知能と情報
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26 巻, 2 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
目次
巻頭言
解説
コラム
追悼
報告
書籍紹介
用語解説
  • 有田 隆也
    原稿種別: 用語解説
    2014 年 26 巻 2 号 p. 68
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    鳥類行動や交通流等に見られるように,群れの動きは複雑で興味深く,かつ普遍的である.群れの自己組織性は最適化計算や可視化への工学的応用も期待できる.一方,群れを構成する各個体は運動法則に従わずに動くので解析は容易でない.そのため,自走する粒子の集団として群れのダイナミクスをモデル化する「自己駆動粒子系」は活発な研究分野となっている.

    その先駆的研究が1980年代後半に提案された「Boids」である.仮想的な鳥は,1)近傍の鳥群の重心を向く,2)近傍の鳥群と同じ方向を向く,3)近くの鳥や障害物を避ける,という3ルールに従って移動方向を決めながら進む.各鳥は近傍だけを見て動くのに,群れとしては秩序感のあるリアルな振舞いを見せることが示された.この成果は,コンピュータグラフィックスによる群れ再現技術への応用に留まらず,自己粒子系の分野開拓の原動力となった.その後,90年代半ばに Boids を単純化した狭義の「自己駆動粒子系」が提案された.各粒子は近傍粒子の平均方向に向きを合わせて等速で動く.粒子密度とノイズの大きさに応じて,群れが一定方向を向き秩序立って動く状態とばらばらに動く状態の間で相転移することが示された.

    近年の Boids の拡張として「群れ化学」モデルがある.各粒子は Boids の各ルールの重み等のパラメータ群を独自に持つ.同一パラメータ群をもつ粒子群同士が混ざると,片方の群れの中で他方の群れが回る等の,群れ単独の動きからは予測できない振舞いが創発することが示された.一方,社会的関係性ダイナミクスのモデルへの拡張が「社会的粒子群」モデルである.社会的心理的空間を動く各粒子はゲーム理論上の戦略を状態として持ち,利得行列によって規定される粒子間力により動く向きを決定する.囚人のジレンマゲー ムの利得行列を採用した時のみ,社会的関係性の動的特性を表すと考えられる,協力戦略個体のクラスタの形成と崩壊の循環が生じることが示された.

  • 西尾 公裕
    原稿種別: 用語解説
    2014 年 26 巻 2 号 p. 68
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    「生体工学」とは,生体の有する機能や構造などを解析して,それを人工的に利用して新たなシステムを構築する学問である.生体に学ぶという点から「生体模倣技術」といった言葉も同様に用いられており,最近では生体模倣ロボットや生体模倣センサなどの研究分野もある.ここでは,生体の優れた機能に学んで新たな集積回路(ハードウェア)・センサを構築する研究分野について紹介する.

    現在のコンピュータの処理速度は非常に早く,生体機能を十分に超える能力を備えつつある.そのため,多くの工学システムを実現するとき,コンピュータが用いられる.今後は,人が行うような柔軟な処理,措置や判断などの機能を備えたシステムが必要になると考えられている.しかしながら,コンピュータを用いたシステムでは,情報を直列演算により処理するため,高速で柔軟な処理を行うシステムの実現は難しいと考えられている.生体の脳では,個々の神経細胞が超並列に情報を処理するため,瞬時に必要な措置をとることができる.そのため,生体の神経細胞が持つ超並列処理機能に学ぶことにより,コンピュータの時系列の処理では難しいとされている高速で柔軟な処理を可能にする.

    1980年代後半から,多くの研究者らは,生体に学んで視覚機能を有する集積回路・センサを提案してきた.その中で,網膜に基づくエッジ検出回路や動き情報の生成回路,昆虫の視覚システムに学んだ動き(方向・速度)検出回路などが提案された.近年,集積回路の微細化に伴い,高解像度・低消費電力な集積回路・センサも多く提案されてきている.さらに,聴覚機能や嗅覚機能に学んだセンサなど,生体に基づく多機能のセンサも提案されている.生体の情報処理に基づく集積回路は,将来的に,ロボット用センサ,防犯システム,監視システム,移動体の衝突防止システムなどへの応用が期待され,我々人の生活にとって極めて役に立つと考えられる.

