知能と情報
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22 巻, 6 号
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目次
巻頭言
特集:「知的インタラクション」
解説
特集論文: 知的インタラクション
原著論文
  • 石野 亜耶, 難波 英嗣, 竹澤 寿幸
    2010 年 22 巻 6 号 p. 667-679
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,自動的に観光情報を収集するための手法を提案する.我々は観光情報を収集するため,ブロガーが日記形式で綴った旅行記である旅行ブログエントリに焦点を当てた.多くのブロガーが旅行記をこの形で記述するため,旅行ブログエントリは観光情報を得るための有益な情報源であると考えられる.まず本研究では,ブログデータベースから旅行ブログエントリを検出した.その中から観光情報として土産物情報と観光名所情報を抽出する手法を提案した.更に,旅行ブログエントリからリンクを抽出することで,観光情報リンク集の構築を行った.また実験により提案手法の有効性を示した.旅行ブログエントリの検出に関しては,再現率 38.1%,精度 86.7%を得た.また,旅行ブログエントリからの観光情報の抽出においては,抽出された上位 100 件の土産物において精度 74.0%,観光名所において精度 71.0%を得ることができたため,旅行ブログエントリは観光情報の有益な情報源であるといえる.旅行ブログエントリからの観光情報リンク集の自動構築においても,高い精度・再現率を得られており,提案手法の有効性を示すことができたと言える.
  • 高間 康史, 小井沼 岳
    2010 年 22 巻 6 号 p. 680-690
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本論文では,電子掲示板(BBS)のスレッドにおける話題とその遷移を,投稿を読むことなしに把握することを可能にする,情報可視化技術を用いたインタラクティブな情報提示手法「視覚的要約」を提案する.近年,Webからは多種多様な情報が入手可能であるが,その中でもBBSやブログ,SNS(Social Networking Service)などのCGM(Consumer Generated Media)により供給される個人の感想や意見などの情報は,Webに特有のものであり,企業のマーケティングや,個人の観光や購買における意思決定などに有効な情報源として重要視されている.BBSスレッド中で言及される話題の時間的変化,話題の言及のされ方の時間的変化といった話題遷移も有益な情報であるが,各スレッドに含まれる多数の投稿を人手で読むことは困難であり,スレッドの進行に伴う話題遷移を可視化し,把握を支援することが重要と考える.本論文で提案する視覚的要約は,共起キーワードの時間的変化に着目し,アニメーションにより提示することで話題遷移を可視化する.また,着目する話題や投稿時期をユーザが対話的に指定し,探索的にスレッドを分析するインタラクティブ性も備える.提案手法をプロトタイプシステムとして実装し,被験者実験を行った結果より,提案する視覚的要約が話題遷移パターンの判別や話題の推定に有効である事を示す.また,被験者行動を分析し,投稿を読む場合と同様の手がかりを用いて分析を行っていること,および被験者によらず一定の合理的な分析手順が存在することを示す.
  • 山中 努, 田中 祐也, 土方 嘉徳, 西田 正吾
    2010 年 22 巻 6 号 p. 691-706
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    近年,GPS機能付きの携帯電話や,マイクロブログなどの手軽な情報発信サービスの普及により,時空間情報を伴うテキストデータ(メッセージ)が増加しつつある.本研究では,公園などの施設の管理者や自治体の防災センターの職員などが,上記テキスト情報を用いて管理区域の状況把握を行うことを支援するシステムを提案する.提案システムでは,メッセージを決まったカテゴリに分類する自動分類,類似するメッセージを集約するクラスタリング,メッセージが通常より密に発生していることを検出するバースト検出の3つの機能を備えている.万博記念公園で被験者120人に,現場の状況を携帯メールでサーバに通知してもらう実験を行い,時空間情報を伴うテキストデータを収集した.このデータを用いて,提案システムの評価を行った.
