知能と情報
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22 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集:「感情」
解説
特集論文: 感情
原著論文
  • 目良 和也, 市村 匠, 黒澤 義明, 竹澤 寿幸
    2010 年 22 巻 1 号 p. 10-24
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    現在,音声によるインタフェースに対する注目は年々高まっており,応用システムとしても,さまざまな用途のアプリケーションが開発されている.このような人間とインタラクションを行うエージェントにとって重要な機能として,人間の意図の理解,エージェントの行動の決定,エージェントの状態表出の3機能が挙げられるが,本研究では特にエージェントが自身の感情状態を表出する機能に注目する.本研究では,CGエージェント型の音声情報案内システムである「たけまるくん」に対してエージェントの感情を付与することで,より親しみやすいコミュニケーションを実現することを目指す.「たけまるくん」はユーザ発話を想定した質問文データベースを持っており,それぞれの質問文には,応答文とエージェントのリアクション動画が対応付けられている.そして音声入力からスコアリングにより質問文が選択され,リンクされた応答文とリアクション動画を出力する.本手法では,まず情緒計算手法を用いてユーザの発話内容に対するエージェントの生起情緒を計算する.次に,気分の変化を状態遷移によって表すため,心的状態遷移ネットワークを用いる.これにより気分状態はエージェントの生起情緒をもとにして心的状態遷移ネットワーク上を連続的に変化していく.各気分における固有の応答文データベースとリアクションデータベースを作成することで,質問文に対し気分によって異なる反応を返す.さらに,事前に計算され質問文に付与された生起情緒を基に気分の遷移を行う.生起情緒は,入力文,応答文,リアクション,気分の4つのセットに対して計算される.そのために,まずこのセットを人間が認識および行動したときに心の中で認識される事象を抽出し,その事象に対して情緒計算手法を適用することで生起情緒を計算する.そして,生起情緒と心的状態遷移ネットワークの遷移コストをもとに7種類の気分状態を遷移する.従来のエージェントと本手法のエージェントに対する印象を18の形容詞に対し評価した結果,本手法においては好感因子の平均得点が高く,性格に関する項目においては,「やんちゃ」や「不真面目」の項目の平均得点が従来手法に比べて高かった.使用感に関する項目では,「楽しめそう」の項目で高い平均得点を得た.本手法は従来手法より好ましい印象を与え,エージェントが性格を持っているように感じられることから,本手法に基づくエージェントに対して,ユーザがより親しみを感じているといえる.
  • 廣澤 一輝, 長名 優子
    2010 年 22 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    本論文では,ニューラルネットワークを用いた MaC モデルに基づく感情生成システムを提案する.提案システムは,感情を価値判断に用いる心のメカニズムと,選択的注意や反射・熟考のプロセスを処理する意識のメカニズムという2つのメカニズムを持つ心と意識の概念モデルであるMaC(Mind and Consiousness)モデルに基づいたモデルであり,MaC モデルの感情生成部分にカオスニューラルネットワークとボルツマンマシンを導入している.ボルツマンマシンは同じ入力に対して確率的に複数の出力を行うように学習させることができる.提案システムでは,この性質を利用することで,同じ外部入力に対しても時には違った感情が生成されるという人間らしさを実現する.一方,カオスニューラルネットワークは外部入力と履歴を考慮して学習したデータを動的に出力することができる.提案システムでは,この性質を利用して,過去の履歴を考慮した感情の生成を行い,人間らしさを実現する.計算機実験とロボットを用いた実験を行い,提案システムにおいて,外部入力のみに依存しない自然な感情生成が行えること,提案システムを実装したロボットにおいて手動で操作したロボットに近い自然な行動が実現できることを確認した.
  • 矢野 良和, 山口 淳嗣, 道木 慎二, 大熊 繁
    2010 年 22 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    人間のコミュニケーションにおいて非言語情報は極めて重要な役割を担う.人間は無意識で表現の中に含まれる非言語情報を読み取ることから,ロボットによる非言語情報の表出はユーザに情報を発信する際に有用と考える.これまでのロボットが動作により感情を表現する場合,設計者により事前にデザインされた感情を伴う動作を実行することで表現していた.しかしながらこれら動作のデザインは設計者に負担を掛けるため,膨大な量の動作を用意することは困難であった.一方でバリエーションを十分に確保できないことから感情表現が記号化し,アピール用のジェスチャとしてしか利用できなかった.そこで我々は「手を振る」や「歩く」などの動作を修正変化させることで感情表出動作を合成する手法を提案する.一般に感情動作パターンは時系列関節角度指令値として設計者がデザインする.本研究では感情を重畳させる基本動作の時系列関節角度指令値に対し,形容表現とよぶ動作修飾フィルタで修飾を行う.このフィルタは動作を「大きく」するなどの可読性の高い修飾要素で構成される.これらを程度量を変えて適用することで新しい動作パターンを獲得する.新しい動作パターンに対し官能検査実験を行うことで,生成された動作と人間が受ける印象を対応付ける.この実験を行うことで形容表現と表出感情との対応付けを行い,感情表現ルールとして抽出する.2段階の実験を経て感情動作生成に有効な感情表現ルールを獲得した.また,それらをルール獲得した基本動作とは別の動作に適用する事でルールの有効性を示した.
