知能と情報
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18 巻, 4 号
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目次
巻頭言
特集:人間要素を取り込む計算知能
特集論文 : 人間要素を取り込む計算知能
原著論文
  • 前田 陽一郎, 丹羽 俊明, 山本 昌幸
    2006 年 18 巻 4 号 p. 507-518
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    カオティックサウンドは, インタラクティブアート生成システムの1つとして人工生命の分野で研究が行なわれている. これにより, 人間の予想を超える多様性と複雑さをもつ音楽をコンピュータを利用して生成することが可能である. カオティックサウンドの研究目的は, カオス理論を用いることにより, 複雑かつ可変なサウンドを作り出す有効な手法を見つけることである. しかしながら, 単純にカオスで得た数値と対応する音を演奏する場合, 人間にとってただ音が鳴るだけの不協和音となることが予想される. そこで本研究では, カオス的非同期性や全体の同期性の制御が可能な大規模カオスを用いて音の生成を行い, さらにより自然な音に感じられるよう音楽理論の要素技術の一部を導入する手法を提案する. 本システムでは, 大域結合写像 (GCM) によって音高, 音長, 音量要素を決定し, 生成した音楽に小節, 調性, 休符, テンポ, エコー, 音色などの音楽的要素が追加される. これにより生成される音は自然音, 環境音楽などの, ヒーリングミュージックのような効果が予想される. また, この手法を用いてインタラクティブカオティックアミューズメントシステム (ICAS) を構築し, シミュレーションにより生成された音の感性評価を試みたので, これについても報告する.
  • 西野 浩明, 武方 一馬, 賀川 経夫, 宇津宮 孝一
    2006 年 18 巻 4 号 p. 519-533
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文では, 3次元物体の触知を可能にする触力覚装置の最適化を, 対話型進化計算 (IEC) で支援する手法を提案する. 提案手法は, 利用する装置に関する知識やプログラミング技能を要せず, 触力覚技術に不慣れな利用者でも, 自身がイメージする触感を直観的に作成することを可能にする. 利用者は, 計算機が提示する複数の触感つき3次元モデルに触 (さわ) りながら, 自身の好みで適合度を与える. それに対して, システムが遺伝的アルゴリズムを用いて, 利用者から与えられた適合度を基にモデルの触感を進化させる. この「利用者評価とモデルの進化」を利用者が満足する触感が得られるまで繰返す. さらに, IECによる触感生成法と従来型の手動式パラメータ設定法を実装し, 比較実験をとおして提案手法の有効性を検証した.
  • 柳澤 秀吉, 村上 存, 福田 収一
    2006 年 18 巻 4 号 p. 534-544
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文では, 計算機とのインタラクションを通した, 個人の感性に基づく形状創成の計算機支援手法を提案する. これまでに, 意匠形状などの感性的なイメージを言語等で外在化困難な, 「表現として潜在的な感性 (Tacit Kansei) 」を解決する研究が活発に行われてきている. 一方, 自分自身も気づいていない, 「心理的に潜在する感性 (Latent Kansei) 」については, 意識的に議論されてこなかった. 本論文では, 後者のLatent Kanseiに注目する. 提案する手法は, ユーザの注目する形状特徴を, 計算機により推定しユーザに明示することでLatent Kanseiの喚起を促す. そして, ユーザが選択する注目特徴に基づき, 新たな形状を生成する. このインタラクションの繰返しを通して, ユーザの内省を促し, Latent KanseiおよびTacit Kanseiの両面の外在化を支援する. 注目特徴の推定には, ラフ集合理論の縮約計算を応用する. 本手法の有効性を検証するため, ユーザの感性にもとづく形状の処理に適用する. 被験者による実験の結果から, 本手法の有効性を示す.
