知能と情報
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26 巻, 3 号
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目次
巻頭言
解説
コラム
理事会だより
報告
書評
用語解説
  • 井岡 惠理
    原稿種別: 用語解説
    2014 年 26 巻 3 号 p. 113
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    ニューロン(神経細胞)は連続的な刺激の印加によって短い時間幅のスパイクを発生させる.この現象は発火と呼ばれ,脳内の情報処理において重要な役割を担うことは近年の脳科学における基本的な認識となっている.この発火による情報のコーディング方法としては,ニューロンの発火頻度,集団(グループ)の発火活動によるコーディング,短い時間間隔での発火パターンによる符号化などが考えられている.一方で複数のニューロンが同時(あるいはある一定の間隔を保って)に発火するなどニューロン同士が見せる発火のタイミングの関係性が重要であるとも考えられている.このような発火現象は同期発火(Synchronous firing)と呼ばれている.

    同期発火はとくに結びつけ問題(Binding problem)と非常に深い関わりがあると考えられている.結びつけ問題とは脳科学における未解決問題の一つである.通常,視覚や聴覚などの感覚器が受ける情報は脳に伝わると形や色,運動方向やその速度などの細かな情報に分割されそれぞれについて処理される.そしてこれらを再統合するのだが,細分化された情報をどのようにして統合しているのかというメカニズムの詳細は解明されていない.

    もしもニューロンの発火にのみ情報がコードされていると考えると複数の入力情報を再統合する際に,元の入力情報とは異なる情報が再現され結果として脳はあるはずがないまぼろしを見ることとなる.同期発火によるニューロン同士の関連性を持った発火現象は分割された情報と情報との関連を持たせる役割があると考えられている.実際に生理学実験においてもこの同期発火現象は視覚野や嗅覚野で観測されている.

    さらに,同期発火はパーキンソン病などの神経性の病症との関連も示唆されている.したがって同期発火現象のメカニズムに関する関心は今後も高まると考えられる.

  • 塩澤 暁広・平野直人
    原稿種別: 用語解説
    2014 年 26 巻 3 号 p. 113
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    異常検知の一つで,ある出来事に関連した文書の発生頻度が増加している(つまり,バーストしている)時間帯を検知するアルゴリズムである.

    例えば,あるサッカーの試合についてマイクロブログを見る場合,「点が入る」という出来事に対して大量の書き込みが行われる.「Kleinberg のバースト検知」はこのようなバーストを効率よく検知できる.

    Kleinberg のバースト検知には,時間軸に沿って断続的に発生する関連文書の時刻を元にバースト検知を行うもの(以後,連続型と呼ぶ)と,単位時間毎に発生した関連文書を数える列挙型が定義されている.連続型では,関連文書発生の時間間隔がそれまでと比べて短い状態が続くとバーストと判定される.関連文書が発生する毎にバースト検知を行うため,時間軸方向に細かくバースト状態を見ていく事ができるが,同時刻に複数の関連文書が発生した場合は扱う事が出来ない.一方,列挙型では時間軸を適当な間隔(バッチ)に区切り,バッチに含まれる全文書数と関連文書数を用いてバースト検知を行う.同時刻に複数の文書が発生した場合でも扱う事ができるが,母集団としての全文書数も計測する必要がある.また,バッチより細かい時間でのバーストの変化を知ることはできない.

    どちらも,バースト状態を定義したオートマトンを使用するが,連続型では無限個のバースト状態を定義する事によって「バーストの強さ」を知ることができるのに対し,列挙型では連続したバッチに対して「バーストしている・していない」の2状態しか持たない.そのため,列挙型では「(バーストしたとして)バーストの強さ」を表現する,weight という別の値を用意している.

