神経理学療法学
Online ISSN : 2758-0458
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症例研究
  • 狩野 大河, 青山 敏之, 吉川 憲一, 石橋 清成, 河野 豊
    原稿種別: 症例研究
    2025 年4 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:足尖の引きずりが時折認められる脳卒中症例に対して装具装着が運動学データや筋シナジーの時空間的パターンの再現性に与える影響を明らかにすることである。

    方法:対象は脳卒中片麻痺を呈した70代女性である。快適歩行を装具有無の2条件で実施し、表面筋電図を使用して麻痺側下肢から10歩行周期の筋活動を収集した。非負値行列因子分解を用いて筋シナジーを抽出し、その時空間的パターンについて装具の有無の条件間で比較した。両条件における下肢関節角度と筋シナジーの再現性を比較するため、10歩行周期分の時系列的変化の相互相関値と、筋シナジーの重みづけのコサイン類似度を算出した。

    結果:両条件で立脚期と遊脚期に活性化する二種類の筋シナジーが抽出され、両条件間の時空間的パターンの類似度はどちらも高値を示した。下肢関節角度と遊脚期に活動する筋シナジーの時間的パターンの相互相関値は装具無し条件で有意に低かった。さらに、この筋シナジーのコサイン類似度は装具無し条件で有意に低かった。

    結論:装具装着が筋シナジーの時空間的パターンの再現性の改善を介して下肢関節運動の再現性の改善に寄与した可能性を示唆する。

症例報告
  • 平野 晋吾, 五十嵐 達也, 林 翔太, 猪岡 弘行, 加茂 智彦
    原稿種別: 症例報告
    2025 年4 巻1 号 p. 12-25
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:右視床出血症例に対し、バランス練習を含めた前庭リハビリテーションを実施し、バランス機能や浮動性めまいの改善を認めたため、ここに報告する。

    症例:右視床出血を呈した70代男性。運動麻痺や体性感覚の低下は軽度であったが、立位保持時や歩行における方向転換時にふらつきを認め、日常生活活動で常に見守りを要した。

    方法:バランス練習を含めた前庭リハビリテーションを1カ月間行った。

    結果:自覚的視性垂直位、Head Impulse Test、Mini-Balance Evaluation Systems Test、10m歩行速度、Timed Up and Go Testが改善し、浮動性めまいは消失した。重心動揺計を用いたmodified Clinical Test of Sensory Interaction and Balanceでは閉眼条件における各パラメーターの改善を認めた。日常生活活動では歩行自立に至った。

    結論:前庭機能低下を呈した右視床出血症例に対する前庭リハビリテーションはバランス機能の改善に有用である可能性が示唆された。

短報
  • 辻本 直秀, 中村 潤二, 井川 祐樹, 塩崎 智之, 生野 公貴
    原稿種別: 短報
    2025 年4 巻1 号 p. 26-32
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本研究の目的は、pusher behavior(PB)を呈した単一事例で、PBの改善と自覚的姿勢垂直位(SPV)の経過との関連性を検証することである。

    方法:対象は視床出血後に重度のPBを呈した症例である。調査期間は発症約1カ月後からPBが完全に消失するまでとした。Scale for Contraversive Pushing(SCP)、Burke Lateropulsion Scale(BLS)、Fugl-Meyer Assessmentの下肢運動機能項目(FMA-LE)、下肢の体性感覚、SPVを1週間毎に測定し、各変数間の関連性と改善時期の前後関係を相互相関解析にて検討した。

    結果:PBは発症約5カ月後に消失した。SCPとBLSの改善には有意な正の相関、SCPとFMA-LE、BLSとFMA-LEの改善には有意な負の相関を認め、いずれも改善時期の前後関係に乖離を認めなかった。一方、SCPの改善とSPV、BLSの改善とSPVには有意な相関を認めなかった。体性感覚はPB消失時まで脱失のままであった。

    結論:本症例においては、PBの改善とSPVの関連性が低いと思われた。

実践報告
  • 平松 佑一, 松木 明好, 藤本 宏明, 宮井 一郎
    原稿種別: 実践報告
    2025 年4 巻1 号 p. 33-45
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    患者報告型アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcome)は、患者の声を日常診療や臨床試験のアウトカムとして用いることを可能にする。リハビリテーション医療において、定型化された項目で構成される従来のアウトカム評価のみでは、患者個人のライフスタイルや希望に基づいた「意味のある目標(Meaningful goal)」や「意味のある変化(Meaningful change)」を考慮した目標設定や効果判定が難しいことがある。PROの一つであるGoal Attainment Scale(GAS)は、患者個人における評価項目として優先度の高い課題を自由に選択して、目標達成度を数値化することを可能にする。一方で、患者・家族および医療者によって設定される評価基準(目標達成度)の自由度の高さが尺度特性(妥当性、信頼性、反応性)に影響すること、使用方法が統一されていないことが日常診療におけるGASの活用を難しくさせている。本稿では、GASにおける目標設定と効果判定の手順および運動失調症における活用事例を提示することで、GASの使用方法を標準化することを援助するための実践ガイドを提供する。

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