NC(Numerical Control : 数値制御)工作機械は自動化機械であるが,無人運転にはいるまでの確認作業や監視作業により,生産性や品質が大きく左右される.これらの作業では,生産性を維持しつつ,同時に意図しない動作を検出することが必要なので,注意の払い方が作業者にとって重要な技能となる.本論文では,プログラムチェック時こおける注意の配分に関する解析について報告する.まず,被験者実験を行い,各作業者がプログラム内のどのような部分に多くの注意を払っているかということを観察した.つぎに,これらのプログラム部分は,プログラムの内容を反映する属性により特徴付けられ,いくつかのタイプに分類された.特定のタイプに属するプログラム部分に対して,多くの注意を払うか否かという各被験者の判断は常に一定していたので,各タイプの属性と照合することにより,各被験者の注意の払い方と各属性パラメータとの関係を得ることが出未た.すなわち,数量化理論第III類による解析により,第1軸として工程全体と現在目の前で起きていることとのどちらへ多くの注意を払うか,第2軸として計算などの論理的思考に関する事への注意配分の度合い,そして第3軸として作業効率追求のために注意対象を絞る度合いにより,各作業者の注意の払い方は特徴づけられた.そして,この第2軸と第3軸により構成される空間へのマッピングは,各作業者の技能のレベルと技能の特徴を意味した.以上の実験と解析により,一定の手法により,実験データから認知的技能のレベルや特徴を客観的にとらえることができた.さらにこのことは,産業界において,技能を習得しようとする者の得意能力と職場の要請に合わせた技能育成を可能とするものである.
抄録全体を表示