  • 土屋 敏夫, 吉河 範彦, 松原 行宏, 岩根 典之
    2006 年 18 巻 4 号 p. 545-554
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文では, 事例から人間の状況判断知識を獲得する手法を提案し, 自動車運転時の危険予測知識の学習に応用する. 提案手法は, 属性で記述されたサンプルを適切なクラスに分類するために, 決定木を用いて知識のルール化を行う. 決定木の学習には遺伝的アルゴリズムを用いた決定木学習アルゴリズムGAD (Genetic Algorithm based Decision Tree Learning) を用いる. GADは実装時に起こるデータ数の不足やデータ分布の偏りに影響されにくい高い汎化能力を有する. 提案手法を一般道路における自動車運転時の危険判断知識の獲得に応用し, 手法の有効性について検討する. この事例は, 運転者の視覚的情報に基づき, 運転状況を属性によって定義づけ, 属性値から危険判断を行うものである. 運転状況は, 自動車, 歩行者および動的・静的障害物をオブジェクトとし, その速度や位置によって定義づける. 本研究では, 判断知識の獲得のため, 実際の運転状況に即した属性定義, 状況におけるオブジェクトの順位付けアルゴリズム, 訓練事例による決定木の学習を行う. 学習結果に基づき, 訓練事例として必要な事例数, 分類精度, 得られた決定木のサイズ等について考察する. また, ある特定の状況を想定し, 人間が判断した知識と提案手法で得られた知識を比較し考察する.
報告
書評
用語解説
学生部会ΔNGLE
博士論文紹介
一般論文
原著論文
  • ―追跡問題を例にして―
    山村 忠義, 馬野 元秀, 瀬田 和久
    2006 年 18 巻 4 号 p. 561-570
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    自律的な行動と学習を行うエージェントの研究においては, エージェントの視覚は絶対座標に基づいており, 正確な情報が入る範囲と入らない範囲に明確に分かれていた. 本論文では, 相対座標に基づき, 距離と方向に応じて見え方が変わり, 段階的に大雑把な情報しか得られない視覚を考える. 近傍では正確な情報が入るが, 距離が遠くなると情報が大雑把となり, 記号化された「近距離」や「中距離」であることしか分からず, 見えている対象物の区別もつきにくくなり, 方向も「左」「左前」「前」「右前」「右」と記号化される. これは, 人間の視覚がもつ「距離が大きくなるにつれて見えにくくなる」と「正面はよく見えるが, 左右の方向は見えにくい」という性質を反映させている. そして, マルチエージェントの標準問題としてよく用いられる追跡問題を例題にとり, このような視覚をもつエージェントがQ-learningを基にした強化学習を行うときに, 効果的な学習が行われることをシミュレーションにより示す.
  • 野本 弘平, 若松 正晴
    2006 年 18 巻 4 号 p. 571-585
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文は, 主観的視知覚を評価するための方法を示す. 円形と正方形との主観的等価面積がこの方法により評価される. この方法では, 主観的視知覚のデータはあいまいなので重み付けされ, もしこのデータ間に矛盾があればその重みは減じられる. この重み付きデータを用いて, 個人ごとの知覚はメンバーシップ関数により表現される. そしてこれらの個人ごとのメンバーシップ関数を統合することにより, 多くの人に共通した知覚がファジィ集合として得られる. この方法は, 統計的アプローチと比較して, データに強い仮定を課することはなく, また, 多くの情報を示すことができる. ヒューマンインタフェースには, 現在, ユーザに主観的満足感を提供することが求められているので, この方法は有効であり, かつ実用的である.
  • 立本 真治, 本多 中二
    2006 年 18 巻 4 号 p. 586-597
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文では, 道路交通における運転者の経路選択行動をモデル化し, そのモデルを我々が開発している微視的道路交通シミュレータMITRAMへ導入して, 道路情報の交通状況への影響を調べる. 構築したモデルは, ファジィ推論をネットワーク状に接続した構造によっていて, 不明確な要因を含む経路選択行動のモデル化に有効なことを示す.
    本モデルの検証は, 一般によく使用されているベンチマークテストを用いて行い, またシミュレーションによって経路選択に対する運転者の運転行動の違いによる渋滞への影響の仕方や交通情報の提供の有無の交通状況への影響を解析する. そしてこれらを通じて, MITRAMの適用範囲を拡大できることを示す.
