本論文ではソフトコンピューティング的モデリング手法を提案する.ソフトコンピューティングとは従来からの整合性の取れた綿密なアルゴリズムや複雑な数理モデルを用いた手法に対して, 人間らしいあいまいさを許容し, むしろそれを活かして過度な精密性の追求を避けることで扱いやすさ, 頑健性, 低コスト性などを目指す情報処理手法である.われわれもこの観点から, 視覚認知・習熟のプロセスを参考に独自のソフトコンピューティング的モデリング手法を提唱し, いくつかの応用を試みてきた.それは対象システムの特性を, 単純であいまいさのある複数の2次元の幾何学的パターン情報に置き換え, 学習によりそれらのパターンを変形していき, 最終的にそれらをファジィ的に組合せ, 対象システムのモデリングを行うもので, 視覚認知・習熟のプロセスに見られる局所的な特徴からより大局的な視覚パターンの検出や, いくつもの情報表現・処理の並列性を参考に作成された.われわれはこの手法をパターン情報による能動的学習法(Pattern Information Based Active Learning Method, 以下PBALMとする)と呼んでいる.PBALMは, 繁雑な数式や複雑なアルゴリズムは一切使用せず, 単純な操作のみによっているのが特色である.また, 上記のように対象を単純なパターン情報に分解して扱うので, パターンで表現しうる限り広い非線形性に対応でき(頑健性), 学習もそのパターンの変形というわかりやすい形態で行なえ(扱いやすさ), また一般に学習回数は少なくてすむ(低コスト性).本論文では, まずPBALMの考え方, 特性について述べ, 引き続き非線形システムである空調吹き出し口風速特性のモデルを構築し, 精度よくモデリングができることを示す.さらに倒立振子の制御問題を取り上げ, 人間の制御データを用いたPBALMの学習から, 有効な制御ルールが獲得できることを示す.
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