知能と情報
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32 巻, 6 号
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目次
巻頭言
特集1:「エージェント」
特集1 解説
書  評
用語解説
会  告
学会から
編集後記
総目次
特集論文:しなやかで感性豊かな知能システム
原著論文
  • 大宮 望, 中邨 良樹
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 935-943
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    昨今,邦画における興行収入は,洋画を上回っている.興行収入を多く得るためには,映画によって観客に様々な感情を抱かせることが重要であると言われている.観客に様々な感情を抱かせるには,非日常的な感情の起伏を惹き起こすことが,重要であると言われている.そしてこれを実現する1つに,台詞がある.本研究では,この台詞と興行収入の関係性に着目して進めていく.興行収入と台詞における取り組みは,国外で多く国内では少ない.そこで本研究では,台詞を定量化し興行収入との関係性について評価をおこなう.加えて映画の受賞歴などの映画における基本的な情報が興行収入に与える影響について評価する.これらの2つの評価を分析する枠組みから,考察をおこなう.そしてそれらの結果から,邦画においても台詞及び受賞歴における特徴が興行収入に影響を与えていることを示した.また新たな知見として,1) 興行収入を予測するにあたり台詞や感情の起伏を用いることによって誤差を少なくできること,及び2) 主演には受賞歴の少ない俳優を起用することが有益である可能性があること,の2つを示した.

  • 目良 和也, 青山 正人, 大道 博文, 黒澤 義明, 竹澤 寿幸
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 944-955
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    CGアバターによる遠隔コミュニケーションにおいてユーザの気持ちを的確に伝えるには,言語情報だけでなく,口調,表情,動作などのノンバーバル情報も重要である.CGアバターに基本感情を付与する研究はこれまでも行われているが,皮肉や照れ隠しのような本心を隠そうとしている表情を表現するための手法は確立されていない.そこで本論文では,顔部位の変化の随意不随意性に注目し,本心感情を不随意な顔部位の変化,演技感情を随意に動かせる顔部位の変化によって表現することで,外面と内面の感情を選択的に表現する手法を提案する.本論文ではツンデレ表情を想定し,本心感情を喜び,演技感情を平静あるいは怒りとした事例を用いて説明する.提案手法に基づいて作成した表情アニメーションについて印象評定を行った結果,不随意的な喜び顔部位である“頬の紅潮”が表出していることが「喜びを隠蔽しようとしている」という印象を強くしていた.一方,頬の紅潮の代わりに目や口など随意的な喜び顔部位を用いたところ,逆に「喜んでいるふりをしている」という印象を強くしていた.このことより,本心感情を不随意な顔部位の変化によって表出することで,内面の感情を選択的に表現できることが確認できた.

  • 鳥塚 裕喜, 萩原 将文
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 956-963
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,効果素材を付加した対話型漫画生成支援システムを提案する.提案システムでは,ストーリー性のある短いテキストとその話題に関連する画像を入力として,対話形式で漫画を生成する.一度漫画を生成した後に,ユーザーは満足のいかないコマを選択し,そのコマだけを再生成することができる対話型のシステムとなっている.また,選択したコマの中でも特に背景だけ,キャラクターだけ,吹き出しだけ,描き文字・漫符だけなどのように,より細かい単位での再生成も可能となっている.これにより,ユーザーの満足度が高い漫画を,素早く生成することができる.さらに,描き文字・漫符と効果線などの効果素材の利用も導入されている.このようにして,より漫画らしい表現が可能となり,文書に比べてより効果的な情報伝達手段となっている.評価実験により,対話型の再生成による効果,および描き文字・漫符,効果線の導入の有用性が確認されている.