会告
特集:「ロボカップ」
論文概要
学会から
編集後記
特 集: ロボカップ
原著論文
  • 杉本 将也, 五十嵐 治一, 石原 聖司, 田中 一基
    2014 年 26 巻 3 号 p. 647-657
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    典型的なファジィ強化学習アルゴリズムはマルコフ決定過程(MDP)を前提とした価値関数ベースのアプローチを採用し,ファジィルールの後件部に定数や一次関数を用いる場合が多い.一方,方策勾配法は状態や行動の価値関数を計算することなく,方策を直接設計し,その方策中のパラメータを学習する強化学習法である.この方策の表現としてファジィ制御ルールを用いる方策勾配法が提案されている.そこでは,ファジィ制御ルールの前/後件部におけるメンバシップ関数とルール重みを報酬の期待値が極大となるように学習することができる.本論文ではこの学習方式をロボットの行動決定問題へ適用することを試みた.具体的な事例として,ロボットサッカーの競技会であるRoboCup小型リーグの試合において,ボールを保持したときのプレーヤロボットの行動決定問題へ適用した.学習実験の結果,30シーンのうち25シーンにおいて人間の行動決定と一致する方策を獲得することができた.
  • 伊藤 暢浩, 岩田 員典, 纐纈 寛明
    2014 年 26 巻 3 号 p. 658-668
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    エージェントに関する研究分野では,開発されたマルチエージェントシステムを評価する方法を整備することが重要な課題の1つとして挙げられている.特に,異なる環境において動作するエージェントの評価は難しい.そこで本論文では災害救助シミュレーションであるRoboCupRescueシミュレーションを題材とし,環境(地図)の特徴の指標と,マルチエージェントシステム(以降,エージェントと呼ぶ)の評価指標の間にある関係を分析し,明らかにすることを目的とする.この関係を明らかにできれば,エージェントごとの特徴を表現可能な評価指標を定義でき,環境をまたいで動作するようなエージェントの比較が容易になる.つまり本研究の最終目的は,被災したその環境においてエージェント(=災害救助隊)の活動結果を予測し,比較することである.また本論文の環境定量化は,従来のエージェントの移動のみに絞ったものではなく,災害救助のような複雑な問題に対するものであり,その意味するところは大きい.まず環境として対象とする地図の特徴を抽出し,それらを定量化して指標として定義する.地図の特徴としては建物と道路の情報に注目する.これは災害救助シミュレーションにおいて,防災戦略の結果は,道路の接続状況及び建物の密集度に大きく依存すると考えられるためである.このことから,建築面積,建物の要素,建物と建物の位置関係,建物と道路の位置関係,密度の5分類に分けて定義した.またエージェントの評価指標としては,RoboCupRescueシミュレーションのスコアを利用する.これは当該シミュレーションには多数の異種エージェント(消防,救急,道路啓開)が含まれるため,その総合評価として災害救助の結果を表すスコアが適当であるためである.本論文では環境の特徴とエージェントの評価値を分析するため,まず,定義した環境の特徴から重複したものを多重共線性を用いて取り除き,その後,複数のエージェントアルゴリズムを用いて,その間にある偏相関係数を求め,依存関係について検討した.その結果,地図の特徴の指標とRoboCupRescueシミュレーションにおけるエージェントの評価指標との間には依存関係があること,エージェントアルゴリズムによってその依存関係は異なることがわかった.
実践研究論文
  • 石田 秀一, 新福 宜侑, 石井 和男, 宮本 弘之
    2014 年 26 巻 3 号 p. 669-677
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    我々はロボカップサッカー中型ロボットリーグ(以下,MSLとする)での適用を想定し,球体を用いた全方向移動機構の開発を行った.MSLに参加する多くのロボットは,オムニホイールと呼ばれる車輪の円周上に複数個のフリーローラを取り付けた特殊車輪を用いて全方向移動を実現している.オムニホイールは容易に全方向移動を実現できるが,一方で使用環境が限定されることや走行面の段差や摩擦の変化に対して走行安定性を失いやすい等の欠点がある.MSLにおいても走行面を完全にフラットにするために,フィールドカーペットの下に板を敷き詰める等の対策が行われている.我々はこれらの課題克服を目指し,MSLだけでなく実用的な産業応用を視野に入れた移動機構の開発を行った.試作機を用いた外乱に対する走行実験や,積載重量の増加に伴う移動精度の検証を行うことで走行性能の評価を行った.
原著論文
  • 糸田 孝太, 渡邊 紀文, 武藤 佳恭
    2014 年 26 巻 3 号 p. 678-687
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    近年のエージェント開発では,決められた状況だけに最適化された制御則だけにとどまず,機械学習などの統計や確率的学習手法を取り入れ,不確実な状況に対しても適応能力を持つような動作生成や行動選択のシステムが多く提案されている.本研究では,サッカーにおける集団的戦術行動であるパス行動に着目し,個人の意思決定から集団の行動がどのように最適化されるのかを探る.具体的には,まず人間がどのように予測や決定を行っているのかを,実際の試合のトラッキングデータ及び動画データを分析することで定量化し,その分析を元にパラメータをロジスティック回帰により最適化することでパス行動モデルを構築した.結果として,周辺選手の相対位置に対して主体となる選手の視線方向に重み付けを行うことで,高精度でレシーバーの予測が可能となった.
  • 清水 優, 高橋 友一
    2014 年 26 巻 3 号 p. 688-697
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