  • 桝井 文人, ジェプカ ラファウ, 木村 泰知, 福本 淳一, 荒木 建治
    2010 年 22 巻 6 号 p. 707-719
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    論文では,クエリ語に対して説明文や定義文を回答する代わりに,WWWから収集した断片知識を使って比喩的に素描する手法を提案する.提案手法は,直喩表現を生成する指標パターンを利用して,WWWから大量の名詞句の関係を収集する.そしてこれらの情報に基づいて,デスクリプタと呼ばれる,クエリ語を描写する断片知識を獲得する.各デスクリプタの一般性と局所性を考慮してその記述力を推定し,これに基づいてランキングして視覚化する.さらに,比喩的関係が持つ性質と複数の定型パターンによる知識獲得技術を組み合わせることによって,獲得したデスクリプタ集合を上位語,属性語に分類する.ユーザは視覚化された比喩的素描を見ることによって,連想的にクエリ語の意味を把握できる.提案手法の有効性を検証するために,実装システムMurasakiを構築し,いくつかの評価実験を実施した.その結果,基本性能については,bag of wordsを用いるよりもかなり有効であることを確認した.また,検索サイトにおける注目キーワードに対する応答性能では,汎用辞書の性能を大きく上回り(60%の適合率),新語や固有名詞に対して非常に有効であることがわかった他,ランキング性能(74%のMRR)や分類性能(63%の成功率)についても有効性が確認できた.さらに,獲得するデスクリプタの網羅性を安定させれば,比喩的素描によってWikipediaに近い効果が得られる可能性(81%のヒット率)を持つこともわかった.この結果は,我々が提案する比喩的素描による表現手法が,説明文や定義文の代わりに機能する可能性を示したとともに,既存の汎用辞書には対応できない新語や固有名詞に対しても有効であることを示している.
  • 田中 美里, 廣安 知之, 三木 光範, 佐々木 康成, 吉見 真聡, 横内 久猛
    2010 年 22 巻 6 号 p. 720-732
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本稿では,対話型遺伝的アルゴリズム(interactive Genetic Algorithm: iGA)の解候補が既に存在する対象問題において,解候補の表現型が分布する空間(表現型空間)を自動生成する手法を提案した.提案手法では,既存の解候補間の関連度を用いることで,iGAシステムの開発者側が各解候補へのラベル付けなどの作業を行うことなく,自動的にiGA探索の探索に必要な空間を構築する.解候補の関連度の算出には,Web上に蓄積された嗜好情報を利用する.現在,ショッピングサイトやソーシャルブックマークなどWeb上のサービスには,多数のユーザの行動履歴が集積されており,その中には感性や嗜好に基づく情報が含まれている.本研究では,これらの情報を集合嗜好と呼ぶ.ユーザはこの集合嗜好から生成された空間内で,iGAによって最適解の探索を行う.提案手法の有効性を検証するため,ユーザの購買行動を反映しているとされる商品間の関連度をショッピングサイトから集合嗜好として取得し,表現型空間を生成した.生成した空間の特徴を検証することで,空間の自動生成が可能であることを確認した.また,ショッピングサイトを模擬したiGAシステムを構築して被験者実験を行い,表現型空間から生成した設計変数空間上において,被験者が自身の嗜好に基づいた探索を行うことを確認した.
  • 松村 真宏, 市橋 歩実
    2010 年 22 巻 6 号 p. 733-743
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本論文では,誰もが地域に関する情報を書き込み,他者と共有することができる「らくがきマップ」を呼ぶ地図型コミュニケーションツールを提案した.らくがきマップに対する住民の反応およびらくがきマップを介したコミュケーションや意識変化に関する示唆を得るために3つの実証実験を行った.らくがきマップの形跡調査,参加者の行動観察やインタビュー,アンケート調査の結果,らくがきマップは小学生から高齢者まで世代を超えた幅広い年代に利用され,住民の地域情報の発信・共有のニーズが十分にあることを明らかにした.また,住民の書き込みによってらくがきマップが作られるという住民主導型の参加スタイルが,住民に自らのまち情報を振り返るきっかけを与えたり,地域への愛着を高めることを示した.