会告
特集:「福祉と知能情報処理」
論文概要
学会から
編集後記
特集論文: 福祉と知能情報処理
原著論文
  • Naotake KAMIURA, Ayumu SAITOH, Teijiro ISOKAWA, Nobuyuki MATSUI, Hitos ...
    2014 年 26 巻 2 号 p. 559-572
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    In this paper, a method of determining examinations is presented for new outpatients visiting the department of ophthalmology, using support vector machines (SVM's) and self-organizing maps (SOM's). Assuming that interview sheets are divided into four classes, the proposed method copes with the examination determination as the classification of the sheets. The data are generated from handwriting sentences in the sheets, and they are arranged in the form of a matrix. Some nouns and adjectives in the sentences are chosen as elements of the matrix, and are assigned to columns of the matrix. The sentences in each sheet are assigned to a row of the matrix. The element values basically depend on values associated with frequencies of the chosen words appearing in the sentences. The proposed method uses rows as training data, and constructs a discrimination model, based either on normal SVM learning or on normal SOM learning. The SVM-based method defines four discriminant functions associated with the model. Since one-versus-all approach is employed, the class of data associated with the sheet to be examined is determined according to output values of the four functions. The SOM-based method labels neurons in the model (map) after normal learning is complete. The data class is given as the label of the winner neuron for the presented data. It is established that the proposed method achieves as favorable classification accuracy as initial determination made by an average ophthalmologist working at the leading hospital.
  • 高野 博史, 大藪 勇希, 中村 清実
    2014 年 26 巻 2 号 p. 573-580
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    本論文では,事前のキャリブレーションが不要な眼球運動のみによりカーソルを制御する非接触型入力装置を提案する.目位置情報を用いたこれまでの入力装置は,頭部動作を併用するものであった.しかし,筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)など手足に加えて頭部動作が不自由な方は,このような入力装置を使用することが困難である.一方,頭部動作が不要な視線入力装置については,使用する前に視線方向を補正するためのキャリブレーションが必要となり,システムのユーザビリティ低下を引き起こす原因となっている.そこで本研究では,基準点に対する瞳孔中心の距離や方向を用いて眼球運動のみによりカーソルを制御する手法を開発した.本提案法は,頭部動作や事前のキャリブレーションが不要なカーソル制御法である.本研究で開発した入力装置の操作性を評価するために,被験者5名に対してパラメータの値を統一した場合と個人ごとに調整した場合で実験を行った.実験結果より,統一したパラメータ値を用いた実験では,試行回数が増えるにしたがって,ボタンをクリックするまでに要する時間が短縮された.また,個人ごとにパラメータの値を調整した場合,統一パラメータ値を用いた場合に比べてクリックに要する時間が短縮された.これは,パラメータの値を個人ごとに調整することで,操作性が向上することを示している.
  • 鈴木 貴, 荒木 智行, 河合 克浩
    2014 年 26 巻 2 号 p. 581-592
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    筆者たちは,視覚障碍学生のための科学学習支援のひとつの取り組みとして,力覚デバイスを用いた科学的な事象,例えば数学的な3次元物体や力学的な現象の触知システムを構築している.本論文では,このシステム構築へ向けての第1段階の試みについて述べる.このシステムでは,科学的事象の仮想現実を触知させるプログラム(触知モデル・アプリケーション・プログラム)が力覚デバイスを制御し,視覚障碍をもつ学生は力覚によってそれらの事象を体験することができる.そのことによって彼らに,科学を理解するために必要な科学的事象のイメージを持たせるようにすることが目的である.筆者らは,システムを開発していく前段階として,いくつかの触知モデルを試作し,それらを視覚障碍の被験者に試行してもらった.本システムの有効性と問題点を明確にしておくためである.本論文では,それらの触知モデルとその実験ついて報告する.さらに,この実験から得られた知見をもとに,今後のシステム開発の方向性について述べる.
  • Jianjun CHEN, Noboru TAKAGI
    2014 年 26 巻 2 号 p. 593-605
