米類に基因する高フィチン酸食に, CaCO
3を添加した際, フイチン酸のCa吸收阻碍作用はどの程度抑制し得るか, CaCO
3の添加量はどの位が適當か, フイチン燐の吸收は變化するか, 總燐代謝はどう影響されるか等を究明する目的で, 6人の健康成人男子に低Ca食を攝取せしめ, これにCaCO
3をCa量として1000mg添加した組, Ca量として400mg添加した組及びCaCO
3, を全く添加しない組の3組に分け, 低フイチン酸食と高フイチン酸食との比較實驗を行つた。その結果, 次の成績を得た。
1) Ca攝取量の増加に伴い, フイチン酸のCa吸収を阻碍する率は減少した。即ちCa攝取量240mgの際のフイチン酸のCa吸収阻碍率は, Ca攝取量の40~41%と推定されたが, Ca攝取量640mgの際は25~30%と推定され, 更にCa攝取量1240mgの際は17~18%と推定された。
2) フイチン燐の攝取量が, 約650mg程度の高フイチン酸食に於けるCaCO
3の添加量は, Ca量として約400mgが適當であると考えられる。
3) 糞便中にそのままの形で排泄せられたフイチン燐の排泄率は, Ca攝取量の増加に伴い増加した。即ち, Ca攝取量220~240mgの場合は13~16%, Ca攝取量620~640mgの場合は22~26%, Ca攝取量1220~1240mgの場合は30~39%であつた。
4) フイチン燐の吸收は15~31%と推定され, 又この範圍内でCa攝取量の増加に伴いフイチン燐の吸収は減少するものと推定された。
5) CaCO
3を添加した際, 高フィチン酸食時に於ても, 低フイチン酸食時に於ても共に糞便中へのP排泄量を増加し尿中へのP排泄量を減少した。
6) 高フイチン酸食と低ブイチソ酸食とでは, 一般榮養素の吸収率は, いずれも僅かに低フィチン酸食が良かつた。又, CaCO
3の添加は, 一般榮養素の吸収には何等影響を及ぼさなかつた。
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