特集:「オンラインゲームと知能情報処理」
解説
解説
報告
学生部会ΔNGLE
書評
用語解説
一般論文
原著論文
  • 市橋 秀友, 野津 亮, 本多 克宏
    2010 年 22 巻 6 号 p. 792-803
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本論文では,セミハードクラスタリングに基づくファジィc平均(FCM)識別器を大規模データに適用する際の課題や改善法について検討する.大規模データには,訓練データが大量である場合と特徴量(変数)の次元数が非常に大きい場合がある.データが大量である場合にはランダムなサンプリングでデータ数を削減することができるが,識別精度が悪くなることがある.特に利用可能な既知データに対する精度は低下する.提案のFCM識別器は分散共分散行列を用いるために,データ件数が増えても行列のサイズは変わらない.そこで,まず最も高性能な識別器の一つであるサポートベクターマシン(SVM)を用いた計算結果や改良SVMの文献での報告との比較から,FCM識別器は大量データの場合もSVMと同程度の識別精度を達成していて,訓練時間とテスト時間において大幅に優れていることを報告する.FCM識別器は特徴量の次元数が比較的小さいか主成分分析(PCA)などで圧縮して用いる場合には訓練データが大量でも短時間で訓練が収束する.しかし,特徴量の次元数が大きい場合には分散共分散行列のサイズが大きくなり計算不可能となる.そこで,訓練データ数は比較的少ないが特徴量の次元数が非常に大きい場合に,特徴量の次元を圧縮することなく通常のパーソナルコンピュータでも計算可能な改良アルゴリズムを提案する.高次元データの例としてCOREL画像データの分類問題を取り上げて,PCAによるデータ圧縮を用いる場合や文献で報告されている結果との比較を行う.
  • 池水 孝幸, 小野 智司, 森重 綾太, 中山 茂, 飯村 伊智郎
    2010 年 22 巻 6 号 p. 804-817
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    アントコロニー最適化法(ACO)は,蟻の群による採餌行動を模擬したメタヒューリスティクスであり,巡回セールスマン問題,スケジューリング問題など多くの組合せ最適化問題でその有効性が確認されている.近年,0-1整数計画問題(0-1IP)にACOを適用するBinary Ant Colony Optimization(BACO)と呼ばれる方式が提案されている.BACOではACOと同様,探索領域の集中化,多様化を調整する方式を採り入れることで探索性能の改善が期待できるものの,これまでの研究では,集中化,多様化を積極的に調整するBACOが提案されていない.本研究では,女王蟻戦略ASqueenをBACOに組み入れたBASqueenを提案する.BASqueenは,グループ化された働き蟻の集団により多様な探索を行い,女王蟻が働き蟻に指令を送ることで探索領域の多様化,集中化を調整するため品質の高い解の発見が期待できる.0-1ナップザック問題を対象として実験を行い,提案するBASqueenが,他のBACOアルゴリズム,焼き鈍し法,粒子群最適化法などよりも高い探索性能を示すことを確認した.
ショートノート
  • 上西 孟介, 中島 智晴, 藤本 典幸
    2010 年 22 巻 6 号 p. 818-823
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    本論文では,パターン識別におけるファジィIf-Thenルール生成の高速実装法を提案する.提案手法では,GPGPUを使用した並列計算を活用することにより,計算時間の短縮を図る.GPGPU開発環境CUDAには,行列演算を実装したライブラリが同梱されており,ライブラリのソースコードが一部公開されている.これをファジィルール生成過程における学習用パターンと前件部ファジィ集合へのメンバシップ値計算に応用することにより,従来法では直列で行われていた計算を並列化させることができる.数値実験では,様々な次元数やパターン数のパターン識別問題に対してファジィルール生成に必要な計算時間を比較し,提案手法によるファジィルール生成法により,計算量が多くなるほど計算時間が従来手法より短くなることを示す.
  • 藤本 和則, 玉置 了
    2010 年 22 巻 6 号 p. 824-831
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル フリー
    消費者の購買意図に影響を与える情報として,eクチコミ情報が注目されている.従来研究からは,消費者が商品に対してあらかじめもつ評価(初期態度と呼ぶ)と整合しない内容のeクチコミ情報の効力は制限されることが知られている(初期態度による制限効果と呼ぶ).本論文では,初期態度を商品へと商品属性への二つのレイヤに分けて捉え,初期態度による制限効果に関する仮説を構築し,定量調査により検証した結果について述べる.企業が提供するプレスリリースからデジタルカメラへの初期態度を形成させた後,各商品属性に関するeクチコミ情報を提示して,購買意図の変化を調べる形で調査票を設計した.大学生152名への定量調査から得られたデータを使って,消費者の「商品への初期態度」と「商品属性への初期態度」の二つの要因について2要因分散分析を行った.この結果,初期態度による制限効果に関して構築した三つの仮説が支持された.
学会から
会告
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