知能と情報
Online ISSN : 1881-7203
Print ISSN : 1347-7986
ISSN-L : 1347-7986
20 巻, 6 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
目次
巻頭言
特集:「最適化問題へのアプローチ」
解説
特集論文: 最適化問題へのアプローチ
原著論文
  • 柳田 拓人, 須藤 康裕, 野中 秀俊
    2008 年 20 巻 6 号 p. 840-849
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本稿では,ウィジェットの適応レイアウト(FWL)問題に対する新しいアプローチを提案する.これは,FWLをファジィ制約充足問題(FCSP)として定式化するものである.グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の自動生成において,ウィジェットのレイアウトの最適化は最も重要な課題の一つである.さらに,モデルに基づいたユーザ・インタフェース(UI)設計の分野では,UIの論理仕様記述の要求を満たすウィジェットの中から最適なものを選択することも必要である.このウィジェット選択を伴うレイアウトを FWLと呼ぶ.FWLでは,(1)どのウィジェットを使用し,それらをどのように並べるのかを決定すること,及び,特に実行時に UI生成を行う場合,(2)そのレイアウトをある時間内に完了させることの 2点が要求される.本研究では,選択の望ましさをファジィ制約として定式化することによって,FCSPに対する既存の汎用的な手法をFWLに適用することを可能とした.そして,これによりウィジェットの選択とダイアログ・ボックス内への配置の自動化を実現した.特に,レイアウトの過程を三つのフェーズに分け,FCSPの解を求めるアルゴリズムを適用することにより,実用的な処理速度を実現した.
  • 山代 大輔, 吉川 大弘, 古橋 武
    2008 年 20 巻 6 号 p. 850-859
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    進化的計算手法は,全探索が困難な最適化問題に対して,「より良い解を,より早く」求める手法である.一方,近年の急速な計算機の発達は,この進化的計算手法の次のステージへの飛躍を可能にした.多目的最適化問題における,「より多様な解」の要求である.多目的最適化問題では,最近の計算機性能に頼ることで,数多くのパレート解が短時間で生成可能となった.これにより,獲得された多次元な評価値を持つ膨大な数のパレート解を,解析する /ユーザに効果的に呈示し,満足解の選択を支援する技術の開発が今後必要不可欠になると考えられる.本論文では,多目的最適化問題の1つである看護師スケジューリング問題において得られた多次元な評価値を持つパレート解に対し,可視化手法を適用することで,その解釈を容易にし,またユーザに対して効果的に呈示を行い,ユーザの求める満足解の選択を支援する.
  • 森重 綾太, 小野 智司, 飯間 等, 中山 茂
    2008 年 20 巻 6 号 p. 860-871
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    免疫アルゴリズム(IA)は,自身の持つ抗体産生機構と自己調節機能により大域的最適解を含む複数の準最適解を発見するアルゴリズムである.本論文では,代表的な最適化問題の一つであり,IAの有効性が検討されていないビンパッキング問題(BP)に着目する.BPを対象とした IAを提案し,BPにおける IAのパラメータ設定方法,および IAの探索性能について検証を行う.評価実験の結果から,遺伝的アルゴリズム(GA)では最適解を発見することが困難な問題において,IAは最適解を発見できることを確認した.
  • 和久屋 寛, 宮崎 真梨
    2008 年 20 巻 6 号 p. 872-882
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    近年提案された仮想磁場漸弱法とは,ホップフィールドネットワークとスピングラス理論の類似性に着目した組み合わせ最適化問題の新しい解探索法である.これは,外部磁場を徐々に弱めることで安定なスピン配列を実現するという物理学世界の思考実験をホップフィールドネットワーク世界に導入したもので,対応するニューロン閾値を仮想的な磁場パラメータとみなして制御し,最適解を求めようとする非常に簡便な手法である.先行研究によれば,仮想磁場パラメータの導入で正答率が改善するとの報告があるものの,その極性反転(負値→正値あるいは正値→負値)が重要であるとの指摘もあり,これまでのところ,その詳細については不明なところが多い.そこで本論文では,これまでの経緯を含めて問題点を整理したうえで,Nクイーン問題やナンバー・プレイス問題を取り上げ,さらに複数の仮想磁場パラメータ設定法を用意して,その検証を行った.その結果,いずれの課題においても,仮想磁場パラメータの極性反転が正答率改善に結び付いていることを確認し,その有効性を明らかにした.
