知能と情報
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27 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
目次
巻頭言
挨拶
解説
報告
用語解説
  • 和久屋 寛
    原稿種別: 用語解説
    2015 年 27 巻 4 号 p. 128
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    ニューラルネットワーク(神経回路網)とは,ニューロン(神経細胞)と呼ばれる基本構成単位を数式モデルで表し,これらを繋ぎ合わせてネットワークを構築するものである.このとき,階層型ネットワークと相互結合型ネットワークに大別できるが,ホップフィールドネットワークは,あるニューロンが他のすべてのニューロンと対等に結合しており,いわゆるフラットな構成を有するという点で後者に属する.

    ところで,特別な構造を有する訳でもなく,提案者である物理学者 John J. Hopfield の名前を冠して,このように呼ばれるには理由がある.一般に,ニューロンは「発火/静止」の2状態があり,その間には「興奮性/抑制性」と呼ばれる2種類の結合がある.これに対して,スピングラス理論(物理学の世界)では,物質を構成する粒子の状態としてスピンを定義し,「上向き/下向き」で表現している.そして,それらの向きを「平行/反平行」に揃えようとする相互作用が働いている.Hopfield は,ニューロンとスピン,ニューロン間結合とスピン間相互作用を対応付けることで,物理学の世界における定義式を利用して,ニューラルネットワークの世界へ「エネルギー」という概念を導入した.周知のとおり,エネルギーは低い方が安定であるため,ホップフィールドネットワークはエネルギーが低下する方向に状態の遷移を繰り返し,安定状態へ収束することが期待できる.

    ホップフィールドネットワークの具体的な応用例としては,連想記憶や組み合わせ最適化問題が挙げられる.与えられた条件を満たす解候補が,このエネルギー最小値へ割り当てられるように,ニューロン間結合などを課題に応じて定めるのである.ただし,実際には,偽解に相当するエネルギー極小値が多数存在するため,擬似焼きなまし法(アニーリング)に代表される手法などを併用し,これらを回避するのが一般的である.

  • 上江洲 弘明
    原稿種別: 用語解説
    2015 年 27 巻 4 号 p. 128
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    狩野モデルとは,東京理科大学名誉教授の狩野紀昭(かのう のりあき)らによって考案された品質要素の分類および特徴づけの手法として開発されたモデルである.この分析法により,顧客の認識する品質を分類して整理することが可能になった.品質の整理・分類のため,狩野らは顧客の満足感・物理的充足状況の対応関係から,品質要素(属性)を以下のように区分した.

    ・魅力的品質要素:それが充足されれば満足を与えるが,不充足であっても仕方がないと受けとられる品質要素.

    ・一元的品質要素:それが充足されれば満足,不充足であれば不満を引き起こす品質要素.

    ・当たり前品質要素:それが充足されれば当たり前と受け止められるが,不充足であれば不満を引き起こす品質要素.

    ・無関心品質要素:充足でも不充足でも,満足も与えず不満も引き起こさない品質要素.

    ・逆品質要素:充足されているのに不満を引き起こしたり,不充足であるのに満足を与えたりする品質要素.

    狩野モデルでは,顧客に対しある品質要素について「充足質問(もしこの品質要素があったならばどう思うか)」と「不充足質問(もしこの品質要素がなかったならばどう思うか)」を行い,その回答によって分類する.質問の回答は「とてもうれしい」「当然だろう」「特に何とも思わない」「別にそれでも構わない」「それは困る」の5つの中から1つを選択する.対象の品質要素を「あったならば」「なかったならば」の両側面から捉えることで,顧客の本質的な要求レベルを把握することが可能となる.これらの質問から得られた回答から,その要素の属性(上記5項目)を決定することが可能となり,製品の開発や改善において優先順位を決定することができる.狩野モデルによる分類法は,品質要素の優先順位付けだけではなく一般的なアンケートなどにも応用することが可能である.質問数の整理が必要になるが,効率的で効果的なリサーチが可能となる.

