知能と情報
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25 巻, 5 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
目次
巻頭言
解説
書評
用語解説
  • 松下 光範
    原稿種別: 用語解説
    2013 年 25 巻 5 号 p. 159
    発行日: 2013/10/15
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    コミック工学(Comic Computing)とは,コミックを対象としてそれを工学的に利用するための技術の総称である.タブレットやスマートフォンなどの電子端末の普及に伴い,電子コミックが急速に普及しつつあるが,現状では紙媒体のコミックをそのままスキャンして電子化しただけの作品が主で,電子コミックであるという利点や電子端末を用いて閲覧するという特徴を活かした作品はまだ少ない.コミック工学では,ICT技術を用いてコミックコンテンツの利便性や可能性,表現力を拡張することを目指している.更に,コミック制作の支援やコミックで用いられる表現方法の他用途への援用などもその視野に含まれている.

    コミックコンテンツは台詞や効果音といった文字情報と,キャラクターや効果線,背景といった画像情報から構成される,いわばクロスモーダルなコンテンツである.特に,新聞記事などのテキストを主体とした媒体とは異なり,台詞などの文字が絵のなかに配置され,それらが相補的かつ協調的に機能し,ストーリーを構成する点に特徴がある.こうしたコンテンツを操作したり加工したりするためには,予めコミックの内容を解釈してコミックを構成する要素を抽出し,それらをコード化・構造化して蓄積しておく必要がある.これらの研究は,これまでは画像処理や知識処理など様々な分野で,各々の文脈の下進められてきた.コミック工学が狙うのはこうした分野を跨った研究の創出や連携の促進である.このような目的の下,異なる専門性や研究分野の研究メンバが効率的かつ効果的に協同できるように,コミックコーパスの整備やデータフォーマットの共通化,議論の場の醸成などを進めていくことがコミック工学の喫緊の課題である.

  • マッキン ケネスジェームス
    原稿種別: 用語解説
    2013 年 25 巻 5 号 p. 159
    発行日: 2013/10/15
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    触力覚インタフェース(Haptic Inteface)は,人間の皮膚への触覚あるいは手などへの力覚を用いて,ユーザに対して情報を提示するインタフェースあるいはデバイスのことである.力覚を提示する力覚ディスプレイ(Force Display)と触覚を提示する触覚ディスプレイ(Tactile Display)に大きく分類することができる.身近な応用としては,携帯電話のバイブレータなどは力覚ディスプレイとして,着信通知などに利用されている.その他,力覚ディスプレイの応用として,航空機の操縦桿へサーボモータを利用し,操縦士への力覚フィードバックを通じて,飛行状態の異常を提示するのに利用されている.触覚ディスプレイの代表例としては,点字ディスプレイなどがある.

    仮想現実(Virtual Reality)および拡張現実(Augmented Reality)の研究分野では,触力覚インタフェースは活発に研究されており,力覚フィードバックを行う3Dマウスや3Dペンにより,3次元オブジェクトへの直観的操作やオブジェクトの質感(重さや弾力性)などもユーザへ提示することができる.また,液晶タッチパネルと組み合わせた触覚ディスプレイなどにより,画像の変化と合わせて指へ振動や抵抗を提示することにより,直観的な操作感覚を与えることができるため,携帯情報端末への応用も進められている.

    また,疑似触力覚(Pseudo-Haptics)を応用した研究も進められている.疑似触力覚とは,主に視覚からの情報を元に,触力覚を疑似的に知覚させる錯覚現象のことである.例えば,ユーザのマウス操作が投射されたマウスカーソルなどの視覚刺激の速度変化によって,擬似的な触力覚を生じさせることができる.疑似触力覚を応用することにより,様々なインタフェースに触力覚を付加する可能性が示されている.

