知能と情報
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30 巻, 5 号
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目次
巻頭言
特集:「人間共生システムおよびその応用」
特集解説
書評
用語解説
会告
論文概要
学会から
編集後記
特集:「人間共生システムおよびその応用」
原著論文
  • 増田 寛之, 川本 哲也, 澤井 圭, 本吉 達郎, 小柳 健一, 玉本 拓巳, 大島 徹
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 667-674
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は,参加者に対してプレゼンテーションへの積極的な参加を促し,長時間にわたって興味を引きつけることを目指して,ロボットが小集団に対してインタラクションを伴うプレゼンテーションを実施するシステムの開発とその実証結果について議論をしている.本稿では,小集団の意見を反映するために,札置きによるロボットインタラクションを提案した.まずは,札置きによるロボットインタラクションを組み込んだプレゼンテーションを実現するために,ロボット,コンピュータ,カメラを統合したロボットシステムを構築した.本ロボットシステムを用いて,高校生や大学生を対象として,研究室の研究内容を紹介するプレゼンテーションを行い,札置きによるインタラクションをすることで参加者がプレゼンテーションに積極的に参加することができ,プレゼンテーションに最後まで興味を引きつけることができたか検証を行った.

ショートノート
原著論文
  • 前田 陽一郎
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 682-690
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,エンタテインメントロボットやパーソナルロボットのような人間と接することを目的としたロボットが増えつつある.これによりロボットには人間とコミュニケーションで情報伝達をする能力が必要になってきている.コミュニケーションを円滑に行うための媒体としては,顔の表情や身振り手振りなどのノンバーバル(非言語)コミュニケーションが多く用いられる.

    本研究では身体動作に着目し,ロボットと人間が情動を伴った身体動作で情報伝達を図る手法としてインタラクティブ情動コミュニケーション(Interactive Emotion Communication :IEC)を提案してきた.ここでは情動を伴った動作で双方向コミュニケーションを行い,人間の情動を増幅,抑制することでロボットの対人親和性を高めることを目標としている.これまでの研究では対人親和性を高めるために共感するだけでなく飽きられにくい情動行動反応モデルをもつことが必要であることがわかっている.

    本論文ではマルコフ情動モデルを用いた情動生成についての一手法を提案する.インタラクションで好印象に感じる情動反応と認識した情動の内部状態を考慮に入れた状態遷移をモデル化することができるマルコフ情動モデルを使用し,人間が好印象で興味が持続するインタラクションを行う情動生成モデルを構築する.このモデルを搭載したロボットでインタラクション実験を行い,マルコフ情動モデルを用いることによりヒューマノイドロボットの対人親和性が向上することを確認した.

  • 佐藤 弘典, 西野 順二
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 691-699
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    インターネットの発展によりオンラインでの放送によるスポーツ観戦が増え, これに対するアノテーション表示も,観戦支援に重要な要素となっている. アノテーションでは試合に関する様々な情報の表示とその解説や応援などがなされ, E-sportsやスポーツ動画の配信において,アノテーションは試合本体と同程度の重要性を持つことが多い. 本論文は,野球観戦において,プレイヤの心理戦を観戦支援情報として利用することを提案する. 従来のアノテーションは,点数や試合進行状況,経過時間,戦術統計, 過去の対戦履歴など客観的な情報と,解説者の解説情報から成り立っていた. 対して本論文は,新たにプレイヤ同士の心理戦を,視聴者の主観的な期待にもとづいて推論し,アノテーションとして付与する点に特徴がある. 視聴者はプレイヤ同士の戦略の応酬を見ることで試合を楽しむが, このとき「頑張った」「弱気になっている」などプレイヤの心理を予想をしており, 実際のプレイヤ心理に対してこの予想の正否にかかわらず,視聴者は勝手な予想で主観的に面白さを感じている. そこで,視聴者の主観的な試合状況把握の情報と試合の客観情報から, 提示するべきプレイヤの心理状態を観戦者知識にもとづくファジィ推論で算出し, ラッセル空間を経由してイラストアイコンにより視聴者にアノテーションを提示するシステムを構築した. 野球観戦について3種の被験者実験をそれぞれ10名程度を対象に行なった. その結果,システム出力の共感度,一致度, 面白さの向上についてそれぞれ高い平均値が得られ,提案システムの有効性を示すことができた.