会告
論文概要
学会から
編集後記
一般論文
原著論文
  • 鈴木 未央, 鬼沢 武久
    2015 年 27 巻 4 号 p. 651-668
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,ユーザとの対話により言葉で表された印象を反映する演奏表情生成システムMUSAI(MUSicalexpression generation system by Adjective with Interaction)を提案する.MUSAIは,演奏表情と印象の関係を表す感性空間,ファジィルールを持ち,入力された印象から感性空間上での座標値を求め,ファジィ推論によって演奏表情のパラメータを決定し,演奏表情を生成する.生成された演奏表情に満足できない場合,ユーザは副詞と形容詞・形容動詞からなる修正指示語を入力し,感性空間上の座標値を変えることで演奏表情を修正する.有効性を評価するために,MUSAIを用いて実験参加者が演奏表情を生成し,評価する実験を行う.実験の結果,MUSAIにより,各実験参加者の印象を十分に反映した演奏表情を生成できること,実験参加者が演奏表情が次第に修正されていると知覚していたことがわかった.
  • 西原 陽子, 日比野 純也, 福本 淳一, 山西 良典
    2015 年 27 巻 4 号 p. 669-679
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    新商品は日々,世の中に発信されている.新商品の多くは,既存の商品の特徴の組合せにより作られていると見なすことができる.しかし,既存の商品の特徴を組合わせれば,多くの人に購入される新商品となるわけではない.商品には特徴があり,特徴を組み合せることにより,新しい特徴が得られる可能性がある.新しく得られる特徴が希少であれば,その元となった商品の組合せは,多くの人に購入される新商品の種になる可能性がある.本論文では,新商品のアイデア発想を支援すべく,商品の特徴の一つである機能の組合せにより得られる新しい機能の希少さを評価するシステムを提案する.提案システムは,新しい機能を表すフレーズを作成し,機能の希少さをWebの検索エンジンのヒット数を用いて評価し,希少と評価された機能と,機能の元となった組合せを出力する.実験を行い,提案システムがアイデア発想を行う被験者を支援できることを確認した.
  • 稲垣 和人, 吉川 大弘, 古橋 武
    2015 年 27 巻 4 号 p. 680-690
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    マーケティングにおいて,顧客から得られたデータを基に販売戦略を立てることは極めて重要である.得られた大量のデータから有益な知識を得る手段として,データマイニングと呼ばれる統計解析技術が活用されている.また近年は,Customer Relationship Management(CRM:顧客関係管理)という考え方により,他とは大きく異なる性質を持つ顧客の集団(マイノリティ)が重要視されている.そのため,アンケートデータを始めとする顧客データから,マイノリティを抽出・解析する技術が,強く求められている.しかし,従来の解析手法の多くは,データの全体傾向を捉えることを目的としており,マイノリティの抽出や解析には適していない.マイノリティ抽出に特化した手法にEWOCS,またマイノリティに近いデータ集合の定義として孤立クリークがある.しかしEWOCSでは,抽出されたグループと他のグループとの非類似性を考慮していない.また孤立クリークでは,定義を満たすデータ集合の大半が,データ数の極めて少ないものであるという問題点がある.そこで本論文では,上述の問題点を解決するマイノリティ指標として,Local Minority Factor(LMF)を定義する.LMFは,外れ値検出手法の1つであるLocal OutlierFactor(LOF)を基礎としており,孤立性と凝集性の2つの指標を合わせることにより,データ集合では孤立しているが,個々のデータでは孤立していないときに高い値をとる.本論文では,LMFを最適化するマイノリティを,探索的に抽出する手法を提案する.実際のアンケートデータに適用し,従来手法との比較を行う.指標値によって定量評価を,可視化によって定性評価を行い,従来手法と比較して,提案手法がよりマイノリティの特徴の強い回答者集合が得られることを示す.また得られた個々のマイノリティに対する,とり得る販売戦略の例を示す.
ショートノート
  • 松永 務
    2015 年 27 巻 4 号 p. 691-694
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    文章における単語列は文法上の制約下で文脈に応じて次々に単語が選択されて得られたものという視点によれば,単語間の接続を基に語彙数変動を捉えることができる.本稿ではこの視点から単語間の接続関係に着目し,文数の増加に伴う語彙数変動の分析結果について述べる.単語数に対する語彙数(異なり単語数)はべき関数に従うといった秩序がこれまで知られていたが,単語間の異なり接続数や単語毎の接続単語種類数にも同様にべき関数に従う秩序がみられることを分析結果から示す.
  • 矢野 均
    2015 年 27 巻 4 号 p. 695-699
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,ファジィランダム変数係数を等式制約式に含むファジィランダム計画問題に対して,ファジィランダム変数係数の主観的暖昧さと確率的不確実性を考慮した最適解を導出するためのファジィランダム単純リコース問題を定式化する.提案手法では,ファジィランダム変数係数を含む等式制約式を定義するため,可能性測度に基づく許容レベル値を導入する.許容レベル値をパラメータとするファジィランダム単純リコース問題が確率計画問題に対する単純リコース問題の一般化であることを示す.
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