  • 山本 志遠, 梅津 健也, 蕪木 梨乃, 久保田 直行
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 964-974
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    人に寄り添う情報支援を行うためには,ユーザの意図や状況を理解する必要があり,ノンバーバルコミュニケーションに基づく共感は必要不可欠である.本研究では,ユーザが「どのような人」であり「どのような人」を目指しているのかを理解し,共感した上で情報支援を行うシステムを開発する.このシステムは,マルチロボットコミュニケーションによる共感要素を取り入れた対話システムと,ユーザのリアクションを入力とした信頼度推定システムを導入することにより,ユーザの意図や状況を推定し,それに合わせた支援を行うことを目的とする.さらに,提案手法の有効性を検証するために,提案手法と従来手法の比較実験例を示す.

  • 前田 陽一郎, 冨士田 響, 亀井 且有, クーパー エリック
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 975-986
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    音楽が人間の情動に与える影響は昔から研究されており,音楽聴取時における喜怒哀楽といった感情や印象など音楽情動を対象とした研究が一つの分野として成り立っている.しかしながら音楽から情動を引き起こす研究は多々あるものの,情動によって音楽を生成するという研究はこれまであまりなされてこなかった.

    そこで本研究では情動表出として顔の表情に着目し,顔画像により情動を認識することでその情動にあった音楽を生成することを目標とする.例えば,笑っている人の顔画像を用いると明るく楽しい曲が,泣いている人の顔画像を用いると暗く悲しい曲が自動で生成されるシステムを構築する.ここでは顔画像をカメラにより認識し,その表情から情動認識を行う際にRussellの円環モデルを用い,その情動に対応する音楽の生成にはHevnerの円環型尺度を用いた.このシステムを使用することで,例えば映画製作の場において,役者の映像のみでそのシーンにあったBGMが作成できるようになる.本研究ではこのようなシステムを実際に構築し,感性評価実験を行うことにより有効性を検証した.

  • 木下 雄一朗, 鈴木 圭佑, 郷 健太郎
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 987-997
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,ペーパークラフトの一種であるシャドーボックスに着目し,ユーザの表現したい印象に適合したシャドーボックスの貼り重ね方を自動生成する感性ファブリケーション支援システムを実装した.このシステムは,デザイン生成ユニットによる複数の設計データの生成と,印象変化量評価モデルに基づく表現したい印象への適合度評価により実現した.システムの実装に先立ち,様々なシャドーボックスが鑑賞者に与える印象を調査する目的で,印象評価実験を行った.そして,この実験結果をニューラルネットワークに学習させることで,印象変化量評価モデルを構築した.デザイン生成ユニットは,進化的計算のアプローチで実現し,構築した印象変化量評価モデルを評価関数として用いた.最後に,実装したシステムの出力結果に基づいて作成されたシャドーボックスの印象評価実験により,このシステムの有効性を確認した.

一般論文
原著論文
  • 大前 佑斗, 豊谷 純, 原 一之, 高橋 弘毅
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 32 巻 6 号 p. 998-1007
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    感染力の高いウィルスは急速に蔓延する可能性があることから,迅速な対応が必要である.このためには,どのような対策がどのような効果をもたらすのか,予測できることが望ましい.このため,マルチエージェントを用いた感染伝播と被害状況の予測が行われているが,従来のモデルには感染症病床という概念が組み込まれていない.感染症病床は感染者を隔離あるいは治療する役割を有するため,致死率や感染伝播に影響をもたらす重要なパラメータである.そのため,この点が考慮された予測を行えることが望ましい.このほかに,人々が外出する割合も感染伝播に影響を与えるパラメータである.特に我が国では,2020年4月現在猛威を振るうCOVID-19への対策として,大規模な外出自粛が実施された.このような施策の効果を,実際に実施する前に検証できることも重要となる.したがって本研究では,感染症病床と外出自粛の有無を組み込んだウィルス感染症のマルチエージェントシミュレーションモデルを開発する.本シミュレータにより,ウィルスの感染力や人工社会の規模に応じた,感染症病床と外出自粛の効果を検証することが可能となる.本論文ではいくつかのシミュレーションパターンを紹介し,その効果について言及する.

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