  • 谷嵜 悠平, ジメネス フェリックス, 吉川 大弘, 古橋 武
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 700-708
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,学習を支援する場面で活躍する教育支援ロボットが注目されている.このようなロボットの問題点として,学習者がロボットの行動を画一的と感じてしまい,ロボットとの相互作用に飽きてしまう点が挙げられる.この問題点を防ぐために,従来研究では学習者の気持ちに共感するような感情を表出する,共感表出法が提案された.実験結果から,共感表出法を搭載したロボットは学習者の飽きを軽減できる可能性を示唆した.共感表出法は,ロボットの表情変化によって感情を表出するが,Human-Robot-Interactionの研究分野では,ロボットの身体動作は人との相互作用に有効であると報告されている.そのため,共感表出法に身体動作による感情表出を加えることで,共感表出法を搭載したロボットはより学習者に好印象を与えることが可能になると考える.そこで本論文では,身体動作と表情変化によって感情を表出する共感表出法を搭載したロボットが,学習者へ与える印象効果について検証する.

  • 石川 友紀也, 末松 圭史, 大坪 正和, 吉田 香
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 709-716
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,ロボットの回避方向意図を人に伝達することで,人とロボットの円滑かつ自然な相互回避を実現することである.そこで,人が行っている回避方向意図の伝達手段の1つである上半身動作に着目し,ロボットに人の上半身動作を実装することを試みた.本研究では,人とロボットが建物の出入り口や廊下で出合い頭に出会う状況や,ロボットが下半身動作を行うことができない状況を想定している.ロボットが回避行動時に適切な上半身動作を実行することで,人に回避方向意図の伝達を行い,人を衝突しない方向へ能動的に誘導することのできるシステムの構築を目指す.本提案手法により,人とロボットの衝突のリスクが減少し,互いに回避行動を取るようにでき,互いの回避距離も最小限にすることができると考えられる.ここで,上半身動作がロボットの回避方向意図の伝達手段として有効か検証するため,SoftbankRobotics社のヒューマノイドロボットPepperを用い,上半身動作として両腕の位置と胸部の向きを動作要素とし,上半身動作掲示完了にかかる時間を考慮して上半身動作の大きさを変化させた3つの提示方法で被験者に掲示した.実験の結果回避方向意図と胸部が逆向きの上半身動作が回避方向意図の伝達方法として適していることが分かった.

  • 前田 陽一郎
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 717-724
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,高齢者や障害者を対象とした支援システムの開発が進んでおり,中でも人間の視線を利用したインタフェースの研究が注目を集めている.人間の視覚には,多くの重要な情報が含まれており,その視覚情報を用いて操縦者が次にどのような行動をとりたいのかを推定する研究が報告されている.例えば,人間の視線から意図を推定するために用いる手段の1つに,視覚的顕著性マップモデルがある.このモデルは,画像の中から人間の注意が向けられやすい場所を推定することができ,入力が画像情報のみという利点を持つ.視覚的顕著性マップモデルを扱っている研究として,操縦者の頭部の動きから変化する顕著性マップの値を抑制する研究,人間の知識を顕著性マップの重みに利用して調節する研究などが報告されている.そこで本研究では,視覚的顕著性マップと視線情報の組み合わせに着目し,人間の目の動きとその人が見ている風景から生成された行動意図推定マップを抽出し,全方向車椅子を走行制御するための視線教示システムを提案する.このシステムでは,複数の入力情報から人間の経験を基に総合的な判断ができるファジィ推論を取り入れることで,人間が見ている場所を意図推定することができる.本手法の有効性を示すために,視線だけを用いた視線教示システムとの比較実験を行った.

  • 山倉 和樹, 今井 順一
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 725-733
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では複数の同行者を誘導する自律移動ロボットを提案する.このためには,動的環境下で安全に障害物を回避することと,同行者の状況を把握し見失うことなく移動することの2点が必要となる.本論文では,測域センサと全方位ステレオカメラを併用し,画像上で同行者を頑健に認識することで,彼らを見失わないよう適切な相対位置を保つ制御を行う.また,人物と静的障害物とを区別し,異なる斥力ポテンシャルを与えることでそれらを適切に回避する制御を行う.これらの組み合わせにより,自律移動ロボットが同行者を見失うことなく安全に誘導することを実現する.