解説
報告
書評
用語解説
学生部会ΔNGLE
一般論文
原著論文
  • 加納 政芳, 伊藤 英則
    2008 年 20 巻 6 号 p. 909-920
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本稿では,多出力二分決定グラフ(n-BDD)を利用したロボットの行動則の獲得手法を提案する.BDDは,論理関数の表現方法の1つであり,LSIの設計や,CADシステムのモデル検査などに利用されている.森脇らは,出力を複数持つ BDDを遺伝的プログラミングによって進化させる手法 n-BDDを提案し,これを食物連鎖の進化シミュレーションに用いることで,シミュレーション環境内で植物・草食動物・肉食動物の疑似生態系を実現している.しかし,この手法は,進化の過程では,BDDにおける変数順序の変更は認められておらず,疑似生態系の構築のために有用な変数順序を評価していた.そこで本稿では,この問題を回避するために変数順序を動的に決定できる新しい遺伝的操作を提案する.また,ロボットの行動則獲得のために交叉演算を導入する.実験では,ロボットの行動則獲得シミュレーション実験を行い,本手法の有効性を確認した.
  • 古田 均, 野村 泰稔, 中津 功一朗, 福原 冴里
    2008 年 20 巻 6 号 p. 921-933
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    近年,構造物の大規模化が進み,超高層ビルの建設が盛んに行われている.さらに,我が国は世界有数の地震,台風などの常襲地帯であることから,構造物の安全性や信頼性を確保するために,構造物の振動制御は重要な問題である.そこで,近年注目されている制御法の一つにファジィ制御がある.一般に,ファジィ振動制御では,振動に対して一番影響力の強い頭頂部に制御装置を設置し,ゲイン係数値を最適化し,基礎からの各層の相対応答変位・加速度を同時に低減化することを目的としている.しかし,ゲイン係数値を最適化しても,制御装置のある頭頂部については効果的な制御結果が得られるが,制御装置付近以外の層の応答加速度の低減は難しく,また,地震波の特性によっては上層以外の応答変位の制振効果も低下することがある.本研究では上述した問題を解決するために,構造物に対して制御装置を分散的に配置することを提案する.しかし,経済的な面を考えると,全層に制御装置を配置するのは現実的ではなく,本研究では設置コストと制御装置のコストを考え,予算制約下で設置する層とその制御装置の大きさ,さらに,前件部メンバシップ関数のゲイン係数を同時に最適化することを試みる.その際,発見的最適化手法であり,連続値最適化問題に対して有用である Particle Swarm Optimization(PSO)を用いる.数値計算例として10自由度構造物モデルに対する最適化を行い,地震応答解析を通じて提案手法の有用性について検討する.
  • 奥嶋 政嗣, 秋山 孝正
    2008 年 20 巻 6 号 p. 934-943
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    都市道路網において有効な交通安全対策を実施するためには,交差点の交通安全性の評価が極めて重要である.特に都市道路網では交通流動変化や交通安全対策の実施など時間的・空間的な複雑な条件変化から交通事故多発交差点が特定される.さらに交通事故の詳細原因解明には経験的専門的知識が必要となる.このため本研究では,経年的な条件変化と交差点条件に基づく交差点安全性の推移をニューロ的ファジィモデルにより知識ベース化する.一方で交通安全対策の経年的効果の低下など安全性評価指標の内包する設定値を実証的に決定する必要がある.このためニューロ的ファジィモデル規定のための設定値をGAにより最適化する2重構造の推定手順を提案する.本モデルの構築により,時間的空間的な変化を踏まえて,高精度な交差点群の交通事故推計が可能となる.最終的に交通事故頻度と経済的損失を踏まえた妥当な交通安全対策立案のために有益な資料が提供される.