  • 谷 卓哉, 長谷川 浩司, 坂本 博康, 坂田 年男, 廉田 浩, 福島 重廣
    2010 年 22 巻 1 号 p. 52-64
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    本論文は正準相関分析を用いて顔表情画像から感情の程度を測定する手法を提案する.ここでは,顔表情のグレースケール画像およびその表情・感情を主観評価した値(快-不快および覚醒-沈静)との2種類の変量間における正準相関を分析する.顔表情画像に対する人の視線の動きから求めた注視特性を,本測定法の加重関数として組み込み,その有効性を述べる.また,画像のサンプル数の不足から生じる非正則な共分散データの場合,その情報を効率的に分析するために,中間変数を導入した正準相関分析の分解手法を提案する.また,ガウスカーネルによる非線形カーネル正準相関分析の効果について,線形の正準相関分析と比較し,その有効性を示す.男性と女性に分けた顔表情画像データベースに対して Leave-One-Out法による数値実験を行った結果と動画像に対する測定実験を行った結果を示すことにより,本提案法の有効性を示す.
  • 田村 宏樹, 淡野 公一, 石井 雅博, 唐 政
    2010 年 22 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    人のポーズ・歩行動作から,人の感情を識別*1することが100%の精度ではないが識別可能であるとの研究報告がなされている[1]~[3].それらの先行研究の多くは,人のバイオロジカルモーション(体の関節部分の動き)[4]をモーションキャプチャ装置で抽出し,解析することで識別を行っている.しかし,モーションキャプチャシステムは高価であることをはじめ,使用場所に制約があるなどの問題点がある.これらの研究を踏まえて,本稿では単一加速度センサを用いた感情を込めた歩行動作の識別を行うシステムを提案する.まず,提案したシステムとして人の歩行動作時の加速度情報から特徴量を抽出する.この特徴量を識別器Chain Support Vector Classifer(C-SVC)を用いて各感情ごとに識別を行った.本実験では,3名の被験者に単一加速度センサを装着してもらい中立,悲しみ,喜び,怒りの4感情を表現した歩行動作を対象とした.単一加速度センサから得られた加速度情報から,本稿で提案したシステムにより感情を込めた歩行動作の識別の実験を行い,提案したシステムの有効性を計算機実験結果より検証する.
    *1 本稿では,人が感情を推定するときに「推定」の語句を用い,計算機が感情を推定するときに「識別」の語句を用いることとする.
  • Michal PTASZYNSKI, Pawel DYBALA, Rafal RZEPKA, Kenji ARAKI
    2010 年 22 巻 1 号 p. 73-89
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    This paper presents a method for automatic evaluation of conversational agents. The method consists of several steps. First, an affect analysis system is used to detect users' general emotional engagement in the conversation and classify their specific emotional states. Next, we interpret this data with the use of reasoning based on Affect-as-Information Theory to obtain information about users' general attitudes to the conversational agent and its performance. The affect analysis system was also enhanced with a procedure for analysis of Contextual Valence Shifters to help determine the semantic orientation of emotive expressions. The method is used as a background procedure during users' conversations with two Japanese-speaking conversational agents. To verify the usability of the method, the users' attitudes to the conversational agents determined automatically during the conversations were compared to the results of a questionnaire taken after the conversations. The results provided by the system revealed similar tendencies to the questionnaire. Therefore we can say that the method is applicable as a means of evaluation for Japanese-speaking conversational agents.
  • 多田 和彦, 矢野 良和, 道木 慎二, 大熊 繁
    2010 年 22 巻 1 号 p. 90-101
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    ロボット技術の発達により,人間共存型のロボットの研究開発が盛んに行われている.これらのロボットがユーザと活動を共にする際,ロボットはユーザと円滑に意思疎通することが望まれる.ユーザの状態推定手法の一つとして,音声からユーザ感情を推定する手法が関心を集めている.既存の感情判別手法では,単語発話から抽出した韻律特徴や声質特徴に対応する感情の判別を行う.これらの特徴には話者の個人性も反映され,同一の感情での発話であっても話者によって特徴量の分布域が異なる.不特定話者の感情を判別する際には,特徴に含まれる個人差が判別器に強く影響を及ぼし,感情判別率の低下を引き起こす.一方で同一の話者においても異なる感情音声の特徴量が類似する場合がある.この場合,特徴空間において異なる感情音声の特微量分布が重複した領域ができ,この領域に入力された未知感情音声に対しては感情を判別できない.それらの結果,特徴量の個人差や感情分布の重複に耐性のある感情判別手法が求められている.本論文では,感情遷移時の韻律特徴の変化に基づいて感情遷移を判別する手法を提案する.話者の感情に応じて韻律特徴のモードも変化すると考え,感情遷移時に表出する韻律特徴のモード変化の検出により感情遷移を判別する.重複領域に入力された未知感情音声であっても,モード変化の有無により感情遷移の有無を判別することができる.本論文では,“関心”の感情を起点とした,“共感”,“歓喜”,“疑問”,“嫌悪”への4つの感情遷移を取り扱った.それぞれの感情遷移において韻律特徴のモード変化を抽出し,それによる感情遷移判別を試みた.正規化手法との判別率の比較により,提案手法の有用性を示した.