     レスキューロボットは,2001年9月11日に発生したWorld Trade Center (WTC) のビル倒壊現場で使用され,また2011年3月11日に東日本大震災と津波によってダメージを受けた東京電力福島第一原子力発電所 (Fukushima Daiichi Nuclear Plant: FDNP) の建屋内調査等の活動を続けている.レスキューロボットはこれからの数十年に渡って,WTCやFDNPの現場のように不安定で動的に変化する環境でもより高い性能を発揮できるように改良され続ける.レスキューロボットの重要なミッションの1つは,被災現場の変化してしまった地形や要救助者の座標などの情報を収集し人間に分かりやすい地図を生成することである.この自動地図作成機能の改善は,レスキューロボットの改良点の中で特に活発に研究開発が行われる1つであり,その改善の度合いを評価することも重要である.
     著者らは,今後開発される不整地における地図作成手法の性能を評価する手法が必要となると考え,本報で不整地をモデル化した評価フィールドを用いた動作理論のグレード付けを提案し,地図作成手法の1つであるSimultaneous Localization and Mapping (SLAM) を用いた評価例を示す.
  • 稲邑 哲也, タン ジェフリートゥ チュアン, 萩原 良信, 杉浦 孔明, 長井 隆行, 岡田 浩之
    2014 年 26 巻 3 号 p. 698-709
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    ロボカップ@ホームはHuman-Robot Interaction (HRI) 研究の発展のために,今後重要な位置づけを持ったコンペティションである.HRIにおける研究開発では,膨大な量の対話実験による経験データベースが必要となる場合が多いが,実機のロボットでは実験実施のコストが高く,また,シミュレーションでは人間とロボットとの身体的インタラクションに制約が生じる.そこで,没入型のユーザインタフェースと,複数のクライアントが同時に同一の仮想世界にログイン可能な機能の双方をロボットシミュレータに搭載し,HRI研究を促進させることの可能なロボカップ@ホームシミュレーションの枠組みを提案する.また具体的なシステム実装に必要となる基盤技術の設計指針を示す.
  • 笹岡 久行
    2014 年 26 巻 3 号 p. 710-717
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    群知能の1つであるAnt Colony Optimization (ACO) アルゴリズムは,実際の蟻の採餌行動にヒントを得た最適化手法である.蟻はフェロモンと呼ばれる化学物質を用いたコミュニュケーションを行うことで効率的に経路を発見している.さらに,実際の蟻の巣には勤勉に働く蟻と勤勉に働いてはいない蟻が一定の割合で混在しており,それらが混在することにより巣を効率的に運営されているということを生物学の研究者は報告している.また,これらの蟻の違いが蟻の持つフェロモン感度の差にあることも研究者らは報告している.そこで,我々はフェロモンへの対応が異なるエージェントが混在するACOによる最適化手法を提案する.今回,RoboCup Rescue Simulationを用いて評価実験を行った.その結果から提案手法の有効性を確認した.
一般論文
原著論文
  • 中尾 索也, 本多 克宏, 野津 亮
    2014 年 26 巻 3 号 p. 718-727
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    視覚化は,データの持つ特徴を直感的に理解することを可能にするため,知識発見やデータマイニングへの有用なアプローチである.線形ファジィクラスタリング手法の一つであるFuzzy c-Varieties (FCV) 法は,局所的な構造を捉えながら主成分分析を施す局所的な主成分分析とみなされており,主成分を用いて多次元データの局所的な視覚化が可能である.しかし,FCV法は最小2乗基準で定式化されているため,ノイズの影響を受けやすい.そこで本論文では,FCV法に対してロバストM推定に基づく距離関数を導入するAlternative c-Means 基準を適用して,ノイズにロバストなFCV法を提案する.提案法であるロバストな局所的主成分分析を多次元の実データに適用して局所的に人間が知覚可能な2次元散布図への視覚化を行い,その信頼性の調査,および,実際に得られた視覚化からの知識発見を試みる.
  • Naomi YAGI, Tomomoto ISHIKAWA, Yutaka HATA
    2014 年 26 巻 3 号 p. 728-735
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    In this paper, we suggest the ultrasonic-assisted technique of the thickness determination system on low anterior resection. We propose a technique for thickness determination of the intestine for low anterior resection using the ultrasound, whose center frequency is 15 MHz. Low anterior resection is one of the operative methods for rectum cancer. We determine the intestine thickness from ultrasonic waves using fuzzy inference. We performed the experiment using the biological phantom and the large intestine of the pig as a target object. As the results, we calculated the object thickness with the average absolute error of 5.67%.
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