会告
特集:「第17回曖昧な気持ちに挑むワークショップ選抜論文」
論文概要
学会から
編集後記
特集: 第17回曖昧な気持ちに挑むワークショップ選抜論文
原著論文
  • -集合関数による表示とその解釈-
    高萩 栄一郎
    2013 年 25 巻 5 号 p. 827-833
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    AHP(階層分析法)などの加重和モデルにおける個別評価値の相対的な関係を使って代替案の特徴を表す集合関数を提案する.加重和での重要度を集合関数で表現し,乱数で多数の重要度を発生させ,各代替案の集合関数の値は,その代替案が1位になったときのその集合関数値の平均値とする.この集合関数やそのグラフを解釈することにより,その代替案の相対的な特徴を理解する.また,この集合関数とファジィ測度の関連を考察する.
  • 乃美 正哉, 本田 あおい, 岡崎 悦明
    2013 年 25 巻 5 号 p. 834-841
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    t-ノルムは,ファジィ理論などで用いられる重要な演算である.t-ノルムの定義域は,閉区間[0,1]か一般の束Lであることが多い.閉区間[0,1]以外の具体的な定義域をもつt-ノルムは,あまり議論されることがなかった.本稿では,閉領域[0,1]×[0,1]上で定義された2次元t-ノルムや多次元t-ノルムについて考察する.いくつかの例を挙げ,それらの性質を述べる.また,多次元t-ノルムの生成関数についても言及する.
  • 大木 真, 室伏 俊明
    2013 年 25 巻 5 号 p. 842-852
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
     人の意思決定構造を知り,意思決定を分析することが可能になれば,その人の本当に求める解を見つけ出すことができたり,集団による議論の円滑化を行うことが可能となる.また,悪い結果を得た場合の原因究明や,良い結果を得た場合の立役者の発見,そして今後の組織活動の改善へとつなげることが可能となる.
     集団の分析までを視野に入れた既存の集団意思決定法として,集団意思決定ストレス法があるが,この手法は2つの問題点を持つ.1つは「必ず最高格付けを得てしまう見解」が存在することであり,もう1つは「絶対評価法の意思決定問題に適用不可能」である.本論文では,これらを解決する新しい提案を示し,さらに提案手法を用いた集団意思決定分析法を提案する.
     提案する新しい手法は,集団内の各個人が持つ見解間の距離を,集団内の全メンバーで均等になるように格付け(重み付け)を調整する.見解間距離が均等になることで最終的に決まる集団案への貢献度を平等にする.貢献度が平等であれば,各メンバーの納得を得やすい.
     見解間距離均等法では,必ず最高格付けを得てしまう解は存在せず,皆の中心的見解であれば格付けが高くなり,他者から離れた見解ほど格付けが低くなる.
     さらに絶対評価法への適用が可能となり,提案手法はAHPが持つ選好順位逆転の問題に対応できる手法となった.集団意思決定の手法として,より汎用性の高い手法であると言える.
     また,見解間距離均等法では「格付け値」と「VDI」という2種類の客観的な値が得られる.格付け値が高いほど,その個人が集団内で中心的見解を示していることを示し,VDI が低いほど,その集団内のメンバーの目的認識(議論の方向性)が一致していることを示す.これらを用いることで,その集団の意思決定がどのようになされたかを分析することができる.
     本論文では,格付け値とVDI の情報から,集団を大きく4つに分類できることを示した.この分析による情報が議論を円滑にするための支援となることが期待できる.また,本分析手法は既に結論が出た事後の分析も可能である.この場合,決定した事項に対する結果が出ている場合があり,分析を行うことで,その結果をもたらした原因を探ることが可能となる.
一般論文
原著論文
  • 間所 洋和, 佐藤 和人
    2013 年 25 巻 5 号 p. 853-864
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    本論文では,対向伝搬ネットワーク(Counter Propagation Networks: CPN)の位相写像特性を用いて,教師ありニューラルネットワークの汎化能力を改善する手法を提案する.CPN の位相写像特性により,カテゴリ間の学習データがスパースな領域には新たな学習データが補間され,重複や矛盾を含む領域ではそれらが解消される.また,マッピング層のユニット数を変化させることにより,対象問題に応じて学習データ数を任意に変更することができる.CPN と組み合わせる教師ありニューラルネットワークとして,本論文では,カーネル関数を用いた高次元特徴空間への変換により高い汎化能力を示す学習アルゴリズムとして注目されているサポートベクタマシン(Support Vector Machines: SVM)を用いて汎化能力を検証する.2次元クラス分類用データセットを用いた評価実験では,学習データの位相圧縮がデータ間の矛盾解消とソフトマージンとして吸収されるサポートベクタ(Support Vectors: SV)の減少に結び付き,SVM の識別境界が変更されるとともに,汎化能力が改善することを示す.更に,顔画像の段階的な照明変動を扱う大規模データベースを用いた応用実験では,本手法による汎化能力の改善に加えて,CPN のカテゴリマップを用いることによりSVの空間的な分布に加えて,汎化能力の改善に寄与するユニットが可視化できることを示す.