  • 菅原 菫, 加納 政芳
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 734-743
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,人間共生ロボットの研究開発が著しい.これまでの多くの人間共生ロボットの研究では,ロボットが人の発話や感情を理解するというインタラクションデザインが採用されてきた.本研究では,ロボットが情報発信し,人が理解し返答するというインタラクションデザインに注目し,人の幼児のような発話,すなわち幼児的な発話を活用した心理的インタラクションについて考える.これまでに,新生児的な外見を有するロボットなどを用いて幼児的発話の許容される範囲を調査する研究はあるが,汎用的な知見が得られていないのが現状である.そこで本稿では,24種類のコミュニケーションロボットを用いて,2歳前後の幼児的発話がどのようなクラスに属するロボットに対して違和感なく活用可能か調査する.さらに,得られた結果の汎用性について示す.

  • 宅和 晃志, 吉川 大弘, ジメネス フェリックス, 古橋 武
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 744-752
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,ユーザと自然な雑談を行うことを目指した非タスク指向型対話システムが注目されている.ユーザのシステムへの満足度を高めるためには,自然な対話を行うことに加え,ユーザの興味を惹きつける内容の発話を行うことが有効であると考えられる.そこで本論文では,「共感を得ることで笑いを誘う発話文」として,Twitterより「あるあるネタ」を表すツイートを取得し,発話文として用いる手法を提案する.「あるあるネタ」とは,聴衆の共感を得ることで笑いを誘う演芸における手法の一つである.一往復対話の評価実験(-3〜+3点の評価)の結果,雑談対話APIの平均評価点-0.24に対し,提案手法の平均評価点0.76となり,提案手法の有効性を確認した.

  • 宮本 友樹, 片上 大輔, 重光 由加, 宇佐美 まゆみ, 田中 貴紘, 金森 等
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 753-765
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,人のパートナーとしてコミュニケーションが可能なエージェントの開発に向けて,人とエージェントのより自然な会話を実現するための研究が注目されている.一方で,エージェントの言語的な振る舞いが印象や関係性構築に与える効果の体系化は確立されていない.人は会話において相手と良好な関係性を築くために心理的距離や立場を考慮して言語的配慮を選択するといわれている.Reevesのメディア・イクエーションやDennettの意図スタンスの考えに基づけば,人とエージェントの会話においても,関係性構築に有効な言語的配慮が存在すると考えられる.そこで本研究では,エージェントの言語的な振る舞いが,印象や関係性構築に与える効果の検証を目的とする.アプローチとして,ポライトネス理論に基づき,相手との距離を積極的に縮めるための配慮(ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー)のうち,エージェントが用いることで人に意図を帰属させる効果が期待されている冗談と,比較対象として,距離を縮めず維持するための配慮(ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー)をエージェントが用いた際の印象を被験者実験によって主観評価する.

  • 中村 剛士, 澤村 勇輝, 加納 政芳, 山田 晃嗣
    原稿種別: 原著論文
    2018 年 30 巻 5 号 p. 766-772
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    昨今の対話型デザインツールにおいては,ツールからユーザに対し,グラ フィック等のデザインに関係した多数のパラメータが提供される.ユーザは, これらのパラメータの組み合わせから,ユーザの所望するイメージに合致したパ ラメータ設定を何度も繰り返し選択・設定し,グラフィックを完成させる. このデザイン作業は,ツールに不慣れな初心者・初級者にとっては,とくに 困難な工程である.パラメータの設定を繰り返すデザイン作業は,対話的な 最適解探索と捉えることができる.そこで,本研究では,最適解探索の初期 値設定をオノマトペを用いて行うことで,探索コストを削減し,グラフィッ ク完成までのユーザの作業負荷軽減を目指す.本稿では,デザイン事例とし て,毛筆フォントデザインシステムにおける掠れと太さのデザインを対象と し,実験を行った.その結果,オノマトペを用いた提案手法は,初心者・初 級者であるユーザにとって,デザイン作業コスト削減に有効ではないかとい う結論を得た.

ショートノート
  • 遠藤 和也, 加納 政芳, 中村 剛士
    原稿種別: ショートノート
    2018 年 30 巻 5 号 p. 773-778
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,入力された手書き文字をオノマトペによって変形する手法を提案する.本手法は,秋山らが提案したオノマトペの印象値を用いて文字形状を変形し,筆速と筆圧を用いて文字のにじみとかすれ表現を行うものである.本手法を用いることで,ユーザが手書き文字に対して付与したいイメージをオノマトペとして入力するだけで手書き文字が変化するため,文字表現をマンガなどの制作活動に活用することができる.

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