報告
書評
用語解説
一般論文
原著論文
  • 秋山 孝正, 奥嶋 政嗣, 小澤 友記子
    2010 年 22 巻 1 号 p. 110-120
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    都市交通計画のために,個人の交通行動メカニズムから都市交通現象を解明しようとするアプローチとして「交通行動分析」が進展している.このような個人単位の交通行動記述において,「目的地選択行動」のモデル化を検討する.段階的な交通行動解析において,適切な目的地選択モデルの構築は,空間的なトリップ構成を規定する意味で交通行動分析上の重要性が高い.本研究では,ファジィクラシファイアシステムを用いた「目的地選択モデル」について構成方法と実証的な分析結果を紹介する.このとき,ファジィクラシファイアシステムの基本構成を定式化して,実証的なデータを用いてメンバシップ関数のパラメータを設定した.さらに,本研究で提案した「目的地選択モデル」と従来型のモデルを比較するため,交通行動者の目的地の的中程度を検討した.この結果,学習機能をもつファジィクラシファイアシステムを導入したモデルによって,交通行動者の目的地の推計精度が向上することが確認できた.また,提案した目的地選択モデルを導入した交通行動モデルを用いて,現実的な交通行動パターンの妥当性が向上することを確認した.このような分析結果を踏まえて,推計精度の高い交通行動モデルを構成するための,提案した目的地選択モデルの交通行動推計上の優位性が示された.
  • 盛多 亮, 鬼沢 武久
    2010 年 22 巻 1 号 p. 121-134
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    本論文では,動きを伴う文字の映像表現であるフレーズアニメーションを,形容詞・形容動詞を用いて生成する手法を提案し,その性能を評価する.提案手法は,印象推定,テンプレート動画選出,ユーザ評価による動画再構成の3パートで構成される.印象推定処理では,入力される形容詞・形容動詞の印象をフレーズアニメーションの印象因子で推定する.テンプレート動画選出処理では,推定された印象を表現するテンプレート動画をデータベースから選出し,ユーザに提示する.ユーザ評価による動画再構成処理では,提示される動画にユーザが評価を与え,評価に応じてフレーズアニメーションが再構成される.被験者実験によって提案手法の性能を検証し,ユーザが満足し,かつ鑑賞者が形容詞・形容動詞の印象を感じ取れるフレーズアニメーションが生成できていることを示す.
  • 大久保 茂, 南山 文一
    2010 年 22 巻 1 号 p. 135-141
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    アレーアンテナの指向性において,メインビームの方向に対して非対称の等サイドローブ指向性を得る手法は複数提案されているが,それらの手法はテイラー分布を用いた手法であり,他の指向性への適用範囲が狭いことが挙げられている.本論文では,アンテナの指向性において指定した方向で設定したレベルをとるレベル制御と,設定した方向でサイドローブレベルが極値となるサイドローブ制御の給電振幅と移相量が同時に等しくなるとき,非対称の等サイドローブ指向性が理論的に得られると考え,アレーアンテナのアンテナ素子への給電振幅,移相量を制御して非対称にサイドローブレベルが等しい指向性(非対称の等サイドローブ指向性)の手法を提案している.本手法では.このレベル制御とサイドローブ制御を用いた本手法は,複雑な手順を要せず,他の指向性制御にも適用が可能である.本論文ではアレーアンテナの中心に対して各アンテナ素子への給電振幅は対称に,移相量は逆位相にして理論式の簡略化を行い,さらに計算時間の短縮を図るために,最適化法の一つである遺伝的アルゴリズム(GA)を用いている.
ショートノート
  • 福島 誠
    2010 年 22 巻 1 号 p. 142-147
    発行日: 2010/02/15
    公開日: 2010/05/21
    ジャーナル フリー
    焼きなまし法,局所探索法および大洪水法を組み合わせたハイブリッドアルゴリズムを大学時間割問題に適用した実験結果を報告する.このハイブリッドアルゴリズムでは,ソフト制約の一部を満足させながら時間割の実行可能解を焼きなまし法と局所探索法で求め,ソフト制約については大洪水法を適用して局所解からの脱出のために複数のパラメータを導入する方法を提案した.ベンチマークとして提供されている大学時間割問題について得られた実験結果を他の報告例と比較すると,提案した方法ではこれまでの報告例よりもソフト制約の違反数を低減できることが確認された.
学会から
会告
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