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    Tactile graphics are images that use raised surfaces so that a visually impaired person can feel them. Tactile graphics are necessary for visually impaired students when they study mathematics and science. Since producing tactile graphics is not simple task, an intelligent computer-aided system for assisting the production of tactile graphics is needed. Mathematical graph recognition from printed materials plays an important role in developing such a system. So, this paper focuses on part of a method of mathematical graph recognition. A mathematical graph consists of character strings, mathematical formulas and graph elements such as the rays representing the x-axis and the y-axis, and the straight lines or the curves representing functions or equations. Graph elements are drawn not only by solid lines, but also broken lines. This paper discusses a method for extracting and recognizing graph elements from mathematical graphs. The effectiveness of our method is evaluated by computer experiments.
  • -直立・歩行時の少人数集団への適用-
    唐山 英明
    2014 年 26 巻 2 号 p. 606-616
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
     脳波インタフェースは,ユーザの脳波を解読し,その意図を抽出することにより車椅子などを制御可能であり,医工学分野や福祉工学分野などで精力的に研究が行われている.特に近年,ウェアラブル型の脳波計が市販されるようになってきた.本論文では,近年のこのウェアラブル型脳波計の一般普及を想定し,その際に要請される脳波個人認証の利用環境の拡張に向けて,聴覚刺激を採用し,屋外環境における脳波を利用した個人認証精度について検証した.7名の被験者に対して,特に屋内安静着座条件,屋外安静直立条件,屋外歩行条件の3条件で,オドボール課題により,低頻度聴覚刺激と高頻度聴覚刺激を提示した結果,低頻度聴覚刺激時に事象関連電位を検出した.機械学習手法を用いて個人認証精度を導出し,ウェアラブル型脳波計を用いた屋外での脳波個人認証の実現可能性について述べる.
一般論文
原著論文
  • 大竹 裕也, 萩原 将文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 617-626
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
     本論文では,評価表現を用いた印象推定と傾聴システムへの応用を提案する.提案システムの目的は,ユーザとなる高齢者の「話したい」という意欲を促進させるような,話の聞き役となることである.ユーザの発話意欲を促進させるには,ユーザの発話内容から感情を推定し,その感情を考慮した発話が重要となる.そこで,提案システムでは応答文生成にあたり,ユーザ入力文から話題語と評価表現を抽出し,それぞれの語の印象を推定し,それに基づいた応答文の生成を行った.印象推定には複数の言語資源を組み合わせ,評価を表す語約7000語が収録されている辞書や,印象推定の結果より名詞約20万語から成る辞書を作成した.応答文生成では,相手の感情を汲み取り発話する,といった心理カウンセラーが用いる傾聴法を参考に,ユーザの入力文から印象推定を行い,それに基づき相手の感情や発話を促すことを目的とした応答文を生成する対話システムを作成した.評価実験により,提案システムが高齢者の発話を促すことが可能であり,満足のいく話し相手となれることが示唆された.
  • 吉田 裕介, 萩原 将文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 627-636
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    本論文では,複数の言語資源を用いたユーモアを含む対話システムを提案する.提案システムでは,以下の2点を考慮した.第1に知識の利用である.知識には,複数の言語資源を用いた.具体的には,日本語WordNetと日本語語彙大系の2つの概念辞書に,Wikipediaに登録されている固有名詞を追加する.さらに,京都大学格フレームから得られる格フレーム情報を用いて,概念と用言を結合する.第2にユーモアの利用である.実際の笑芸で用いられる手法を基に,システムに駄洒落,喩え,かぶせといったユーモアを導入する.提案する対話システムでは,まずユーザの入力文を解析し,表層格情報,述語,話題語の抽出を行う.そして入力文の素性と過去の応答パターンからユーモアを用いるか否か,ならびに応答パターンの決定を行う.応答には話題語や述語,そして概念と用言のリンク情報を用いて文を生成する.評価実験では,ユーモアを含む場合,及び含まない場合で提案システムを使用し,システムの比較評価を行った.その結果,ユーモアを用いることで多様な応答を実現し,システム満足度が上昇したことが確認された.また,提案システムはWebを使用しないことで高速な応答が可能となっている.
  • 砂山 渡, 渥美 峻, 西村 和則, 川本 佳代
    2014 年 26 巻 2 号 p. 637-646
    発行日: 2014/04/15
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
     近年の学習環境には,e-learning などネットワークを介して行われるものや,ゲームの要素を取り入れた学習が用いられるようになってきた.一方で学習者も,SNSなどネットワークを通じたオンラインコミュニケーションに精通するようになってきており,指導側と学習側の双方でネットワークを利用した学習への期待が高まっている.
     そこで本研究では,オンライン対戦型クイズシステムによって学習を支援する環境を提案する.すなわち,対人での対戦として経験値やランキングを導入することでやる気を出させるとともに,単純な四択クイズとすることで手軽に継続でき,インターネットを通じてさまざまな分野の問題集合を準備できる環境を提案する.
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