  • 尾崎 新斗, 本多 中二, 内海 彰
    2013 年 25 巻 5 号 p. 865-879
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    インクドロップスプレッド(IDS)法は,ソフトコンピューティングの概念に基づき提案されたモデリング手法の1つである.IDS法では多入力1出力のモデリング対象システムを複数の1入力1出力システムに分割し,対象システムの入出力データを,分割した複数の1入力1出力システム毎に2次元平面にプロットし,イメージ情報を作成している.データをプロットする際にはインクを水面に落とす様に,データの中心を濃く,中心から離れるほど薄くプロットしている.またインクが重なる部分はより濃くすることで,一筋の経路や広がりといった特性が浮かび上がる.こうして作成された複数のイメージ情報から特徴の抽出を行い,抽出された特徴をファジィ推論を用いて組み合わせることによって対象システムのモデリングを行っている.IDS法では対象システムを分割する際に対象システムの各入力毎に分割し,さらに各入力の入力次元を分割して場合分けを行っている.IDS法の性能を向上させるためにこの入力次元の分割は重要であり,分割数,分割位置といった分割の仕方を探索するいくつかの手法が提案されている.しかし既存の手法では分割の仕方を一度には決定できず,計算時間が多く必要となる等の問題があった.そこで本論文では,IDS法が作成するイメージ情報から分割を高速に決定する手法を提案している.提案手法ではまず入力次元を分割せずに作成したイメージ情報から,分割を決定するために有効な情報を抽出,分割を決定し,さらに決定した分割を用いて作成したイメージ情報から情報を抽出し,分割を調整する手法を提案している.本論文では提案手法の有効性を示すため,既存手法として等分割手法とGAを用いた手法との比較を行っている.この手法を用いることにより既存手法と比較して,作成されるイメージ情報を減らし,精度の良い分割を高速に探索することが可能となることを示している.またIDS法以外の手法としてFeed forward Neural Network やSupport Vector Machine との比較を行い,変化の多い関数近似や,二値分類問題に対しても提案手法を用いたIDS法が有効であることを示している.
  • ジメネス フェリックス, 加納 政芳
    2013 年 25 巻 5 号 p. 880-888
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,例文を通して英単語の意味推測を支援する機能(足場かけ)を有する英単語学習システムを開発(S1)し,足場かけの使用による学習者の学習能力の変化を調査する.本機能は,学習者の要求に応じて,学習対象の単語を除いた英語例文の日本語翻訳を提示する機能である.この穴あきのある日本語翻訳をヒント翻訳と呼ぶ.学習者は,英語例文と同時にヒント翻訳を参照できるため,英語例文中で単語の意味推測を支援する「足場かけ」になると考える.実験では,英語レベルの中級者10 名と初級者10 名をS1 と既存型システム(S2)に分け,二週間学習させた.その結果,学習前後において,有意差は認められなかったものの,S1群の中級者は,S2群の中級者に比べて多くの英単語を獲得できる可能性が示唆された.また,S1 群の中級者は,日増しにヒント翻訳の使用率が減少し,足場かけなしで英語例文を通して英単語の意味を推測しながら英単語を学習するという学習能力の変化が見られたのに対し,初級者はヒント翻訳に依存してしまい,英単語を学習することができないことがわかった.
  • -人の「話したい」「聞きたい」態度が次話者を決定する仕組み-
    徳永 弘子, 武川 直樹, 寺井 仁, 湯浅 将英, 大和 淳司
    2013 年 25 巻 5 号 p. 889-900
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,3人の会話において,話者が次々と交替する順番交替の仕組みを,参与者らが表出する態度とその解釈から明らかにする.これまでの順番交替の研究は,現話者と次話者との間に交わされる発話や視線の方向など直接観測可能な情報を対象に分析されてきた.それに対し本稿では,参与者の視線や表情,しぐさは自己の内部状態が表出された態度であると捉え,態度の表出と順番交替の関係を明らかにする.そのため,順番交替の直前に表出される「話したい」「聞きたい」などの態度を評定し,続いて,次に自分が「話し手になる」「聞き手になる」役割志向態度と順番交替の関係を定量的に分析する.さらに,役割志向態度による順番交替のプロセスを事例分析する.結果,聞き手の役割を志向した参与者が次話者になる場合があるなど,表出された態度が参与者相互に解釈理解されて,場に適した順番交替が選択されていることが示唆された.この分析の結果は,コミュニケーションの構造が視線や仕草など,観測される個々の行動だけからではなく,それらを統合して解釈される態度によって検討されることが必要であることを示唆するものである.
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