseは遊離せず, 反応後の生成物中にmaltoseまたはmaltotrioseが検出された。
    Actinomyces viscosus Ny1株の部分精製 (40倍) した菌体外fructosyltransferaseもまたG2F (G3F) を基質として利用し, fructan, fructose, maltose (maltotriose) を生成した。反応後, glucoseは遊離しなかった。
    S. mutans JC2株の60%硫安沈澱する菌体外酵素画分によっても同様の結果が得られ, またG2F, C3Fからglucanの生成はなかった。
    以上の結果から口腔内常在菌のfructosyltransferaseはG2F, G3Fを基質として利用できることが判明し, 同酵素がcoupling sugarの分解の第1段階を触媒する可能性が強く示唆された。
  • 四十九院 成子, 福場 博保
    1982 年 35 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    6日間暗所発芽させた黒緑豆種子よりCPaseを精製し, その酵素化学的性質を検討した。
    1) 粗酵素液を硫安分画 (30~70%), Sephadex G-150ゲルろ過, DEAE-Sepharoseクロマトグラフィー, SephadexG-150再ゲルろ過, DBAE-Sepharose再クロマトグラフィーおよびTOYOPEARL HW-50Fゲルろ過を行なうことにより, ディスク電気泳動的に均一なCP-ase標品を単離した。収率は7.8%であり比活性の上昇率は110倍であった。ゲルろ過法による分子量は約7万と推定された。
    2) 精製CPaseのZ-Phe-Ala水解時における至適pHは6.0, 至適温度は50℃であった。室温2時間放置時の安定pH領域は5~8であり, 10分間熱処理時の耐熱性は50℃までに認められた。Ag+, Hg++, Cu++などの重金属類およびDFP, PCMBによって阻害された。しかしEDTA, モノヨード酢酸, 2-MEによっては影響されず, 本CPaseがセリン酵素であると示唆された。
    3) 本CPaseはpH 6.0でZ-Phe-Alaを最もよく水解し, この基質に対するKm値は1mMであった。
  • 江崎 秀男, 小野崎 博通
    1982 年 35 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1) 大根の辛味の本体であるトランス-4-メチルチナ-3-ブテニルイソチオシアナート (TMBI) の微生物に対する抗菌力をしらべたところ, TMBIはカビ, 酵母, グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌等のいずれに対しても同様に抗菌性を示し, その抗菌力は, 同時に試験した他のいずれのイソチオシアナートよりも強かった。
    2) 抗菌力測定の方法は, 寒天培地中にイソチオシアナートを混合し, シャーレに平板に流し固め, 供試菌を接種して発育の程度を肉眼で観察した。
    3) 各種イソチオシアナート類の抗菌力を上記の方法を用いて比較したところ, TMBIが最も強く, アリルイソチオシアナートの数倍であった。
    4) TMBIのチオウレア誘導体であるTMBTには抗菌力は認められなかった。この事実から抗菌性の発現には, イソチオシアナート (-N=C=S) 構造が不可欠であると思われる。
  • 齲蝕誘発能を考慮して
    松久保 隆, 石川 哲之, 真木 吉信, 高江洲 義矩, 北條 祥子
    1982 年 35 巻 3 号 p. 213-216
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    食品の齲蝕誘発能は, 食品の齲蝕誘発病に与える基質としての性質と, その基質としての性質の作用時間とで評価することが, 可能であることを著者らは提唱してきた。本報では, 食品の物理的性状によって影響されると考えられる食品の作用時間としての性質を測定することをその目的とした。
    食品の作用時間としての性質は, 摂取中の作用時間と嚥下後の作用時間とに分けられ, 前者は, 食品単位重量あたりの摂取時間で, 後者は, 食品の付着性を23種の食品について測定し, その結果から, 食品の物理的性状よりその齲蝕誘発能を評価する方法について次のような考察を得た。
    1) 従来の報告で食品の作用時間としての性質が正しく評価されていない種類の食品についても, 食品の作用時間としての性質を二つに分けて行なう本研究方法によって, その評価が可能であることが明らかとなった。
    2) 本研究方法は, 従来の方法と比較して簡単であり, 被験者間の個人差もみられない。
    3) レオメーターによる食品の物理的性状の測定は, 齲蝕誘発能の評価のための指標として有用であることが, 示唆された。
  • 河野 三津子, 趙 英子, 菅野 道廣
    1982 年 35 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    家庭用マーガリン15種, 業務用マーガリン33種, 学校給食用マーガリン5種, 業務用ショートニング26種, および健康な22~29歳の青年の血清の脂肪酸組成をGLCにより分析し, トランス型不飽和脂肪酸 (t酸) の種類と含量を測定した。
    水素添加製品中のt酸のほとんどは, t-18: 1であり, c, t-18: 2およびt, c-18: 2の割合はきわめてわずかで, t, t-18: 2はほとんど検出されなかった。t酸含量は, 家庭用マーガリンで平均13.7%, 業務用マーガリンで平均12.2%, 学校給食用マーガリンで平均15.5%, そして業務用ショートニングで平均14.3%であった。業務用製品でt酸含量が低かったのは, 強く水素添加したものが多かったため, あるいは, 原料として不飽和脂肪酸の少ない脂肪を用いたためであった。
    主として大学食堂で食事を摂っているヒト血清中のt酸含量は全脂質中では1%未満であった。各脂質画分間でわずかながら違いがあり, 遊離脂肪酸中で最も高かったが, それでも2~4%であった。
  • 岡村 正人
    1982 年 35 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 1982/06/10
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    54種類の食品について食品中の総Cを定量し, DNPH法に匹敵する特異性で測定しうる食品の範囲を検討した。この結果, 菌茸頓と紅茶以外の食品ではDNPH法による測定値とほぼ等しい値の得られることが示された。
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