  • 本多 克宏, 上杉 亮, 市橋 秀友
    2006 年 18 巻 4 号 p. 598-608
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    教師なし分類の代表例であるFuzzy c-Means (FCM) 法は, データ集合をいくつかのクラスターにファジィ分割することで多変量データの構造を捉える手法であるが, 量的な変量のみからなるデータ集合にしか適用できない. カテゴリカルデータを取り扱う際には, しばしば質的なデータの数量化が施される. すなわち, 個体と項目のカテゴリーの関連を良く表す散布図を得るために, 両者に得点を割り当てることが目的となるが, その手順は個体の得点の割り当てと与えられた得点を用いた主成分分析を繰り返すものであるとみなすことができる. 本研究では, 量的な変量と質的な変量の両方を含む混合データベースのクラスタリングに対する新たなアプローチを提案する. FCM法のクラスター中心とメンバシップの算出を繰り返すアルゴリズムに質的なデータの数量化のステップを組み込むことで, 質的な変量も量的な変量と同様に取り扱う. 数量化のステップではメンバシップとクラスター中心を考慮しながら, FCMクラスタリングに適した得点が割り当てられる.
  • 江崎 朋人, 橋山 智訓, 塚本 弥八郎
    2006 年 18 巻 4 号 p. 609-618
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    従来のファジィc-平均 (FCM) 法には確率的制約があるため, 各要素のクラスタへの帰属度の和が1になる. 他方, 可能性クラスタリングではこのような制約はないが, 得られたクラスタに依らず帰属度分布の形状が同じである. 本研究では証拠理論に基づく不確実さの指標の一つである混迷度を用いた混迷度正則化FCMクラスタリングを提案する. 提案手法では可能性クラスタリングと同様に帰属度が非加法的なクラスタが得られ, 得られたクラスタによって帰属度分布の形状が異なる性質がある. 最後に数値実験により本手法の有用性の検証をした.
  • 金久保 正明, 菱沼 千明
    2006 年 18 巻 4 号 p. 619-628
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    電話等の通信手段によって企業と顧客がコンタクトするコールセンターでは, 着信コール量に適合した要員スケジューリングが求められているが, 最繁時間帯にサービスレベル (設定時間内応答率等) を維持しようとすると, 閑散時間帯にはオーバースタッフィングが生じ, 過剰品質及びコスト高になるという問題がある. コールセンターの要員スケジューリング問題は, 時間毎の必要人員数の変動が激しい複雑かつ大規模なスケジューリング問題であり, 過去の経験に基づき人間が表計算ソフト等を用いて勤務予定を作成しているのが現状である. 本論文では, 勤務時間長等の制約条件の厳しい同問題に対し, 遺伝的アルゴリズム (GA) 及びタブー探索法 (TS) を適用し, その際に制約条件を満たさない解が発生しないような改良を加えて効果を検討した. その結果, GA及びTSで用いる簡単な評価式だけで, 最繁時間帯のサービスレベルを適度に下げ, 全体コストを大幅に削減するコールセンターの要員スケジューリングが可能となることが明らかになった. 具体的には, パラメーターフリー遺伝的アルゴリズム (PfGA), TSによる成績を比較し, さらにTSで得られた解をPfGAで改良する場合 (TS+PfGA) と, PfGAで得られた解をTSで改良する場合 (PfGA+TS) とも比較し, PfGA+TSが最も成績の良くなることを明らかにした. 提案手法は, サービスレベルとコストという相反する要素の重要度について, スケジューリングシフトの評価式の係数を調節することで自由に設定し, それに従って適応的 (アダプティブ) に準最適スケジューリングを作成することを可能とすることに, 従来の手法にはない特徴がある. インターネット社会において今後ますます企業にとって重要性の高まっていくコールセンターの効率的な運営に寄与することが期待できる.
  • 谷口 忠大, 椹木 哲夫
    2006 年 18 巻 4 号 p. 629-640
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/20
    ジャーナル フリー
    本稿ではJ. Piagetのシェマ理論における同化・調節及び均衡化・分化の概念を強化学習の枠組みに適用することにより累増的に行為概念を獲得することの出来る仕組みを提案する. この手法はただ一つの報酬チャンネルを用いた相互作用を用いてユーザや環境と相互作用する中で様々な行為を獲得していくことの出来る自律ロボットの実現を目指したものである. 提案手法は広く一般のTD学習に適用可能である. 本稿ではQ学習と双シェマモデルにおける強化学習に適用した実験例を示す. いずれの場合にも教師の明示的な指示なしに, 強化学習器を分化させ複数の行為概念を獲得することが出来る. また, この仕組みにより報酬は新規の行為を獲得させるという役割以外に, 獲得した行為を想起させるという役割を担うようになる.
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