  • 加藤 浩介, 坂和 正敏, 片桐 英樹
    2008 年 20 巻 6 号 p. 944-951
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本論文では,優先権の異なる二人の意思決定者(DM)が存在する階層システムの不確実環境下での最適化について考察する.具体的には,このような階層システムの最適化モデルである2レベル線形計画問題の制約式の右辺が確率変数である場合を考え,2レベル単純リコース問題として再定式化する.この2レベル単純リコース問題に対して,二人の意思決定者の協力関係の仮定の下で上位レベルの意思決定者との対話により下位レベルの意思決定者の満足度とのバランスを考慮した上位レベルの意思決定者の満足解を導出するという対話型ファジィ計画法の適用を試みる.
  • 増田 寛之, 久保田 直行
    2008 年 20 巻 6 号 p. 952-962
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本論文は,パートナーロボットが状況に適した知覚を実現するために,生態心理学における知覚-行為循環の概念に基づいた知覚システムを提案する.パートナーロボットのように自律動作可能なロボットは,環境を計測するために多種多様なセンサを搭載しており膨大な情報を計測することが可能である.しかし,人間のように柔軟な行動を実現するためには,膨大な情報の中から瞬時に直面する状況に適した情報を知覚しなければならない.本研究は,ロボットが人間のように柔軟な知覚-行為を実現するために,人間の知覚システムに着目し,生態心理学の分野で提唱されている知覚-行為循環の概念に基づいたロボットのための知覚システムを構築する.具体的には,網膜構造に基づく中心視モデルと知覚-行為循環に基づくスパイキングニューラルネットワークを用いた手法を提案し,測域センサを用いたパートナーロボットの人間追従実験を通してロボットの知覚システムについて検証した.実機実験を通して,知覚のための構造を用意することで必要な情報を直接的に知覚することが可能であり,スパイキングニューラルネットワークを用いることで予測に基づく知覚の実現とノイズに対する耐性向上を示した.
  • 小西 美和子, 畑 豊
    2008 年 20 巻 6 号 p. 963-971
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本論文では,手術後に発生する褥瘡予防を目的とした看護ファジィエキスパートシステムを提案する.まず,手術後の褥瘡発生要因に関するエキスパート看護師の経験的知識を述べた.次に,その内容からファジィメンバーシップ関数を決定し,看護ファジィエキスパートシステムを構築した.構築したエキスパートシステムは,これらのメンバーシップ関数を用いて計算した値の平均値によって各患者の褥瘡発生に関するファジィメンバーシップ値を決定した.本システムの評価には,10名の実際の手術患者のデータを用いて,Leave-one-out cross validation法を適用した.提案したファジィエキスパートシステムによって得られた結果は,統計的分析による先行研究結果と比べて,その精度において優れていた.
実践研究論文
  • 松村 嘉之, 大倉 和博
    2008 年 20 巻 6 号 p. 972-980
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本稿ではセル生産における自律分散的な作業現場において,作業者が持つ作業機械に関する情報について作業者機械評価表を用いて簡便に抽出することを試みる.そして,作業現場がフラットな組織に近く,リーダーが存在しない場合に,PM理論に基づく一定のリーダーシップを持つインフォーマル・リーダーを選出し,ナレッジ・マネジメントを促進する簡潔な方策を提案する.そして,実際のクリーニング工場のセル生産現場において,PM理論に基づくインフォーマル・リーダーを中心にして作業者から作業機械情報を抽出し,それに基づくナレッジ・マネジメントによって作業時間を短縮することによって,心理的見地に基づく情報共有の有用性を実証した.
学会から
会告
feedback
Top